スモールM&Aとは?意味と定義

スモールM&Aとは、文字どおり「小規模なM&A」のこと。

スモールM&Aという言葉に明確な定義はありませんが、小規模企業や個人企業が取引の対象となる場合が多く、一般的には以下に該当する企業との取引と捉えられています。

  • 取引対象:小規模企業・個人企業
  • 取引金額:1億円以下
  • 取引対象企業の年間売上高:1,000万円〜5億円程度
  • 取引対象企業の従業員数:数人〜30名程度

急増するスモールM&A

日本のM&A件数はリーマンショックによって落ち込みましたが、その後、2012年に上昇に転じ、2017年には3,000件を、2019年は4,000件を超えました[注1])。

従来、M&Aと言えば名の知れた大手企業が事業拡大のために中堅・中小企業を買収するパターンがほとんどでしたが、近年は様相が変わっています。

M&A全体のなかでもスモールM&Aの件数増加が顕著であり、2012年(157件)から2017年(526件)にかけて約3倍に増加しています[注2]。

スモールM&Aが注目される背景

日本においては、中小企業が全企業の99%を占めます。また、中小企業による被雇用者の割合は約70%もあります。[注3]

日本経済の基盤を支えているといえる中小企業ですが、近年の少子高齢化や市場のニーズの変化などにより、以下のような課題を抱えています。

  • 経営者が高齢化して後継者問題を抱えているが、適切な後継者がいない。
  • 設備の老朽化が進み、生産性が伸び悩んでいる。
  • 業界の伸び悩みや市場縮小により、経営不振に陥っている。

このような課題から、会社の売却や事業承継を検討する小規模企業・個人企業が増えています。

その一方で、成長意欲の高い企業はM&Aによる事業拡大に積極的で、既存企業が有するサービスやノウハウ、顧客基盤などに魅力を感じています。

このように売り手側と買い手側の利害が重なり、双方の課題を解決できる手法としてスモールM&Aが注目されているのです。

また、M&Aの目的が多様化している点も見逃せません。

事業拡大のためのM&Aだけではなく、後述のようにベンチャー企業の出口戦略としてのM&Aや、起業のためのM&Aなども増加傾向にあります。

このようなケースの選択肢としてもスモールM&Aが注目を集めているのです。

スモールM&Aの主なパターン

スモールM&Aの主な活用目的を、3パターンご紹介します。

事業承継のためのスモールM&A

今、多くの小規模企業・個人企業は、経営者の高齢化や後継者不足の問題を抱えており、廃業・リタイアを視野に入れるようになっています。

しかしながら、多くの経営者は自分の代で廃業するのではなく、何らかの形で事業を引き継ぎたいと考えるものです。

身内に事業を継いでくれる人がいなくても、スモールM&Aなら全国から後継者候補を探すことができ、譲渡先が見つかれば、廃業を避けることができます。

実際にスモールM&Aの市場では、後継者問題を理由に事業承継先を探している小規模企業が少なくありません。

また、事業を引き継ぐ側(買い手側)も、株式譲渡によるM&Aを選べば顧客や従業員などを引き継ぐことができます。

新事業を立ち上げるより少ないコスト・労力で事業拡大や事業基盤の強化を図れるのは大きなメリットだと言えるでしょう。

スモールM&Aによる起業

ITテクノロジーの発展により、従来よりも起業しやすい環境が整いつつあり、近年の新設法人数は増加傾向です。

一方で、起業には一定の資金が必要で、必ずしも成功する保証はないため、大きなリスクを背負うことになります。

このような起業時のリスクを低減するため、一から会社を立ち上げるのではなく、すでに立ち上がっている事業を譲り受けて起業するという選択が注目を集めています。

その際に、個人でも手が出しやすい方法として、スモールM&Aが活用されることがあります。

スモールM&Aは、通常のM&Aに比べて低額で既存の企業・事業を譲り受けます。

日本政策金融公庫 総合研究所が公表している「2019年度新規開業実態調査[注4]」によると、開業費用の平均値は1,055万円でしたが、スモールM&Aなら数百万円で企業や事業を買収できる例も多くあります。

このような背景から、サラリーマンや引退後のシニア層などの個人がスモールM&Aで起業するケースが増えています。

また、事業承継したい理由が、経営不振ではなく、経営者の高齢化や後継者問題を理由とする案件であれば、黒字事業の承継も可能です。

売り手企業が有するノウハウや専門性を引き継げるので、業界経験がなくても新たなビジネスをスタートできます。

ベンチャー企業の出口戦略としてのスモールM&A

アメリカでは、ベンチャー企業の出口戦略としてIPO(株式公開)ではなく、M&Aによる売却が一般的です。

日本では、従来はIPOによる上場を目指すベンチャー企業が大半を占めていましたが、近年M&AやスモールM&Aを出口戦略とする企業が増加しています。

IPOは、条件や審査が厳しく、非常に狭き門であるため、近年ではスモールM&Aが注目されているのです。

スモールM&Aの課題・リスク

スモールM&Aにおける課題・リスクを3点、ご説明します。

売り手側のリスク:専門的知識の必要性

スモールM&Aで事業を譲り渡すには、会計・法律・税金など幅広い知識が必要になります。

自社だけで手続きを進めるのは現実的ではないため、M&Aの仲介会社やM&Aアドバイザーに依頼するのが一般的です。

しかし、仲介手数料が高額なため、利益がほとんど残らないケースも見受けられます。

買い手側のリスク:デューデリジェンスの必要性

最近では、スモールM&Aのオンラインマッチングサービスも登場していますが、当事者同士の交渉では買い手側のリスクの見落としによるトラブルが起こりがちです。

契約締結後になって不備や違反が発覚したり、対象企業の重大な問題点を見落としていたりして、大きな損害を被るケースもあります。

このようなリスクを低減するには、公認会計士や弁護士など専門家による徹底したデューデリジェンスが必要です。

なおデューデリジェンスとは、投資対象の企業について価値やリスクを客観的に評価することを意味します。

従業員の離職など社内混乱のリスク

スモールM&Aによって2つの企業が統合されると、企業文化の違いから従業員間で軋轢が生まれるケースが多々あります。

特にM&A後の待遇や労働環境などについて、売り手企業の従業員の合意が得られていなければ、離職してしまうことも十分考えられます。

経験豊富な従業員が離職してしまうとシナジー効果が生まれず、期待していた収益が得られないという事態になりかねません。

スモールM&Aに限らず、M&Aは契約が成立したら終わりではなく、その後の適切な「PMI(経営統合作業)」が重要です。

PMIに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:「PMIはM&Aの成否を握るプロセス」

スモールM&Aの要はデューデリジェンス

上述の通り、スモールM&Aは中小企業や小規模事業者および、起業を目指す個人にとって多くのメリットがあります。

現状、事業承継の文脈で活用されることが多いスモールM&Aですが、買収側の企業や個人の資質によっては、相乗効果が生まれ、事業成長が見込まれます。

スモールM&Aの活用により大きな事業成長を成し遂げる企業がいる一方で、誤った合併や統合は多大な損失を招きます。

スモールM&AおよびM&Aにおいて重要なのは、徹底したデューデリジェンス の実施です。

本メディアの運営会社であるフロンティアマネジメント株式会社では、M&Aアドバイザリーサービスを提供しており、M&A戦略策定から実行支援、その後の統合(PMI)まで一貫したサポートを行なっています。

スモールM&Aといえど、会計・法律・税金に関する幅広い専門知識が必要になります。

必要に応じてM&Aアドバイザリーサービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

Frontier Eyes Onlineでは経済やビジネスのトレンドから基礎知識まで、幅広く解説しています。

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参照
[注1] グラフで見るM&A動向|MARR Onlineマールオンライン
[注1][注2] 2018年版 中小企業白書|M&Aの現状
[注3] 中小企業白書 2019 – 中小企業庁 – 経済産業省
[注4]2019年度新規開業実態調査

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