混沌① コロナ禍、猛威を振るうデルタ株

混沌① コロナ禍、猛威を振るうデルタ株

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ロイター「Covid19 Tracker」よりFMI

日々変化するコロナ感染者状況であるが、現段階(8月24日時点)でのアセアン主要国の状況について、ロイター社が集計する「Covid19 Tracker(以下URL参照)」の数値を元に「感染者数週間平均の前週比増減率(増減カーブのポジション把握)」「人口1,000人当り累計感染者数(感染率の横比較)」「累計死者数(重症化傾向の横比較)」を比較してみると(上記表参照)、以下のように大別される。

混沌① コロナ禍、猛威を振るうデルタ株

1 相応に制御出来ており、正常化に近づきつつある:シンガポール
2 引き続き警戒水準にあるが、最悪期は脱しつつある:インドネシア・ミャンマー・タイ・マレーシア
3 引き続き緊迫状態にあり、緩和には時間を要す可能性:ベトナム・フィリピン

全国民の80%近いワクチン接種率のシンガポールは正常化に最も近い一方、本年初頭には「コロナ優等生」ともてはやされたベトナムが、デルタ株の国内持ち込みを防御出来ず、ここへきて急速に緊迫状態に陥っている。

ワクチン接種の進捗次第であり中国・米国(+日本)からのワクチン供給が進んでいるが、年内収束は難しいとの声もある。

軍のクーデターで政情不安にあるミャンマーについては、インドネシア・タイ・マレーシアと並び、概ね最悪期は脱しつつある模様であり、コロナ政策については奏功しつつあるようだ。フィリピンは直近での感染者数増傾向が顕著であり、今後一段の行動制限が出てくる可能性を示唆している。

混沌② コロナで深まる政情不安

混沌② コロナで深まる政情不安

コロナ禍に伴う人流抑制・社会活動制約に伴う市民の苦難・不安・ストレス鬱積の矛先が国家トップ・政権政党批判に向かうのは先進国・新興国を問わず世の常であり、この傾向がとくに民主主義国家において顕著である点は、避けられない事実である。

アセアン諸国においても、元々脆弱な「やぐら」政治基盤の上にコロナ禍が重く圧し掛かり、マレーシアでは2021年8月、コロナ対応へ不満から、ムヒディン首相が連立与党の信頼を失い辞任。副首相だったイスマイルサブリ首相が就任するという事態が発生している。

また、コロナ禍を理由に過度な人流抑制・情報統制を行っていると見受けられる諸国もあるが、その中でもミャンマーの情勢は報道を見るだけでも酷い。

混沌② コロナで深まる政情不安

特に2021年8月22日にNHKで報道された「NHKスペシャル 混迷ミャンマー 軍弾圧の闇に迫る」は顕著な例であり、実質的な軍政との点でミャンマーと並び国際社会から批判されるタイとも比較にならない程の軍・軍幹部の利権(軍系企業)への執着とクーデターとの関わりが示唆されている。

ミャンマーから流出したという、これら利権関係情報の今後の詳細分析に期待したい。

経済状況と域内M&A状況

上記のような不安要素・不確定要素の多い中、アセアン各国の経済見通し(実質GDP成長率)についても回復見通しにはバラつきがある。タイやマレーシアでは下方修正の一方で、シンガポールでは上方修正となっている。

外需に支えられた回復

とはいえ、不安要素を抱える中でも引き続きプラス成長を見込んでいる点は好転の兆しがあるともいえる。そのドライバー役となっているのが、対中国・対欧米向け輸出を中心した「外需」効果である。

中国経済を牽引しているのが「内需」であるとの点とは、非常に対照的である。

ミャンマー経済も、先進各国の制裁の動きをしり目に、中国やタイ向け天然ガス・原油等資源輸出により経済が支えられる構図となっているようだ。

金融、小売、食品、建設への期待感は旺盛

金融、小売、食品、建設への期待感は旺盛

域内のM&A活動については、2021年はこれまでのところ、In-Out(日本企業によるアセアン企業向け出資)は36件の実績(Capital IQデータベース1-7月)と、全産業ベースで活発・旺盛とは言えない。中にはSMBCグループによるベトナム商業銀行グループ会社向け出資(4月/1,500億円程度出資との報道)や、イオングループによるインドネシアでのイオンモール事業に係る合弁会社向け出資など(4月/150億円程度出資との報道)、金融・小売・食品・建設など特定産業による域内への期待感は引き続き旺盛との印象である。

外部アドバイザーの活用を

M&Aを含む戦略立案において、不安定要素・不確定要素の多い環境下、昨今の一つの特徴として、市場調査や企業調査などのリサーチに加え、進出意義や対象会社とのシナジー創出などの戦略立案部分において、外部プロフェッショナル/アドバイザーも起用しながら事前準備を踏まえた上で取り組む事例が増えている。

プレM&A期間を十分にとりつつ、時々刻々と変化する現地事情・状況に精通した外部リソースの活用・アドバイスの取入れは、このような時期だからこそ意思決定に不可欠であろう。

以上

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