人手不足と高齢化が深刻な建設業界

建設投資と建設業の就業者数

国土交通省調べによると、日本の建設投資額は1992年度の84兆円をピークに、2010年度には41.9兆円と約半分にまで低迷。その後は徐々に回復し、2019年度は62.9兆円(前年比3.4%増)にまで回復する見込みだ。2020年度の建設投資は、東京オリンピックの建設ブームの反動減が懸念されるものの、国土強靭化や災害防止対策強化などの政府施策もあり、堅調に推移するとみられている。

投資が堅調な一方、建設業界で問題となっているのが、人手不足と高齢化だ。

建設業の就業者は、2010年度の502万人から2018年度は501万人と、建設投資が回復したにもかかわらず、ほぼ横ばいで推移。このため、国内では建築と土木の労働者不足が長期化している。建築、土木、測量技術者の有効求人倍率は、2012年度の2.32倍から2015年度3.84倍、2018年度5.57倍、2019年10月時点で6.23倍と上昇が続く。

また、建設業就業者の55歳以上の構成比は、2000年の24.8%から2018年には34.8%(65歳以上の構成比は6.3%から15.5%)に上昇するなど、高齢化も急ピッチで進む。

国土交通省の試算では、2025年には建設業界で47~93万人の労働者が不足するとしている。建設業界では、若年労働者の確保とともに、建設現場における生産性の向上が急務の課題だ。

そのため、国土交通省、建設機械メーカー、建設機械レンタル会社、建設会社では、建設作業の自動化や無人化に向けた技術開発(いわゆる「スマートコンストラクション」)への取り組みを強化している。

国土交通省は、2016年に生産性革命本部を設置し、建設業の生産性を抜本的に向上させる仕組みづくりを”i-construction”として取り組んでいる。国交省では、ドローンによる3次元測量やICT建機による施工、3次元データを活用した施工管理などで、建設現場での生産性を2割引き上げることを目標に掲げた。

先行するコマツ、遠隔操作の実用化を計画

Construction machinery

建設機械の国内最大手コマツは、建設機械の自動運転やICTの取り込みで先行している。2008年には鉱山採掘現場で活用できる無人ダンプトラックを商用化させており、2021年には油圧ショベルやブルドーザなども含めた遠隔操作システムを実用化させる計画だ。

またコマツでは、建設現場で2015年からICTを活用した建設機械のサービスを開始している。ICT建設機械では、油圧ショベルやブルドーザなどに各種センサーを搭載。熟練の技に頼っていた操作ノウハウをソフトウェアに組み込むことで、経験の浅いオペレータでも作業をすることができるという。ICT建設機械の普及拡大は、熟練労働者不足問題を解消させる一助になるだろう。

ICT、5Gはビジネスモデルを変革するか

image of 5G

加えて建設現場では、2020年から実用化される次世代通信規格「5G」に対する期待も大きい。5Gの活用で、地上波でも高速大容量のデータ伝送が可能になり、センサーやカメラなどの同時接続デバイスも大幅に増やすことができるためだ。建設現場では、ドローンによって測量した3次元地形データを活用して、建設機械にカメラやセンサーを搭載し、それらのデータをリアルタイムで高速伝送することにより、遠隔地から無人の建設機械を操作することができるようになる。

既に、5Gを活用した建設現場での遠隔監視や操作システムについては、コマツがNTTドコモと共同で取り組んでおり、大林組や大成建設などのゼネコンも、KDDIやソフトバンクなどと提携して、それぞれ実証実験に取り組む。

こうしたICTや5Gを活用した建設現場での生産性改善に向けた取り組みは、建設業界の労働力不足の解消を担うとともに、建設機械メーカーにとっても、モノ(製品)主体のビジネスモデルから、コト(付加価値を生み出すサービスなど)によるビジネスモデルへの変革を促す役割を担いそうだ。

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