急増するアクティビストファンド 7社→44社

急増するアクティビストファンド 7社→44社

日本で活動するアクティビストファンドの数は、2014年の7社から2020年には44社にまで急増した。最近では、複数のファンドが大株主となったことが経営トップの交代劇に発展した東芝を筆頭に、アクティビストファンドが上場企業の経営を揺るがすといったニュースが相次いでいる。

海外では、2021年5月に、米国石油大手エクソンモービルに対して環境対策強化を求めるアクティビストファンドが取締役候補者3名を推薦し、そのうち2名が選任された。

行動パターンを変えるアクティビスト 短期的利益→中長期的価値向上

短期的な値上がり益を狙う「グリーンメーラー」とも揶揄された往年のアクティビスト像(2000年代初頭、第一世代とも呼ばれる)から転じて、今日のアクティビストは、上場企業の持続可能性(サステナビリティ)、企業統治、中長期的な企業価値向上に関する議論に切り込んでいる印象だ。

彼らの主張は緻密に理論武装され、その他の機関投資家が首肯せざるを得ない内容も多い。アクティビストの影響力については、ISSのような議決権行使助言会社の存在による波及効果も看過できない。

買収防衛策は維持できない

買収防衛策は維持できない

かつて多くの上場企業が導入していたライツイシュー等の買収防衛策も、2020年株主総会での機関投資家の賛成率は、国内/海外投資家ともにわずか10%程度にとどまった。

買収防衛策はいまや、よほどの必要性が認められない限り、維持継続が困難である。アクティビストの提案が株主や従業員に利益(株価や賃金の上昇)をもたらす可能性があるならば、買収防衛策は現在の経営者の保身に過ぎないのではないかという議論が正面切って展開されることもある。

日本の上場企業では、アクティビストの提案を契機に中期経営計画を見直したり、アクティビスト出身者を社外取締役に招聘したりするような事例も散見されるようになってきた。

筆者がヒアリングをした限りでは、自社の大株主となったアクティビストファンドに対して、一般的な機関投資家と区別することなく、CFOやIR担当者が面談するというケースも多い。上場企業の「エンゲージメント(建設的対話)」にまつわる課題は、「誰と対話するか」ではなく、「どのような対話を行うか」へと移行しつつある。

改善されるエンゲージメント

改善されるエンゲージメント

上場企業と市場関係者(機関投資家やセルサイドアナリスト等)のエンゲージメントを巡っては、いわゆる「ショートターミズム」が長年の課題とされてきた。

ショートターミズムとは、機関投資家による株式保有期間(投資期間)が短期化することに伴い、上場企業との議論におけるアジェンダも短期業績のモニタリングに終始する傾向もしくは構造問題を指す言葉だ。

これに対して、金融庁と東京証券取引所によるコーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの導入や、証券アナリスト協会によるアナリストのプレビュー取材規制等のフェアディスクロージャーの促進により、上場企業と市場関係者のエンゲージメントは改善されてきた。

近年のアクティビストによる株主提案は、かつてのグリーンメーラー的な株主還元の要求とも、株式市場関係者に広く見られた短期志向の業績モニタリングとも異なり、中長期的な企業価値向上に関する「戦略仮説」を正面からぶつけてくるというものだ。

「アクティビストの時代」に必要な備えとは

「アクティビストの時代」に必要な備えとは

アクティビストによる株主提案を、正当な理由なく株主総会での上程を見送ることはできない。むしろ、彼らとの議論をきっかけに、自社のあるべき戦略方向性について、新しい視界が開けてくる可能性さえある。「アクティビストの時代」において、上場企業が平時の備えとして社内検討、策定しておくべき事項は、以下のように整理できる。

①現在のガバナンス体制を採用している根拠

②経営理念、競争優位の源泉、およびコア事業の明確化

③株主還元方針、資本コスト試算(事業別)、資本効率指標の中長期目標
(これら3つは定量的に整合している必要がある)

④ESG戦略に関する基本方針

⑤上記方針を適切に推進、開示するための経営企画部門やIR/SR部門の組織強化と専門人材の育成

⑥自社株式の価値(フェアバリュー)に関する社内検討

アクティビストとの対話は避けられない

アクティビストファンドを始めとする株式市場との建設的対話は、いまや上場企業が避けて通れない課題である。平時においては、自社のガバナンス体制や戦略方針に関する議論を深めておくと同時に、いざ有事の際にも対応可能な体制整備を進めておくことが肝要だ。

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