フリーミアムとは?「基本無料」の新たなビジネスモデル

フリーミアム(Freemium)とは、フリー(Free)とプレミアム(Premium)を組み合わせた造語で、サービスを「基本無料」で提供するビジネスモデルです。

基本的な機能にアクセスできる無料プランを用意しつつ、付加価値の高いサービスを有料で提供したり、Web広告から収益を得たりして、マネタイズを図ります。

フリーミアムの狙いは、顧客獲得単価(CPA)、つまり顧客1人の獲得にかかるコストを減らす点にあります。

基本無料のプランを提供するメリットは、ユーザーにサービスを利用するハードルを下げて、多くのユーザーを呼び込めることです。

そのため、ユーザーを獲得するために多額の広告費や営業コストを費やす必要がありません。

無料ユーザーの信頼を獲得して、有料プランを契約してもらうプロセスにリソースを集中できます。

フリーミアムとサブスクリプションの違い

フリーミアムに似たビジネスモデルとして、「サブスクリプション(サブスク)」が挙げられます。

サブスクリプションとは、製品やサービスを一定期間ユーザーに提供する代わりに、定額の使用料を受け取る課金型のビジネスモデルです。

買い切り型のサービスと比べ、使用したい期間や予算に合わせて契約できるためユーザーは手を付けやすくなります。

フリーミアムはサブスクリプションと異なり、全ユーザーから使用料を受け取るわけではありません。

フリーミアムでは、一部の有料ユーザーの課金が全体の収益性を支えています。

まずは無料ユーザーを獲得し、段階的に課金型のサービスに移行してもらうのが、フリーミアムの戦略です。

フリーミアムが抱える2つの課題

フリーミアムには多くの成功事例がある一方、失敗事例も存在しています。

フリーミアムの成功と失敗を分けた要因はどこにあるのでしょうか。

フリーミアムで失敗しないためには、次に紹介する2つの課題をクリアする必要があります。

課題1.無料・有料プランの差別化

フリーミアムの失敗事例に共通しているのが、「無料プランでユーザーを獲得する」という手段と、「無料会員を有料プランに移行させる」という目的が入れ替わっているケースです。

フリーミアムの収益は、一部の有料会員が支えています。フリーミアムが基本無料でサービスを提供するのは、多くの顧客にサービスを利用してもらい、将来的な有料プランの見込み顧客を増やすためです。

無料プランと有料プランの差別化を行い、収益化するための具体的な計画を立案しましょう。

課題2.黒字化までのタイムラグ

もう1つ大切なのが、フリーミアムでは、黒字化するまでにタイムラグが生じるという点です。

無料プランの会員数が増加しても、有料プランに加入してもらえなければ利益は出ません。ユーザーがサービスに魅力を感じるまでには時間がかかります。

フリーミアムが黒字化するまでの間、サービス提供にかかるコストに耐えられなければ、ビジネスの継続は不可能です。

無料プランの運用に必要なコストを試算し、持続可能な事業計画を立てましょう。

フリーミアム3つの成功事例

フリーミアムを採用する企業は、Webサービスの分野を中心に増加を続けています。

フリーミアムを成功させるには、無料プランと有料プランのメリハリをつけて、「有料プランに加入したい」という強い動機を生み出す必要があります。

ここでは、フリーミアムの3つの成功事例を紹介します。

Spotify:利用者の約半数が有料プランに加入

世界最大級の音楽ストリーミングサービスを提供しているSpotifyはフリーミアムを採用しており、ユーザーを呼び込むため、基本プランを無料で提供しています。

基本プランでは、楽曲の任意再生や、オフラインでのプレイリスト作成などの一部機能を制限し、プレミアムプランとの差別化を図っています。

無料プランに魅力を感じた利用者が有料プランにアップグレードする流れが生まれ、利用者の約50%が有料プランを契約するという高収益モデルを構築しました。

Dropbox:プロモーション戦略を組み合わせて有料会員数を増やす

Dropboxはオンラインストレージサービスの1つです。

無料の個人向けプランの容量は2GBまでですが、有料の個人向けプラン(Dropbox Pro)は1TBまでストレージが拡張されます。

ビジネス版(Dropbox Business)では、月額1,500円の利用料を支払う代わりに、容量が無制限です。

当初、Dropboxのフリーミアム戦略はうまくいかず、検索エンジンを活用した「検索連動型広告」で無料ユーザーは増加していたものの、有料プランのユーザー数を増やせませんでした。

そこで、「新規ユーザーを紹介する代わりにストレージの容量を増やす」プロモーション戦略を打ち出したところ、検索連動型広告よりも低コストで爆発的にユーザー数を増やしました。

結果として有料会員数も増加し、今ではフリーミアムで成功した代表的な企業として知られています。

食べログ:有料プランの加入者が100万人超え

飲食店の口コミサイトである「食べログ」は、国内の代表的なフリーミアム型サービスです。

Webサービス自体は無料で利用できますが、ランキング検索機能などの一部機能が制限されています。

月額300円のプレミアムプランに加入すれば、より便利にWebサイトを利用できるため、有料会員数の増加につながっています。

2019年3月時点で、有料プランの会員数は100万人を超えています。

フリーミアム成功のポイントは常にユーザーファースト

フリーミアムは、便利でクオリティの高いサービスを基本無料で展開し、多くのユーザーを呼び込むビジネスモデルです。

ストレージサービス、ストリーミングサービス、メール配信サービスなど、あらゆる分野で応用できます。

フリーミアムを成功させるには、「どうすれば有料プランにアップグレードしてもらえるか」を考え抜く必要があります。

そのためには、ユーザーの成功を後押しするカスタマーサクセスや、無料プランと有料プランの差別化が有効です。

サービス利用者の目線に立ち、ユーザーを第一に考えるのがフリーミアムの鉄則です。

関連記事

「経営論点主義の弊害」を防げ コーポレートガバナンス強化のための取締役会運営の改善策

コーポレートガバナンス・コードが2021年6月、再改定された。上場企業のコーポレートガバナンスの強化が求められる中、独立社外取締役の役割がより一層重要となってきている。しかし、独立社外取締役にとって、実質的な議論がなされるような取締役会運営ができているのであろうか。本稿では、「経営論点主義の弊害」を取り上げ、それについての対応策を述べる。

マーケティング・コミュニケーションとは?役割や成功事例を解説

商品やサービスを売るために役立つコミュニケーション活動が「マーケティング・コミュニケーション」です。メディアのデジタル化により企業と顧客の双方向のやり取りが可能になり、その重要性は高まっています。 企業は広告や広報、SNSといった多彩な領域でマーケティング・コミュニケーションの展開が求められていますが、正しく実行できている企業は多くありません。 本記事では、マーケティング・コミュニケーションの意味から役割、成功事例まで解説していきます。

東京オリンピック縮小から考える、「ROE」と「ESG・SDGs」

コロナの影響により、東京オリンピック・パラリンピックはいまいち盛り上がりに欠け、「開催するべきか否か」という「二項対立」議論がわき上がる。勝敗がはっきりしているスポーツの現場とは異なり、ビジネスの現場おいて「二項対立」の思考は、最適解を見失うトラップとなりやすい。今回は、「ROE」と「ESG・SDGs」の関係性に当てはめ、考察した。

ランキング記事

1

プロスポーツチームの戦略オプション コロナ禍でとるべき選択とは

近年、国内においてサッカー、野球、バスケットボールを中心に各種競技でプロスポーツチームが多数誕生しており、スポーツ市場は拡大傾向にある。一方、経営状況が厳しいチームが多く、組織の維持・発展に向けては、地域・チーム特性を活かした独自戦略の構築が求められている。

2

中国で「食品ロス削減令」 農業振興の必要性高まる

農業国から先進国=工業国へ発展を進めてきた中国が、大食いや食料ロスを規制するとともに、農業拡大を強調している。背景には、都市化率上昇と共に、中国の食料課題が、世界にも大きな影響を与えている事情がある。

3

マスクの基準ない国、日本 JIS規格採用で生活の「質」改善を

マスク着用は、「生活習慣」として定着した。COVID-19(新型コロナウイルス)感染症の拡大から約1年半、性能や品質に基準のなかった日本で、業界団体によりJIS規格導入の動きが進む。本稿ではマスクの機能的な進化と課題、今後の方向性について考察した。

4

破壊的イノベーションと持続的イノベーションの違いは?メリットや事例を解説

破壊的イノベーションとは、既存事業のルールを破壊し、業界構造を劇的に変化させるイノベーションモデルです。 この概念は、ハーバード・ビジネススクールの教授であった故クレイトン・クリステンセン氏の著書『イノベーションのジレンマ』で提唱されました。それ以降、飽和状態となりつつある市場に必要なイノベーションとして注目されています。 本稿では、破壊的イノベーションの理論や企業の実践例から、破壊的イノベーションを起こすために必要となる戦略までを解説します。

5

任天堂は、新たな黄金期到来か?「サイクル」のピークか? 新体制下での最高益更新

任天堂はGW明けの2021年5月6日、過去最高益となる2021/3期決算を発表した。Wiiが大ヒットしていた2008/3期以来13年ぶりの更新となり、現在時価総額は8兆円を超えた。コロナ禍の「巣ごもり」による追い風はあったものの、40代で老舗企業を率いる古川俊太郎社長の下、若い力とシニア世代の力を融合させたガバナンス例として注目される。任天堂の好調は循環的な「波」によるものか、新たな成長トレンド入りなのか、検証した。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中