①2021年も倒産は減った

①2021年も倒産は減った

筆者は2021年3月に「コロナ禍に倒産は減った

の記事の中で、2021年後半から少しずつコロナ禍での一過性融資に対する抜本処理が進んでくるのではと予想していた。さて、2021年を振り返るとどうであっただろうか。

倒産件数としては、2021年1~11月末現在で累計5,526件(東京商工リサーチ調べ)と前年同期間の7,215件より大幅に下回った。直近20年間において過去最低水準で推移しており、全体を見ると相変わらず動きは鈍い状況が続いている。

従業員300人以上の倒産ゼロ

2021年11月まで従業員300人以上の倒産件数はゼロであり、従業員10人未満の件数が約9割を占めていることから、まだまだ本格的に抜本処理が進んでいるとは言い難い。

実際にコロナの影響を受けやすい飲食業や観光業等の動きを見ていると業況は厳しい状況が続いていたものの、様々なコロナ対応の公的補助金や、比較的大きな企業に対しては、資本性ローンの調達などで資金繰りを支えていた会社も多くみられており、資金繰りの切迫感を現場で感じることは少なかった。

オリンピック前後の第5波までのコロナ影響が長期化したこともあり、前回予想していた「21年後半から動き出す」という予想に対しては、まだ顕在化された目立った動きは現時点ではないと考えられる。

コロナ関連倒産は増加

コロナ関連倒産は増加

▲出所 東京商工リサーチ

一方、今後の動向を考える上で予兆と感じられるデータも出始めている。まずは下記グラフを見て欲しい。

これは、倒産件数のうちコロナ関連倒産の推移を表したものである。

2020年はコロナ関連の対応も環境の一過性と認識しつつ、緊急対応が続いていた年だった。

2021年に入るとコロナ禍という環境にも慣れ、一定程度先の将来を見据えながら対応できる時間の猶予が生まれた。

しかし、なかなか先が見通せない企業については、徐々に倒産という判断をせざるを得ないケースが着実に増えつつあると認識している。

コロナで先送りされた債務処理

コロナで先送りされた債務処理

また倒産の全体件数が減少しているにも関わらず、コロナ関連倒産が増え続けている事にも注目したい。

これは本来の状況であるならば、コロナに関わらず何らかの債務処理が必要な企業が、コロナ影響を理由に抜本処理が先送りされており、最終的には耐えきれなくなってコロナ関連倒産に関連付けされて淘汰が進みつつあるのではないかと推察される。

②2022年見通し 企業倒産は増加に転じる

②2022年見通し 企業倒産は増加に転じる

前述した2021年の足元状況を踏まえつつ、2022年見通しを予測すると少なくとも21年のような水準で倒産件数が推移するとは考えにくい。

倒産件数は、増加基調に転じるのではないかと予想される。

特にコロナ関連倒産は今後も更に増加傾向が続き、全体の倒産件数を押し上げるドライバーになってくるのではないかと推測される。

その背景として緊急事態宣言が解除された以降、様々な業界で消費の需要回復度合いを見ているが、コロナ前の2019年との比較をする中で完全に元通りに回復している企業はほとんどない。

外食、ホテル、観光などのサービス業は特にその影響を受けているものと感じられる。

宣言解除に伴う補助金の減廃がトリガーに

宣言解除に伴う補助金の減廃がトリガーに

そのような中で、今まで補助金によって何とか凌いできた企業が、宣言解除によって補助金がなくなる。もしくは、減少することとなる。

むしろ、コロナ前よりも経営環境が悪化する企業が増えて来る。逆にコロナで特需を受けていた中で、何とか凌いできたスーパーなどの小売業は、特需の反動で業績が悪化している企業もある。

これらの企業が倒産増加のトリガーになってくることが予想されるためである。

金融機関の姿勢次第の面も

もちろん、業績悪化が即倒産に直結するものではなく資金繰りを支える金融機関の姿勢次第で、金融支援等により倒産を回避させていく企業も出てくるものと考えられる。

しかし、金融機関も全ての企業を救えるものではない。

2022年、倒産増加は避けられない

以上の事から、2022年は倒産件数の増加は避けられないのではないかと考えるのが、メインシナリオではないだろうか

関連記事

コンサルに求められる考え方(マインドセット)・行動特性:現役コンサルが解説するコンサルタントスキルの体系化②

本論考では著者が実施している経験則をベースにした社内向けコンサルタント養成研修の内容をもとに、暗黙知となっているコンサルタントスキルを全5回にわたって体系的に解説する。前回は著者の実体験に基づく課題意識とコンサルタントスキルの全体像について紹介した。今回は全てのスキルの土台となるコンサルタントとしての「考え方・行動特性」について紹介する。

人的資本とは 経営の新しい潮流

人材を資源ではなく付加価値を生む「資本」として見直す潮流が拡がっている。企業の「人的資本」に関する情報開示が制度化されるのに伴い、人事部門は従来の定型業務中心の役割から、企業の中長期戦略を実現するための戦略人事への転換が求められている。

村上春樹さんから学ぶ経営㉕ ニッチ再び。大谷選手と「何かを捨てないものには、何もとれない」

私が経営の根幹だと考える「ニッチ」(『隙間』の意味ではありません)について、再び論じたいと思います。大谷翔平選手の活躍が常識外であったため、少々長い回となります。それでは今月の文章です。

ランキング記事

1

アリババは国有化されていくのか

アリババグループの金融・オンライン決済部門のアント・グループ(前アント・ファイナンス)は、2020年11月に予定されていた上場が延期され、そのまま現在に至っている。ジャック・マー氏の中国金融政策への批判発言から端を発し、アリババは金融業に限らず様々な制限が加えられていると報道されている。この記事では、アリババの現状とともに、中国のモバイル小口決済について考察したい。

2

品質不正多発の三菱電機に学ぶ、あるべき不正撲滅方法

三菱電機の品質不正が止まらない。2021年7月に35年以上に渡る品質不正が公表された。調査を進める中で不正の関与拠点、件数が膨らみ、直近の報告では実に150件近い不正が認定されている。一方で、当社に限らず不正そのものの発生や再発は止まらない。再発防止策がなぜ機能しないのか、当社の取り組みを題材にあるべき再発防止策について解説する。

3

進む地方銀行の持株会社体制への移行

経営統合によらない地方銀行の持株会社体制への移行が増えている。銀行法改正による後押しを受けて、地域の課題に向き合いながら、事業の多角化を進めやすくして収益拡大を図るのが狙いであるが、果たして中長期的な企業価値向上に資する事業ポートフォリオの構築は進むのだろうか。

4

人的資本とは 経営の新しい潮流

人材を資源ではなく付加価値を生む「資本」として見直す潮流が拡がっている。企業の「人的資本」に関する情報開示が制度化されるのに伴い、人事部門は従来の定型業務中心の役割から、企業の中長期戦略を実現するための戦略人事への転換が求められている。

5

村上春樹さんから学ぶ経営㉕ ニッチ再び。大谷選手と「何かを捨てないものには、何もとれない」

私が経営の根幹だと考える「ニッチ」(『隙間』の意味ではありません)について、再び論じたいと思います。大谷翔平選手の活躍が常識外であったため、少々長い回となります。それでは今月の文章です。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中