情報銀行とは何か?

情報銀行(情報利用信用銀行)とは、ユーザーから預かった個人情報を管理・保護しながら、そのユーザーが同意する範囲内で第三者に提供する事業です。

個人情報を価値あるものとして運用し、得られた便益を還元する仕組みのため、お金を預かって運用・還元する銀行と事業モデルが似ているため、“銀行”の名がついています。

情報銀行についての細かい取り決めは、総務省と経済産業省が決定する「情報信託機能の認定に係る指針」に基づいています。また、一般社団法人日本IT団体連盟は、情報銀行サービスを営む事業者を認定するための申請受付を開始しており、『「情報銀行」認認定マーク』の商標登録も完了させています。

本格的に情報銀行を事業として成立させるため、官民が協力して準備段階に入っているのが現況です。

PDS(Personal Data Store)とは?

PDS(Personal Data Store)とは、個人情報を蓄積し管理するためのシステムです。

具体的には、年齢や生活状況・健康状態といった「個人の属性」と、インターネットの検索履歴や携帯のGPS機能から成る「行動情報」を貯金のように積み立てていくイメージになります。

そして、貯めたデータを「どの組織に」、「どのように提供するか」を情報銀行に指示した上でデータ運用が行われます。

なぜ情報銀行が必要とされているのか?

情報銀行が必要とされる背景には、個人情報を利活用したビジネスの効率化ならびに経済の活性化を図る国の狙いがあります。

日本では2017年5月の個人情報保護法改正により、プライバシーを最大限に保護しつつも、データの流通性を高めて企業活動の活性化を図ることが出来るようになりました。

現在は、グーグルやフェイスブックのようなプラットフォーム型ビジネスを展開する企業が主体となって個人情報を収集し、広範囲に情報を提供することでマーケティングの最適化を実現しています。

一方でPDSが導入されれば、個人が自ら収集した情報の使い方を決め、企業側はマーケティングに必要なデータにピンポイントでアクセス可能になります。

ここで、個人と情報を必要とする企業の仲介役となるのが情報銀行です。個人レベルでは困難な情報管理や提供先の具体的決定を代行するため、個人情報の商業利用を推進する上で重要とされます。

情報銀行の役割

情報銀行が果たすべき役割は、「情報信託機能の認定に係る指針」を通して確認できます。とりわけ重要な内容は次の5つです。

  • 個人情報はセキュリティ体制を整備した上で維持・管理する
  • 対象とする個人情報およびその取得の方法、利用目的を明示する
  • 個人が情報の提供に関する同意の撤回を求めた場合は対応する
  • 個人に損害が発生した場合は、個人に対し損害賠償責任を負う
  • 個人情報の活用で得た便益は預託者に還元する

情報銀行は個人情報を扱う事業のため、セキュリティや透明性の確保、責任範囲の明確化などは必須事項です。

また、個人主体でデータを利活用すべく、情報預託者のコントローラビリティを強化しなければなりません。

参入予定の企業事例

現在、情報銀行ビジネスに参入予定であると公表している企業は数社あり、それぞれが独自のサービスを準備中です。以下に、代表3社の事例をご紹介します。

三菱UFJ信託銀行

三菱UFJ信託銀行は、パーソナルデータの蓄積から提供先の選択、対価換金を実現するプラットフォーム「DPRIME(仮称)」の提供を目指しています。利用者は専用のモバイルアプリケーションを窓口に、PDSシステムにアクセスして取引を行います。

パーソナルデータ収集方法の一環として挙げられたのが、履いて歩くだけで歩数や歩行速度などのデータを記録できる「スマートフットウェア」。同デバイスについては、株式会社アシックスなどと提携し、2018年末ごろに実証実験が行われました。2021 年 3 月に、データ利用企業へデータ提供を開始する予定です。

電通グループ

電通グループは、情報銀行事業向けに株式会社マイデータ・インテリジェンスを設立しました。

同社はマイデータバンク「MEY」サービスを通して、個人のパーソナルデータの預託機能やデータ利活用の便益を還元する機能を提供します。

法人向けには、個人データの利活用やマーケティング支援などのサービスを展開。生活者と企業が共同で社会機能を便利にするためのサービス基盤が充実しています。

日立製作所

株式会社日立製作所は、株式会社日立コンサルティングなど他5社と共同で、情報銀行の社会実装に向けた実証実験を開始しました。

実験は、参加企業がデータ提供者・情報銀行・データ利用者の3者に分かれ、情報銀行ビジネスを再現する形式です。

参加者のデータ提供に対する受容性や、契約書類のモデル約款の適切性、データを用いたサービスの開発可能性など、多くの切り口から検討・分析が行われました。

情報銀行がユーザーにもたらすメリットと課題

情報銀行がサービスを通じてユーザーにメリットをもたらす場合、次のアプローチが挙げられます。

  • 現金やポイントを還元する
  • 割引やキャンペーン応募権などの特典を付与する
  • サービス自体の利便性を提供する
  • 信用を創造する

一方で、次のような課題もあります。

  • 個人がデータを情報銀行に預託しても、完全に自分でコントロールできない可能性がある
  • 情報銀行から還元されるインセンティブが不明確もしくは不十分の可能性がある

こうした課題は、個人情報を流通させるビジネスが発展していない現状では当然起こり得ます。

情報銀行という仕組み自体をユーザーに理解・信用してもらうためには、民間企業が主体となって説明責任を果たし、サービスや契約内容の透明性を確保することが重要です。

ユーザーに十分な利益を提供することができるか?個人データを活用してどのような価値を創出するか?

情報銀行事業で最も重要なのは、「ユーザーに対して十分な利益の提供」と「企業がデータを活用した価値の創出」の2点です。

事業認定制度や個人情報保護法の整備、企業ごとのサービス設計などが今後改良されていけば、情報銀行は社会に広く実装されていき、我々の生活をさらに便利で豊かにする可能性を秘めています。

社会がデジタルトランスフォーメーション(DX)の過渡期にある中、情報銀行のようにデータを制するビジネスが次世代の主役になるのかもしれません。

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<参考>
「情報信託機能の認定に係る指針ver2.0」総務省
「情報銀行推進委員会トップページ」一般社団法人日本IT団体連盟
「個人情報保護法の基本」個人情報保護委員会事務局
「情報銀行とは何か?」富士通総研
「データ流通ビジネス「情報銀行」サービスとは?」三菱信託UFJ銀行
「情報信託機能活用ソリューション」マイデータ・インテリジェンス
「個人データの活用の新しい仕組み「情報銀行」の実現に向けた実証実験を開始」日立製作所

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