マイクロモビリティとは 現状の課題と今後の展望を解説

この記事では、日本市場での電動キックボード シェアリングサービスを推し進めるBRJ株式会社(※)の一瀬 聡亨 執行役員COO BIRD事業本部長(以下、BRJ一瀬氏)からのコメントも交え、マイクロモビリティや電動キックボードがトレンドとなっている背景や今後の動向について紹介します。 (※:BRJ株式会社(以下、BRJ)は、世界最大の電動キックボード シェアリングサービスを展開する米国Bird Rides社とライセンス契約を締結した日本で唯一のプラットフォームパートナー企業です。マイクロモビリティサービス「BIRD」を展開するBird Rides社は、2017年に米国カリフォルニアで設立され、電動キックボードのシェアサービスを初めて実施したパイオニア企業です。)

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マイクロモビリティとは

マイクロモビリティとは
マイクロモビリティ(超小型モビリティ)とは、自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人~2人乗り程度の電動車両のことを指します。

2010年、国土交通省がマイクロモビリティの利活用に関する実証実験を開始し、ガイドライン公表や認定制度の創設、マイクロモビリティ導入の補助などを推し進め、直近では保安基準の改正など、マイクロモビリティの普及に取り組んでいます。

マイクロモビリティは、その大きさや定格出力に応じて、以下の3つに分類されます。

  • 第一種原動機付自転車
  • 軽自動車(型式指定車)
  • 軽自動車(認定車)

例えば、街中で見かけることも多くなった電動キックボードもマイクロモビリティの一つです。電動キックボードは現行法で原動機付自転車に分類されますが、22年3月に閣議決定がされた道交法改正案で新たな分類(※1)が設定されるなど、今後の普及に向けて動きがますます活発になっています。

BRJ一瀬氏は

「閣議決定されたことで、ヘルメット無し、運転免許証なしで電動キックボードが利用できるようになる可能性が高まりました。2年後くらいには適用されるのではないか」

と見ています。

※1:自転車に相当する大きさで最高時速が20キロ以下の電動キックボードを、新たに「特定小型原付き自転車」に分類し、原付きバイクの一類型とされる。16歳未満の運転は禁止だが、運転免許は不要に。また、違反者は交通反則通告制度の対象となる

マイクロモビリティがトレンドになっている背景


マイクロモビリティが注目されている背景について解説します。

カーボンニュートラルの普及

電動車両であるマイクロモビリティは、日本のCO2排出量の多くを占める自動車利用、特に地域交通のグリーン化に向けた次世代の移動手段として、脱炭素やカーボンニュートラルという観点で普及促進が取り組まれてきました。

MaaSの推進

また、国土交通省のMaaSを含む新たなモビリティサービスの推進取組においては、新型輸送サービスの一つとしてマイクロモビリティが挙げられ、ラストワンマイルにおける活用が注目されています。

シェアリングエコノミーの拡大

持続可能な共生社会の実現に向けて大きな役割を担うとされるシェア(共助・共創)の観点でも、スマートフォンの普及や通信環境の整備など、テクノロジーの発展も相まってマイクロモビリティのシェアリングサービス拡大が進むことが期待されています。

BRJ一瀬氏はマイクロモビリティのトレンドについて、以下のように考えています。

「米国Bird Rides社が日本市場に初上陸した2019年当時は、法改正の方向性も定かでなかった。しかし、昨今の法改正の閣議決定や、MaaS、シェアリングエコノミーへの取り組み加速が、マイクロモビリティや電動キックボードの今後の普及・ビジネスへの追い風になることを期待している」

マイクロモビリティの現状と普及が遅れている理由

マイクロモビリティの現状
海外諸国との比較においては、マイクロモビリティの普及が遅れていると言われている日本。主な理由として挙がるのが国民性と安全性、そして日本の道路事情です。

国民性と安全性

BRJ一瀬氏は欧米諸国と日本のアプローチの違いについて、こう語ります。

「日本はその慎重な国民性もあって、まずは規制をきちんと整え、安全面をしっかり担保することを優先する傾向がある。普及の速度にはマイナス影響かもしれないが、安全面や国民の認知度・納得感の醸成に時間をかけるのは良い傾向だととらえている。表面上、海外に比べ日本が『遅れている』と見えるかもしれないが、欧米諸国はまずサービスを導入してから浮かび上がってくる問題点に対処する形で規制をかけていくのでそもそもアプローチが異なる」

日本の道路事情

また、

「日本の交通事情も一因。都市部の道路は基本的に狭い。そのような地域でどのように安全性を確保して普及させることが出来るのか、また今後の新たな都市開発にどのように組み込んでいくのか、など日本の交通事情や都市の在り方を踏まえた独自のマイクロモビリティ・電動キックボードの普及を考えていくことが肝要」

と見ています。

マイクロモビリティの今後の動向

マイクロモビリティの今後
そんな日本独自のマイクロモビリティの普及を推進していく上で、今後の鍵は何になるのでしょうか。BRJ一瀬氏は「地域の理解」を挙げています。

「BRJが取り組んでいるのは地域の方々と新しいモビリティの形を作ること。急がば回れで、地域の関係者とじっくり話をして、共感してもらい、協力も頂きながら一緒にビジネスモデルを作り上げていくことが、長く続くサービスの確立に繋がると考えています」

BRJは2021年10月に東京都立川市で国内初の公道実証実験を実施。現在では約120ポート・約300台を設置するまでに拡大しています。

「70ポートくらいまで拡大したタイミングで、地域の方々が街中で電動キックボードをよく見かけるようになり、町の個人商店、飲食店、カフェ、美容院、等にポートの設置について声をかけてもらえるようになってきました」

「米国では、BIRDのサービスを取り入れた町で人の動きが従来よりも活発になることで経済効果にプラスの影響を生んでいるというデータもあります。消費者と地域のお店を繋ぐラストワンマイルにおける電動キックボードの役割として注目しており、今後、日本でも経済面での貢献度を計測していく予定です」

では、立川市とBRJの取組は今後他エリアに横展開・拡大されていくのでしょうか。地域の関係者がまず懸念する安全面では、明るい兆しが見えてきています。

「立川市での実証実験で安全性の確認も取れてきている。取り組み開始から132日間(インタビュー時点)経過するが無事故無違反。立川市にとっては、安全性を町のブランドとしても活用できる」

「当初は事故や違反を警戒していた地元の警察署にもいい意味で驚かれている。立川市から他地域への展開を進める中で、展開先の警察署と安全性の情報連携・共有をしていただき、今春の交通安全運動の期間に電動キックボードの安全性を情報発信してほしいとも仰って頂いている」

だからと言って、安全面について楽観視しているわけではありません。

「今回の閣議決定を受けての法改正はポジティブ・ネガティブの両面がある。法改正も見据え、今後は大企業がこの領域に資金を投入し、自治体との連携も加速される可能性が高い。一方で、参入障壁が低くなり、多様なプレイヤーが入ってくると、安全性への配慮が足りないサービスを通じて事故などが発生することで悪い情報が広まり、一度は市場が下火になる可能性すら感じている」

「BRJでは、これまでGPSを活用したジオフェンシング(※2)での実績を積み重ねてきている。肝になるGPSの精度については、今後さらにセンチ単位で誤差を抑えるなど最新技術を取り込んでいく。地域の方々、ユーザーの皆様に信頼される安全性への取り組みに終わりはない」

と更なる信頼性の構築に余念がありません。

※2:機体に内蔵したGPSによりエリアごとに走行ルールを設定する技術。混雑エリアでの最高時速制限や、サービスエリア外では徐々に速度を下げて停止させる制御が可能

まとめ

環境問題やMaaSといった新しい移動サービスにおいて重要な役割を果たすマイクロモビリティ。BRJ一瀬氏はこう語ります。

「BRJも様々な大企業との業務提携の話を具体的に進めている。大企業や自治体との連携が進んでいくことで、地域やユーザーの皆様の信用に繋がり、マイクロモビリティ・電動キックボードを取り入れる場所が増え、更に利便性が増えていく、という好循環のサイクルが回るように取り組んでいきたい」

今般の道交法改正案の閣議決定を受けて、動向が注目されるマイクロモビリティや電動キックボード。この潮流をどのように自社ビジネスと関連付けることができるかを考えることで、新たな事業の創出に繋がるかもしれません。

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