新幹線のワゴン販売、自前主義から業務委託の選択肢はあるか?

1964年の開業以来続いてきた東海道新幹線車内でのワゴン販売が、2023年10月末で終了する。原因は「人手不足」という。しかし、筆者は販売する商品や販売手法が時代遅れとなったことで、乗客からの支持を失ったことが本当の原因ではないかと考えている。あれほどの乗降客数を保持する東海道新幹線なのだから、ワゴン販売ビジネスを受託して収益化が可能な事業者は多いのではないだろうか。

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「新幹線のワゴン販売」2023年10月末で終了へ

「新幹線のワゴン販売」2023年10月末で終了へ

JR東海によると、「のぞみ」や「ひかり」の約30%でパーサー(旅客係)を十分確保できていないという。結果として、パーサー数を通常の3人から2人に減らしているようだ。

移動制限があったコロナ禍の数値は参考にはならないため、コロナ前の2018年度の車内販売額を見てみよう。

実は、2018年度時点で10年前の2008年度との比較で車内販売額は半減していたと報道されている。

東海道・山陽新幹線の輸送人員数は、2018年度は2.5億人と10年前に比べて20%以上も増加している。2.5億人という輸送人員数は、フランスの高速列車TGVの約2倍だ。

膨大な数の消費者が固定された空間で過ごすのが新幹線だ。

輸送人員数は増えている一方で、ワゴン販売が低迷しているというミスマッチは人手不足が主原因とは思えない。

「スゴイカタイアイス」ワゴン販売終了で話題に

「スゴイカタイアイス」ワゴン販売終了で話題に

東海道新幹線におけるワゴン販売終了のニュースが報じられると、ネットでは「スゴイカタイアイス」という言葉が飛び交った。

ワゴンで販売しているスジャータ社の極めて固く冷凍されたアイスクリームのことだ。おそらく、このアイスクリームに甘美な思い出を持つ読者も多いのだろう。

筆者も40年近く前、進学で上京する車内で、父親にこのアイスクリームを買ってもらった甘い記憶がある。

フランスの小説家アンドレ・ジッドは、『背徳者』の中で「幸福の思い出ほど幸福を妨げるものはない」と述べた。『風立ちぬ』で堀辰雄もこのフレーズを使用した。

幸福の思い出である「スゴイカタイアイス」にこそ、幸福を妨げるものである「ワゴン販売終了」をもたらした要因の一つと考えられそうだ。

それはつまり、「商品の入れ替えが緩慢である」ということだ。

デパ地下の隆盛は入れ替え戦の賜物

デパ地下の隆盛は入れ替え戦の賜物

ワゴン販売の商品は変化が乏しい。もちろん、同一商品でも品質改良はされているだろう。

しかし消費者が明確に感じられない変化は、変化がないことと同じではないだろうか。

一方で、コンビニエンスストアの商品は60~70%が1年で入れ替わる。

パルコやルミネなどテナントビルのテナントも20~40%が1年で入れ替わる。

なぜなら、消費者は鮮度を求めているからだ。

20世紀の遺物と言われる百貨店でもデパ地下は極めて元気だ。

デパ地下は百貨店の自前売り場ではない。テナントがしのぎを削る場所であり、下剋上の入れ替え戦の戦場だ。

新幹線でワゴン販売されている弁当やサンドイッチは変化に乏しく、品質に改良の余地が大きい。多くがJRのグループ会社や長年付き合いのある食品メーカーのものばかりといえそうだ。

コーヒーなど飲料も変化が乏しい。コーヒーチェーンとコンビニチェーンが熾烈な競争を繰り広げる飲料業界において、新幹線のワゴン販売の飲料に変化は感じられない。

ホームで売られる弁当、普通車で売られる弁当、グリーン車で売られる弁当。全て同じような弁当に見えてしまう。グリーン車の乗客は、品質次第で何倍もの値段を支払う用意があるのではないだろうか。

「販売員不足」という問題は解決可能

「販売員不足」という問題は解決可能

ワゴンという販売手法にも変化がない。ワゴンで商品を運び、乗客一人一人に丁寧に対応していく。ワゴン販売という手法の問題は、販売員の持つ「排他性」にありそうだ。

販売員が一人の乗客を対応する間、他の乗客は商品を購買することができない。これを経済学では「排他性」という。冗長に注文し続ける乗客がいる場合、他の乗客は購買できない。

JR東海はモバイルオーダーをグリーン車向けにようやく始める。同じような手法を使えば、排他性問題を解決し、車内販売は維持できるのではないだろうか。

新幹線の予約段階で飲料や弁当の予約を可能にすれば、車内販売用在庫の発注精度はさらに改善する。飲料・弁当の事前予約割引などにインセンティブを付与するというやり方もいいだろう。

各乗客に応対するワゴン販売員の所作の獲得には時間がかかる。しかし、モバイルオーダーで乗客が取りに来る、あるいは単に配膳するだけであれば作業もシンプルになる。

場合によってはギグワーカーの活用も可能だろう。「東京と大阪を無料で往復できる」仕事と考えれば、応募者はそれなりにいると推測する。

外部事業者に業務委託する選択肢はないのか

フランスの高速列車TGVは、現時点も車内にバー(売店)が存在している。バー単体の採算ではなく、高速列車の当然のサービスとしてバーが存在しているようだ。

時間に追われるビジネスパーソンが時間に余裕をもって駅に着き、飲料や弁当を購入して新幹線に乗る余裕があるだろうか。飢えや渇きを抱えて長距離移動するしかないのか。

東海道新幹線は日本を代表する公共交通機関だ。インバウンド観光客に対応できていないワゴン販売は、そうした面からも改善の余地が大きく、収益化の可能性がある。

一度「自前主義」を横において、車内販売のコンペをしてみてはどうだろうか?

宣伝と割り切って安値で車内販売を行う事業者が出てくるのではないかと筆者は推測している。

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