プロラタ方式を利用した返済方法とは? 種類や特徴をプロフェッショナルが解説

複数の金融機関から借り入れを受けたものの、返済に際してリスケジュールを必要とする場合があります。その際に利用される返済方法のひとつがプロラタ方式です。本記事ではプロラタ方式の概要について、その種類や、利用時の注意点を解説します。

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プロラタ方式とは――借入金を比例に応じて按分する方法

プロラタ方式とは――借入金を比例に応じて按分する方法

プロラタ方式とは、返済額を何らかの基準に基づいて比例按分して決める方法です。「プロラタ」は「比例に応じて按分する」という意味です。

業績悪化などにより企業の業績の立て直しをする際、金融機関に対して、借入金の返済を一時停止してもらわなければなりません(いわゆる「リスケジュール」)。

返済を一時停止してもらっている間に事業計画を策定し、借入金返済の方向性も併せて定めます。しかし、事業計画が策定できても、すぐに借入金の返済を約定通りに戻せるところまで事業が回復する、というわけにはいきません。借入金返済を引き続き停止してもらう、とまではいかずとも、何らかの継続的な金融支援を依頼する場合が一般的です。

また、借入金返済の一時停止をしている場合、基本的には追加で融資を受けることはかないません。したがって年間に生み出されるフリーキャッシュフローの総額が約定返済の金額に満たない場合、金融機関側に対して一定の支援をしてもらえるよう依頼する必要があります。具体的には返済額を、年間のフリーキャッシュフロー金額の範囲内の金額に調整してもらわなければなりません。

「債権者間で平等である」ために

返済額が決まったとして、取引している金融機関が複数ある場合、この返済額をどのように按分すればよいのか、という問題が追加で発生します。

一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「中小企業の事業再生等に関する研究会」が2022年3月に定めた「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」においては、「事業再生計画案における権利関係の調整は、債権者間で平等であることを旨とし、債権者間の負担割合については、衡平性の観点から、個別に検討する」とあり、本件の返済額の按分については、衡平性の観点で見ても「妥当である」と言える必要があります。なお、「衡平」とは釣り合いが取れていることを意味する言葉です。

上記のガイドラインは2001年9月に策定された「私的整理に関するガイドライン」の流れを汲んでいるもので、従前より衡平性が重視されていることが確認できます。

返済における衡平性のために利用される方法が、「プロラタ方式」です。プロラタ方式で返済額を按分する基準については、主に二つの考え方があります。

残高プロラタ方式の特徴とは

残高プロラタ方式の特徴とは

私的整理においてもっともオーソドックスな手法が、「残高プロラタ方式」です。基準日時点における各金融機関の借入残高の割合(シェア)を基準にします。

残高プロラタの場合、返済額を各金融機関の借入残高の割合に応じて按分するため、借入残高の多い金融機関への返済額は多く、借入残高の少ない金融機関への返済額は少なくなり、衡平性を保つことができるというメリットがあります。

例えば、企業がA銀行から150、B銀行から50の合計200を借り入れているケースを想定しましょう。毎月の返済額が10となった場合、残高プロラタで返済額を按分すると、2つの銀行の借入残高割合はA銀行が75%、B銀行が25%となります。そのため返済額はA銀行に10×75%=7.5、B銀行に10×25%=2.5返済することになります。

図表1_残高プロラタによる返済額の算定
金融機関との取引において、企業が特定の金融機関に対して担保の差し入れを行っている場合が往々にしてあります。残高プロラタで返済額を按分する場合、差し入れている担保の価値をまったく加味せず、単純に借入残高のみに応じて按分を行っているため、担保が差し入れられていない金融機関に対して不利に働く場合があります。

例えば、借入残高が100のA銀行とB銀行があり、A銀行に対してのみ、担保価値40の不動産を差し入れているものとした場合、無担保の借入残高はA銀行が60、B銀行が100となります。この時に残高プロラタで返済額10を按分すると、それぞれの借入残高の割合は50%のため、返済額は両行とも5となりますが、無担保の借入残高が異なるにもかかわらず、返済額が同じになるのは納得がいかない、とB銀行が主張する可能性が残るわけです。

信用プロラタ方式(非保全プロラタ方式)の特徴とは

信用プロラタ方式(非保全プロラタ方式)の特徴とは

この場合に用いられるのが、「信用プロラタ方式」(非保全プロラタ方式)という考え方です。信用プロラタでは、借入残高から差し入れられている担保価値(保全額)を除いた信用残高(非保全残高)を算出し、その割合に応じて按分します。

上記の例の場合、A銀行の信用額は60、B銀行は100なので、その割合はA銀行が37.5%(60/160)、B銀行は62.5%(100/160)となり、返済額10の按分はA銀行3.75、B銀行6.25となります。

図表2_信用プロラタによる返済額の算定

プロラタ方式の注意点――「信用プロラタ」採用はまれ

プロラタ方式の注意点――「信用プロラタ」採用はまれ

基本的には「残高プロラタ」を採用することが多く、「信用プロラタ」を採用するケースはまれです。

その理由としては、「信用プロラタ」を使用する際に算出する信用残高、ひいては担保の評価が難しいという点が挙げられます。担保として差し入れられるものの代表格としては不動産や株式などが挙げられますが、これらの価値(評価額)に対して、関係者全員が一致して合意する必要があります。

例えば不動産について、100という値段がついていたとしても、ある人はその価値を120と評価する一方で、80と評価する人もいます。株式については日々、株価が変動しています。そのような中で、各担保の評価に対する見解を一致させることは非常に困難です。

ましてや、その評価の仕方次第で信用残高・シェアが変わり、自行・自金庫に対する返済額が増えたり減ったりするため見方がシビアになりやすく、合意形成が非常に困難です。

また、私的整理にあたっては対象債権者全員の一致が原則となっているため、一行でも反対があると合意形成ができません(私的整理に多数決制度を導入しようという動きもありますが、現時点で導入時期は未定です)。法的整理のような裁判所の関与・監督の下であれば「信用プロラタ」の採用もあり得ますが、私的整理においては厳しいというのが現状です。

事業再生局面では専門家活用の検討も

事業再生の局面において各金融機関の調整は必須であるものの、金融機関の対応ノウハウは基本的に各企業に備わっていない場合が多いでしょう。また、取り引き金融機関数が多い場合においては各行ごとの融資額や保全状況によってスタンスにばらつきが出るため、全行の意向をそろえるのに非常に難儀し、多大な時間を要する場合があります。

一方で、企業の本分は本業を回して顧客にサービスを提供し、その見返りとして報酬を頂くというサイクルを回し続け、利益を確保する点にあります。金融機関調整に時間を取られ、本業がおろそかになってしまう事態は極力避けたいところです。

したがって事業再生局面においては専門家を活用し、できる限り本業に専念できる環境をつくる、という案も一つの選択肢として念頭に置きましょう。

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