混流生産とは?メリットや種類、自動車業界の詳細な事例を紹介

混流生産は、1つの生産ラインに複数の品種を混ぜて流す生産形態です。市場の動きへの柔軟な対応を可能にする多品種少量生産の1種で、自動車業界を筆頭にさまざまな業界に導入されています。 需要が多様化した成熟市場に不可欠な生産方式ですが、資金や技術の不足から導入できない企業は少なくありません。とりわけ、知識不足が導入する上でのネックとなっています。 そこで、本記事では、混流生産の定義やメリット、自動車業界で展開される実例を紹介します。

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混流生産とは?

混流生産は、異なる種類の製品を同一ラインで生産する生産方式です。
1種類の製品を1つのラインで大量生産する従来の生産方式と一線を画す生産方式とされます。

機械による自動化がメインな従来の生産方式に対し、混流生産は人手に大きく依存する生産方式だからです。

例えば、混流生産は、高い生産性を維持しながら、複数の専用製品を作るため、生産ラインを手動で頻繁に切り替える必要があります(注1)。

加えて円滑な生産ラインの切り替えは、作業者や管理者の技術が重要です。

この点、作業者を含む運用者の高度な技術を必要とする生産方式と言えるでしょう。

混流生産のメリット

顧客価値の提供や自社利益の確保という面で精査すると、混流生産のメリットは以下の3つが挙げられるでしょう。

  1. 生産効率の向上
  2. 生産コストの削減
  3. 多様な顧客ニーズに対応可能

いずれも製造業の評価指標で、品質と費用、納期で構成されるQCD(Quality、Cost、Delivery)の達成に大きな影響を与える要素です。

生産効率の向上

混流生産は、生産ラインの切り替えが必要な点で工数が多いものの、使用する生産ラインが少ないため、工場の稼働率、ならびに生産効率を向上させるメリットがあります。

例えば、情報通信機器メーカーの沖電気工業は、サブ組立てと本組立て、装置試験、出荷準備の行程で構成される富岡工場の生産ラインにて混流生産を行い、生産ライン数を2分の1に削減させました(注1)。

緻密な生産シミュレーション、部品切り替え手法を徹底した結果、生産効率を1.5倍に向上させています。

生産コストの削減

少量多品種生産の1つである混流生産は、製品単位(ロット)を大きくすればするほど、生産コストを削減できる傾向があります。

また、混流生産は、複数の製品を並行して生産できるため、完成品の在庫や保管スペースを大幅に減らし、生産コストを削減できるメリットもあります。

多様な顧客ニーズへ対応可能

混流生産は、顧客ごとにカスタマイズしたオーダーメード製品を大量生産するため、多様な顧客ニーズへの対応が可能です。

例えば、混流生産を取り入れるメーカーは、作業者の裁量が大きい特性を生かし、市場や顧客に対応した急な仕様の調整、変更を行っているほか、生産対象品の生産計画量に応じて生産量をコントロールしています。

混流生産の種類

混流生産には、大きく分けて「ロット混流生産」と「混流1個流し生産」の2種類があります。

製造時の製品の製造数量にあたるロット数が複数以上だとロット混流生産、1個だと混流1個流し生産です。

それぞれでメリットが異なるため、自社製品の構造や工程の類似度、ライン切り替えのノウハウなどを考慮して導入を検討すると良いでしょう。

ロット混流生産

ロット混流生産は、複数の製品をロット単位で生産ラインに流れる生産方式です。
需要量が少ない複数種類の製品の製造予算をかけずに生産する際に適しているといわれています。

そのため、必要経費を抑えて利潤を確保したい企業のニーズに合った生産方式といえるでしょう。

また、生産ラインをロット数の編成で絞り込むため、生産ラインの運営がしやすいというメリットがあります。

混流1個流し生産

混流1個流し生産は、顧客ごとに異なる仕様の製品が1つずつ生産ラインに流れる生産方式です。

作業者が自ら1個ずつ製品品質が守られているかどうかを確認して次工程に流すため、不良品が発生しにくい特徴があります。

結果、製造途中の商品「仕掛品」の発生率が少なく、管理のための労務費の削減にもつなげやすいことから、経営課題の解消にも応えやすいといえるでしょう。

自動車業界で展開される混流生産

混流生産は、自動車業界に積極的に導入されています。

なぜなら、自動車業界は顧客ニーズが変化しやすい上、生産品目と生産量、生産時間を平均化する平準化生産を基本としているからです。

昨今は自動運転自動車や電気自動車の登場に伴ってニーズが増しており、混流生産が同業界で果たす役割は高まっています。

ここからは、そうした顧客のニーズの変化に対応するために、混流生産に取り組んできた自動車大手3社の事例を紹介します。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、国内の主力完成車の組立工場を世界最先端の混流生産設備に改良し、海外輸出に対応した増産体制を構築してきました。

愛知県豊田市の高岡工場では、樹脂製バンパーの射出成形ラインなどに混流1個流し生産のラインを導入しました。

組立ての各工程間に処理速度の差を埋めるバッファー(緩衝装置)を置き、製品のグレード差や工数差で生じる問題の解消に努めながら、混流生産を推し進めました(注2)。

これらの結果、樹脂製バンパーの製造において加熱によって溶けた合成樹脂などの材料を金型に流しこむ工程と、冷やして成形する工程のタクトタイム(作業時間)が従来比の半分に縮減し、仕掛品や工場内の余剰スペースも削減しています。

日産自動車

日産自動車は、IBS(Intelligent Body assembly System)と呼ばれる車体の製造システムを導入し、複数の車種製造に対応する混流の汎用ラインを導入しています。

複数の工場のうち、神奈川県の湘南工場は2000年代から、車両組立と塗装、車両組立の3工程に混流生産を取り入れ、商用車や乗用車といった多種多様な車体の製造を1つのラインを行っています(注3)。

同社の混流生産を支えるのは、高レベルな製造技術や生産管理、作業者への指示です。

生産計画通りの順序や時間の管理を促す日産生産方式や、作業の平準化を可能にするモジュール化などの具体的方策を実施しながら、高効率の生産体制を構築しています。

2019年には、混流生産の一種で、エンジンやバッテリーの組み立て作業を、全自動化する「パワートレイン一括搭載システム」を導入。

電気自動車やガソリン車、ハイブリッド車など異なるパワートレインの車を、1つの生産ラインで作るシステムを構築しています。

マツダ

業界4位のマツダは、競争力向上のために、古くから混流生産を取り入れ、目まぐるしい市場の変化に対応してきました(注4)。

同社は、複数の車種を1台単位で生産する順番を決めて、工場ではその通りにクルマを作るほか、部品メーカーの工場も同期して順番通りに部品を生産納入する「計画順序生産」の形式で混流生産を実施しています。

これにより、顧客が発生した順に製品を生産することを可能にし、精度の高い短納期を実現しています。

また、モータリゼーションの時代に入った1960年代に混流生産の技術を確立しました(注5)。

今では、混流生産で約3,000種類の部品を取り扱い、エンジンやトランスミッションの種類や駆動方式、グレードの違いやオプションなど、複数車種の仕様に対応しながら、既存と新規の両車種の製造でフル稼働させています。

混流生産はさまざまな製品製造に応用可能

混流生産は、顧客や市場の要請に応えやすいという点で現代の製造業界に合った生産方式だといえます。

現状保有する生産ラインをフルに活用するため、投資抑制にもつながるでしょう。

しかし、生産ラインの切り替えなどで人手に依存する以上、製造設計や作業手順の標準化といった間接作業にかかる負担は膨大です。

作業の効率化を図るためにも、現場の管理者が高度かつ精緻な知識を持つことは必須でしょう。

引用(参考)
注1:多品種少量製品の混流生産方式|「沖電気工業株式会社」柏倉裕、多田純、青木一央
注2:日独自動車組立工場の比較生産システム論:収斂への道程?|『関西大学経済論集』(2002年)、p115-147、大塚忠
注3:自動車企業における多車種混流生産と開発プロセスの新たな展開ー日産車体・湘南工場調査を基礎にして|『立命館経営学』(2003年)、p25-44、今田治
注4:他の自動車生産方式 マツダのオーダーエントリーシステム|『生産管理』2巻1号(1995年)、p38-44
注5:マツダの開発・生産システムの統合化:コンカレントな組織間協働を中心に|『桃山学院大学経済経営論集』(2016年)57巻4号、p83-128、信夫千佳子

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