PMIはM&Aの成否を握るプロセス

企業の合併や買収を行うM&A(Mergers & Acquisitions)でもっとも重要なのが、PMI(Post Merger Integration)と呼ばれるプロセスです。 このPMIの精度がM&Aの成否に直結します。 PMIでもっとも重要な時期は、契約締結後から3~6ヶ月間です。この時期には特に、PMIでやるべきことを理解し、中間目標(マイルストーン)を立てて取り組む必要があります。 本記事では、PMIを構成する4つのフェーズと、それぞれのフェーズを成功させるポイントを解説します。

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PMIとは?M&A後の統合シナジーを生み出すための4つのフェーズ

PMIとは、M&Aを行った企業の経営統合を行うプロセスです。

企業内外の事業・組織・資源を再編するため、通常は契約締結前から準備を進め、デューデリジェンス(対象となる企業の価値やリスクなどの調査)が完了した段階でスタートします。

PMIは統合シナジー(相乗効果)を生み出し、M&A後の企業価値を向上させるうえで、もっとも重要なプロセスです。PMIは4つのフェーズに分かれます。

統合方針の決定:どのようにPMIを行うかのビジョンを作る

まず、どのようにPMIを行っていくのか、統合方針を決定します。

デューデリジェンスで得た情報をもとにして、M&Aを行った企業を自社に吸収していく手順やスケジュール感を大まかに整理します。特に着目すべき点は、被買収企業の資産や競争力、市況、内部ルール、対象企業の従業員の反応などです。

ランディングプランの策定:3~6ヶ月分のTo Doリストを作る

次にクロージング(M&Aでの経営権の移転を完了させる最終的な手続)から3~6ヶ月で行う作業を洗い出して、実行計画に落とし込む作業「ランディングプランの策定」をします。

これはM&A後の短期的なTo Doリストを作るというイメージの作業です。

大きく分けて人事・労務や内部ルールの見直しなどの組織再編に関する作業と、設備投資やサプライチェーンの再構築などの事業再編に関する作業の2つがあります。

100日プランの策定:ランディングプランを中期事業計画へ落とし込む

短期的な実行計画であるランディングプランに対して、中期的な経営計画を設定するのが「100日プラン」です。

このプランでは最初の100日間で成果を出し、統合シナジーを検証することを目的として、M&A後の中長期的な課題をなるべく具体的に整理します。

統合実施・効果検証:PDCAサイクルを回し統合シナジーをチェック

M&Aは統合シナジーを獲得し、経営統合後の企業価値を高めるのが目的です。M&A後は、ランディングプランや100日プランをもとに組織再編・事業再編を行い、経営統合の成果を検証します。

統合方針の決定:連邦型統合・支配型統合・吸収型統合の違い

M&Aを行った企業を自社へ吸収していく方法は、「連邦型統合」「支配型統合」「吸収型統合」の3つに分かれます。

1.連邦型統合:対象企業の文化や自主性を維持する

「連邦型統合」とは、それぞれ主権を持つ国家が集まる「連邦制」のように、吸収合併を行った企業の文化や自主性をなるべく残す統合方針です。対象企業は子会社化されるものの、従来のように経営方針の決定権を維持します。

2.支配型統合:対象企業の経営方針に関与していく

「支配型統合」とは、対象企業を子会社化する一方で、経営方針に積極的に関与する統合方針です。譲渡側の経営方針に対し、譲受側が積極的に関与していくため、譲受側のカラーが色濃く現れます。支配色が強くなると、譲受側の「乗っ取り」とみなされることもあるため、注意が必要です。

3.吸収型統合:対象企業を吸収し、自社と一体化させる

対象企業の事業・組織・資源の一部または全部を吸収し、譲受側と一体化させるのが「吸収形統合」です。譲渡側の法人格を消滅させる「吸収合併」、事業の一部を譲受側に承継させる「吸収分割」「事業譲渡」などの方法があります。

ランディングプランの策定:M&A後の3~6ヶ月で行いたい6つの作業

上記の通りランディングプランとは、M&A後の3~6ヶ月のスパンで行う優先課題リストです。ランディングプランでは、次の6点の課題を設定します。

1.会社の組織編成や意思決定プロセスの見直し

M&A後の企業の経営陣・経営体制や、意思決定プロセスを見直し、統合シナジーを発揮できる組織づくり、仕組みづくりを行います。場合によっては定款の変更も考えられます。誰がリーダーシップをとるかという問題からスタートし、人員の配置、情報共有の仕組みなどを整備していき、譲渡側・譲受側の従業員双方が納得できる組織再編を目指します。

2.社内のコミュニケーションを推進し、企業文化を育てる

M&Aのシナジー効果を高めるためには、譲渡側・譲受側という枠組みにとらわれずに、従業員間のコミュニケーションを活性化する必要があります。部署や事業所の垣根を超え、従業員同士の交流や情報交換を推奨して、新たな企業文化を育てます。M&Aで異文化による交流をプラスに変えることで、より高い相乗効果を望めます。

3.企業格差を生み出さない人事・労務面でのフォロー

役員人事や人材の受け入れ対応、人員整理や労働条件の変更などを行う必要があります。どんな人事・労務条件にするか如何によって、当該M&Aの成否が大きく異なります。

4.経理・財務・庶務の業務フローの効率化

M&Aを行って企業規模が大きくなれば、経理・財務・庶務といった事務作業も複雑化します。

両者の業務システムやITシステムをなるべく早く統合し、共通した業務フローを用いて、オペレーションの効率化に務めましょう。

譲受側が上場している場合、J-SOX法への対応が義務付けられています。したがって、内部統制システムの統合が必要になる点も留意しましょう。

関連記事:内部統制報告制度「J-SOX法」とは? なぜできたのか?

5.経営管理や業績評価制度の整備

譲渡側の企業が設立されて間もなかったり、ワンマン経営であった場合、組織的な経営管理がなされていない場合があります。その際は、会計基準や管理会計の方法、業績管理制度などを統一しなければなりません。

6.事業や取引先の見直しや契約問題の整備

M&Aは自社の事業や取引先を見直し、「選択と集中」を行うよい機会です。採算の取れない部門の縮小や、顧客の選別によるスケールメリットの享受、商品の原価や販管費の見直しなど、経営の効率化に努めましょう。

100日プランの策定:企業価値を高めるための3つの段階

ランディングプランで設定したTo Doリストをもとにして、具体的な中期事業計画を立てていくのが「100日プラン」のフェーズです。

100日プランは、3つの段階を経て策定します。

プロジェクトチームを決める

まずは100日プランの策定にあたって、プロジェクトチームを組成しましょう。チームを編成は、シナジー効果をより発揮するために買収した企業と買収された企業のメンバーをバランス良く配置することが重要です。

現状分析を行い、課題を「見える化」する

デューデリジェンスをもとにして、対象企業の現状分析を徹底的に行い、PMIでの課題を明確化しましょう。
対象企業の事業・組織・資産や、生産体制、サプライチェーン、キャッシュフローなど多岐に渡る項目について客観的なデータを集め、現状の課題と問題点を可視化することが大切です。

ビジョンを策定し、マイルストーンを決める

100日プランのフェーズでは、文字通りクロージングから「100日間」で成果を出すことを目的としています。

ニッチ戦略やブルーオーシャン戦略などのコンセプトを用い、独自性のあるビジョン・ポジションを設定しましょう。この他、課題やアクションプランの策定も重要です。

各プロジェクトはPDCAサイクルを回して評価することで、成功確率が高まります。

M&Aを成功させ、統合シナジーを生み出すにはPMIが重要

M&Aを成功させ、統合シナジーを生み出すには、PMIをいかにうまく行うかが重要です。フロンティア・マネジメント株式会社は、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)の知見に加えて、PMI専門のコンサルタントがアドバイスを行う、業界随一のPMI支援サービスを提供しています。M&AやPMIについてお悩みなら、ぜひフロンティア・マネジメントにご相談ください。

参考
日本企業の持続的成長のためのM&A後の統合(PMI)支援サービス

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