コロナ禍による“巣ごもり消費”の影響で、グローバルでヒットタイトルを持つパッケージゲーム会社の収益が、好調に推移している。自宅に滞在せざるを得ない時間が増え、友人との交流にオンライン経由でゲームをプレイするというライフスタイルも、ゲームとの接触時間増を促していると考えられる。それに加え、店頭での販売からオンラインによるダウンロード販売へのシフトも、好調を牽引していると考えられる。

大幅な営業増益だった2020年4-6月期決算

任天堂オフィス

2020年8月中旬までに開示された主要パッケージゲーム各社の4-6月期決算については、Switchハード販売、および大ヒットタイトル「あつまれ どうぶつの森」の販売好調で、任天堂の営業利益は前年同期比5.3倍となる1,447億円、新作「FF7 REMAKE」のダウンロード販売が好調であったスクウェア・エニックスの営業利益が同3.4倍の245億円、新作「バイオハザード RE:3」や、リピートタイトル「モンスターハンターワールド:アイスボーン」のダウンロード販売が好調であったカプコンの営業利益は同39%増の107億円となった。

上記3社以外の大手ゲーム会社でも、コロナ禍で厳しい状況が続くゲームセンター運営事業や遊技機事業などの悪影響も見られたが、パッケージゲームソフト事業に関しては、ダウンロード販売が牽引して好調とのコメントが見られる。

ダウンロード増加、コロナが引き金に

4-6月期では、コロナ禍により、パッケージゲームソフトの流通が機能不全に陥ったことも、ダウンロード販売の需要増をもたらしたと考えられる。
米国を中心にグローバルで5,000店以上のゲームハード/ソフト販売店舗を運営するGame Spot社は、3月に一時的に3,000店以上を臨時休業するなど、パッケージゲームの店頭販売は、コロナ禍で大きな影響を受けた。
ゲームに興味を抱いた消費者は、コロナ禍で物理的に困難になったパッケージソフトの店頭購入や、配達時間を要するオンライン購入を避け、手間や時間をさほど要しないオンラインによるダウンロード購入を選ぶ流れは、今後も確実に進んでいくとみられる。

また、オンラインによるダウンロード販売は、バンドル化や価格戦略の導入により、旧作の需要増加も可能となる。もともと米国では、一定期間を購入した旧作パッケージゲームの価格は逐次下落していくが、新作の投入と併せたダウンロード販売による旧作の積極的な値引きなどを行うことなどにより、旧作販売の活性化も可能となっている。
ゲームソフト各社の“リピート販売の好調”との決算コメントには、このような効果が見て取れる。

大手に集中する、「恩恵」

ゲーム対戦イメージ

ただし、日本国内のみでは、多額な開発費を必要とする大作パッケージソフトビジネスを軌道に乗せることは難しくなっており、上記のようなダウンロード販売好調の恩恵を享受できるのは、グローバルで高い知名度を有するゲームタイトルを有する大手ゲームソフト会社に限られる。
今後もグローバルでの高い知名度を維持/拡大するためには、ゲームタイトルのシリーズ化、新規タイトルの投入だけではなく、映像化などのメディアミックス展開も必要になってくると考えられる。
既に「バイオハザード」などの著名ゲームタイトルは、ハリウッドで映画化もされているが、今後はネット動画配信事業者と組んだゲームタイトルの映像化も行われると見られる。

グローバルなメディアミックス戦略が課題に

カプコンは、2020年3月に、執行役員待遇で映像事業戦略責任者をアサインしており、ゲームとの相乗効果を狙ったグローバルでのメディアミックス展開を強化するものと見られる。カプコンのみならず、現状のダウンロード販売好調を維持、拡大させるような、ゲームソフト各社のグローバル戦略に注目していきたい。

関連記事

メタバースで変わるエンタメ ゲーム会社へのM&A加速

“メタバース”への巨額投資が、エンタメ業界の構図を変えようとしている。多くの人が同時参加する仮想空間を運営するには、オンラインゲームの技術と高度なクラウド技術が必要で、大手企業によるゲーム会社のM&Aが加速する可能性もある。

TSMC熊本進出の衝撃㊤:進出の短中期影響は1.3兆円

半導体の世界最古にして最大のファウンドリーメーカー、TSMCが熊本県に進出することを発表した。フロンティア・マネジメントの試算では、熊本県を中心に中短期で1.3兆円の経済効果を予想する。この記事では㊤㊦に分けて、熊本県を中心に九州ひいては日本の半導体産業発展に向けた提言をしたい。

エレクトロニクス大手の復活は本物か㊦長期トレンドと22/3月期の注目点

国内大手エレクトロニクス8社の収益性が、改善方向にある。現在の2022/3月期業績予想が達成されれば、売上高営業利益率は7%を突破し、ROEも2桁へと上昇する公算が大きい。過去20年間で最高水準となるが、エレクトロニクス大手の収益性回復→復活は本物だろうか?今回の記事㊦では、長期トレンドの分析、21/7-9月期業績と22/3月期の注目点について、言及したい。

ランキング記事

1

アシックスの逆襲「箱根駅伝着用ゼロ」から復活

2022年の箱根駅伝は、青山学院大学が6度目の総合優勝を遂げた。記録は自らの大会記録を大幅に更新する10時間43分42秒。この記事では、レースの高速化を支えるランニングシューズを例に、21年の大会で「箱根駅伝着用ゼロ」に沈んだアシックスの巻き返し戦略に焦点を当てる。

2

2022年展望 不動産 住宅販売のリスクは、金利動向次第

2020年から2021年にかけて住宅の売行きが増加して、特に戸建住宅の売行きが好調だ。しかし、世界各国でインフレが進行しており、各国の利上げ次第では日本の長期金利にも影響し、高額物件の販売にブレーキがかかる可能性もある。

3

バルミューダ事例に学ぶインサイダー取引対応

2021年11月中頃、洗練されたデザインが人気の家電メーカー「バルミューダ」が華々しくスマートフォン市場に参入といった話題に、冷や水を浴びせるようなニュースがメディアを賑わせた。社外取締役によるインサイダー取引に係る社内規程違反と関係者の処分についてだった。本件を題材にインサイダー取引対応について考えてみたい。

4

2022年展望 中国 急激な規制から安定的な政策へ

中国は2021年、経済や文化、教育など様々な方面で、規制や制限を強化した。前年の急激な政策の影響を和らげるため、2022年の中国の経済政策は「穏」(安定)に変化していくとみられる。

5

TSMC熊本進出の衝撃㊤:進出の短中期影響は1.3兆円

半導体の世界最古にして最大のファウンドリーメーカー、TSMCが熊本県に進出することを発表した。フロンティア・マネジメントの試算では、熊本県を中心に中短期で1.3兆円の経済効果を予想する。この記事では㊤㊦に分けて、熊本県を中心に九州ひいては日本の半導体産業発展に向けた提言をしたい。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中