2020年第1四半期アセアン域内におけるM&A実績の特徴と示唆

Merger Marketよると、本年第1四半期(1月~3月)にASEAN+インドでM&Aクロージングが公表された案件数は170件と前年同期比で▲18%と減少した一方で、金額ベースではUS$43.1billion(約4.7兆円)と同+40%増加した。
その特徴は以下の通り。

・タイCPグループによる英TESCO社タイ小売事業の買収(約1.1兆円)を中心に大型
 買収が全体金額を牽引
・比較的に買収規模の大きなセクターは、小売含むコンシューマ/不動産/運輸
・第1四半期中に契約締結のアナウンスをしたものの、同期中にクロージングのアナ
 ウンスを実施した案件は40%弱どまりと従前比少

上記特徴から想起されるインプリケーションは、以下の4点である。

1 全体としてM&A件数の減少傾向は第2四半期には更に顕著となる可能性大(第1四
  半期中クロージング案件には昨年度中に契約締結した案件も含まれる)
2 コロナ禍に伴う大型の事業再編の機運(小売・不動産・運輸セクターはいずれも
  大型投資を伴い、コロナ禍がトリガーとなった再編を促進しやすい)
3 これまでシンガポールを中心に案件数の多かったスタートアップ系投資案件は
  縮小
4 クロージング期間(契約締結~クロージングまでの期間)の長期化傾向

M&Aターゲットの傾向とすすめ

現在、現地で1日ミーティングを行おうとすると、往路・復路それぞれで各14日の隔離期間=計1カ月を要する。相互の往来が非常に困難な中でも、このような環境ならではのM&Aがアセアン域内で実現している点は興味深い。日系企業もベトナムだけでもADKホールディングスによるデジタル広告会社買収など、計4件のM&Aがクロージングしている。
 このような中でも実施可能なM&A案件としては、主に以下のような傾向となるだろう。

・新規進出の検討には不向き
・既往進出先(例:取引先が現地会社/既に現地法人・支店・買収会社あり)の事
 業拡大・周辺業種は進めやすい
・スタートアップ系企業向け投資については選別の目が慎重になることでvaluation
 期待値(=需給バランス)は落ち着くことが見込まれる。淘汰される企業も増え
 る可能性大(投資家からの投げ売りを含む)
・日本国内事業再編・統合の流れで関連現地法人の整理・売却機会が増える可能性
 大

ニューノーマル下におけるM&Aプロセスの変化

上記でも述べたが、クロージング期間の長期化が顕著である。コロナ禍によって唐突に目の前に現れた先行き見通しの不透明性は、一度は売手買手の双方が納得・合意した条件の再交渉を要すこととなり、且つ双方の往来が困難な中、一旦白紙に戻る案件も多いだろう。
それでもM&A意欲は失われてはおらず、つれて、これまでのM&Aを推進する上でのプロセスが、変化・進化を見せ始めている。

1 Web会議化
初回面談からカメラ越しでのマネジメント・インタビューや質疑応答、初期的交渉で多用されている。移動時間を心配する必要がなく双方トップ面談等の日程調整が各段にし易くなる等のメリットもある

2 デスクトップDD先行
オンサイトビジットの後倒し: 現地市場の様子や対象会社現地視察などのオンサイトビジットを後ろ倒しとしたプロセスを売手サイドが求めるケースが増える傾向。買手サイドの相手先に対する肌触り感を持つために工場内部のビデオ映像などや上記①のWeb会議内での質疑を増やすなどの工夫が必要

3 オンサイトビジットを含むビジネスDDの外部委託化 
上記のオンサイトビジットが難しい状況が継続する場合には、現地事情に精通(現地スタッフ駐在等)した第三者に外部委託するケースが増えることが予想される

4 契約内容・クロージング条件の変化
コロナ禍のような予測不能なリスクを売手買手でどのように負担するかや、クロージング期間中の業績変化のクロージング金額調整とするなどの定義は当面試行錯誤が続くように拝察される

FA活用のすすめ

ニューノーマル下でのM&Aに際しては、当座は売手・買手ともに手探りのプロセス推進が想定される。一方で、外部機能(ビジネスDDの外部委託化・FA機能の必要性・PMI)の活用ニーズが増えている。したがって、FA業務とコンサルティング業務(産業アナリスト的視座を含む)の隔てがない、複合的なサービス提供が求められている。

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