Grabとは

Grabとは

ASEAN各国でライドシェア(タクシーではない、車の相乗りサービス)を展開する企業で、2012年設立ながらユーザー数・ドライバー数を一気に拡大。今ではこのベースを基にレストランからのデリバリー、荷物の配送、ショッピング、ホテル予約、アトラクション予約、保険・投資等も扱っている。

設立はマレーシアだが、現在の本社はシンガポールで、ASEAN8か国(マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、カンボジア)で使用可能だ。うち6か国でGMV(Gross Merchandise Value)トップとされている。

企業価値は4兆円超え?

企業価値は4兆円超え?

Grab はSPACを通じた上場を公表しており、その企業価値はまだ拡大中で、赤字にもかかわらず400億ドル(4兆円超)に達するとされる。またソフトバンクはもちろんのこと、トヨタ自動車、三菱UFJ銀行、東京センチュリー、TISといった日本企業も事業提携(車両のリースや金融、決済)を狙ってマイノリティ出資をしている。

利用者の履歴は管理されており、頻度の高い場所は自動でリコメンドとして出てくる。

Grab「1強」ではない

とはいえGrabが「1強」と断言できるわけではない。例えば、ライドシェアの性質上、深夜や都市部から外れた土地では捕まらなかったり、ダイナミックプライシングにより高額請求となったりする。

また、筆者の周りでは複数のライドシェアアプリを同時に予約し最も安いものを選んだり、到着まで10分超かかる場合はキャンセルして他アプリ含め再トライしたりしている(例えばGrabはドライバーが捕まっても5分以内なら無料キャンセルできる)。

最初にGrabを試し、次の選択肢となるのはインドネシア発Gojekと、本稿の主役でもあるタクシー最大手、ComfortDelGroのアプリだ。

ComfortDelGroとは? 配車アプリ「Zig」ローンチまでの苦境

企業価値は4兆円超え?

ComfortDelGro(以下、CDL)はシンガポールでバス・MRT・タクシーを含む輸送事業を行う企業で、タクシー最大手(Annual Report 2019より市場シェア60%)。なお、UKやオーストラリアでも展開している。

シンガポール国内の売上高はSGD1,770mn(141,600百万円、SGD1=JPY80で換算)、運用車両は15,955台規模だ。

2020年はコロナ下で特にシンガポールでの苦戦があり、全社の売上高は前年比でSGD3,901mn(312,088百万円)からSGD3,229mn(258,288百万円)へ17.2%減少した。

タクシー事業も2020年は前年比39.7%下落したSGD403mn(32,340百万円)となっているが、2015年のSGD941mn(75,280百万円)から徐々に縮小した経緯を見ると、コロナ以前から既に苦戦していたと見える。背景にはやはりGrab含むライドシェア企業の伸長があると言えよう。

ComfortDelGroとは? 配車アプリ「Zig」ローンチまでの苦境

ComfortDelGroとは? 配車アプリ「Zig」ローンチまでの苦境

新アプリZigローンチ

新アプリZigローンチ

2021年3月、CDLは既存のタクシー予約アプリ(Grabと異なり純粋にタクシー予約に特化)に加えて、Zigというライフスタイル・モビリティアプリをローンチした。

リリースのコメントを拝借して特徴を記載すれば、

「シンプルな3つのこと、タクシー手配とディナー予約、週末のステイケーション予約のために、いくつものアプリを使っていませんか?これらすべて、いやそれ以上のことを、たった1つのアプリで実現できます」となる。

確かに筆者もレストランをGoogle Mapで探し、Chope(レストラン予約サービス)で予約し、実際の訪問時そして帰宅時は都度Grabを呼んでいる。

ZigアプリのMap上ではレストランやエンターテインメント施設が並び、外部サイトともシームレスに連携し予約もできる。また移動手段もタクシー以外にバスや鉄道も表示される(いずれもCDL運営だが)。操作性もスムーズだ。行動すべてを一つのアプリで完結させる、まさに「ライフスタイル」を捉えに行っている印象を持った。

他方で、驚くほどの新規性があるかは未知数だ。まだ使い込めていないからかもしれないが、Google MapとGrab、Chopeを組み合わせたものの域を出ていない可能性もある。

Grabの対抗軸になれるか

Grabの対抗軸になれるか

ある分析記事では、Grabが優勢とはいえ、気軽に新しいアプリを試してみる参入障壁の低さがある中で、消費者の選択肢の一つに食い込めればよいと指摘されている。事実、冒頭で記載したようにCDLの既存アプリでも2-3番手には入ってきており、Zigも同様のポジションを築ける可能性は十分にあるだろう(Gojekも当地では後発だが十分に食い込んでいる)。

ローンチ時点でレストラン予約のChopeやツアー・アクティビティ予約のKlookといった外部との連携からスタートしていることも、ユーザーフレンドリーであることを重視したものと捉えられ、今後もこの方針の下で機能追加や改善がされていくだろう。

また、直近、GrabはSGD1(約80円)の値上げを公表したが、費用をかけてシェアを握った後に収益化を狙い値上げをすることは、企業行動としてはありうるものの、反感を持つ消費者もいるだろう。反面、CDLは即座に登録ユーザーにメールで「我々は値上げしません」という皮肉を込めたメールを送っている(筆者も当該メールを受け取った)。

個人的には、中心部から外れた地域(例えば、マレーシア国境に近いシンガポール西部でタイガービールの工場見学に行った際)ではGrabでは全くつかまらず、CDLのタクシーを呼んだ経験から、車両を自社で有しどこでも対応可能であることは強みの一つと感じており、これを強調・活用した機能があればより魅力的になるだろう。

日本含む他国への示唆

CDLが苦境を脱する一手としてのZigローンチに至るまで、幾つかのポイントがあったように見える。タクシーに限らず、歴史を有する企業におけるDXの参考になれば幸いだ。

  • 自社の強みである長年のブランド知名度・タクシーの利便性を活かす
  • Grabのようなスーパーアプリや個別のサービス・アプリは数多くあるが「ワンストップで全てを叶えるライフスタイル型」というまだ存在していない領域を狙う
  • まだ存在していない領域のものの開発には年単位を要してもおかしくないところ、外部との提携もいとわず迅速に進めることを選択(関与したコンサル会社の記事では、6ヶ月でのローンチとのコメントあり)。

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