フットインザドアとは

フットインザドアは「一貫性の原理」を使って、相手に要求を受け入れてもらうための営業テクニックです。

一貫性の原理とは、自らが一度決断したことや考え、態度に一貫性を持たせようとする人間の心理的な法則です。

フットインザドアの場合、まずは小さな要求に対して相手に肯定的な意見を引き出し、徐々に要求の大きさを膨らませていく方法が取られます。

ドア越しの訪問販売員が話しだけでも聞いてもらうため、ドアに足を挟み込む営業方法が名前の由来になっています。

ドアインザフェイスとの違い

フットインザドアと類似した営業手法にドアインザフェイスがあります。
フットインザドアとドアインザフェイスの違いは、応用されている心理テクニックと要求の提示方法です。

一貫性の原理が応用されるフットインザドアに対して、ドアインザフェイスは「返報性の原理」が応用されています。

返報性の原理とは、こちらから相手が喜ぶようなことをしてあげた場合に、相手にはお返しをしたくなる気持ちが芽生える心理法則です。

また、要求の提示方法については、フットインザドアが要求の段階を上げていくのに対して、ドアインザフェイスはその段階を下げていきます。

フットインザドアのメリット

フットインザドアを利用して営業活動をすると、希望通りの金額で商品やサービスを購入してもらえたり、高い確率で交渉が成功したりする可能性が高くなります。

また、フットインザドアは、営業をする側のみではなく、営業をされる側にもメリットがあることが特徴です。

以下ではフットインザドアのメリットを3つ解説します。

営業や交渉の成功率がアップする

フットインザドアを意識して営業の交渉をすると、成功率がアップしやすくなります。

なぜなら、人間には、自分の立場に対して一貫した姿勢を保ちたいという心理が働くためです。

とくに、一貫性にこだわる性格の方には通用しやすい営業テクニックだと言われています。

そのため、相手の性格を把握した上で、フットインザドアを用いると、より効果的でしょう。

相手の希望金額で受注しやすい

フットインザドアを利用して交渉をすると、相手が納得した金額で仕事を受注しやすいメリットがあります。

その理由は、フットインザドアがこちらの要求に対して相手に賛成の立場をとってもらう手法であるためです。
相手は賛成の立場を取り続けるため、自らの意思で、要求した金額に辿り着いたと思いやすくなります。

また、商品やサービスを売り込まれた印象を受けづらいため、契約成立後も友好関係を保ちやすいでしょう。

相手に満足感を味わってもらえる

フットインザドアによる交渉が成功すると、相手にも満足感を味わってもらえます。

フットインザドアは、要求に対して相手に肯定の立場を維持してもらう営業テクニックです。

そのため、相手は否定的な気持ちになることがないため、交渉を自分の思い通りに進められたと考えるのです。

また、人間には自分の選択は「正しい」と思う習性があります。
フットインザドアによる交渉の際は、相手は要求を受け入れるという選択をしていることになります。

そのため、交渉結果も相手自身が選択したことになり、商品やサービスを購入したことに満足感を覚えることでしょう。

相手が購入したことに満足すると、その後の商品へのクレームや返品といったトラブルも起こりにくいと考えられます。

フットインザドアを実践する時の3つの注意点

フットインザドアを実践する際は、以下の3つの点に注意する必要があります。

  • 要求を上げすぎない
  • 要求レベルは段階的に上げる
  • 同じ相手に何度も使わない

使用する相手に応じて要求のレベルを調節したり、相手に営業テクニックを利用していることを悟らせないようにしたりすることが重要です。

フットインザドアを成功させるためにも、各項目を詳しく見ていきましょう。

要求を上げすぎない

フットインザドアを活用する際は、はじめの要求レベルを上げ過ぎないことが大切です。

なぜなら、要求レベルが高いと相手が否定の立場を取る可能性があるためです。
相手が確実に賛成してくれる要求を、徐々に積み上げていくようにしましょう。

また、要求の回数が過多になると、逆に相手の承諾率が下がったという研究報告もあります。

同研究によると、フットインザドアの要求が2段階までであれば、承諾率が上昇する傾向にありますが、3段階になると承諾率は下がったと示唆されたようです。(注1)

つまり、最終的な要求レベルが高過ぎると、必然的に要求の回数も増えてしまうため、フットインザドアが失敗する確率が高くなります。

最終的な要求についても、相手の負担が過大にならないように内容に調整しましょう。

要求レベルは段階的に上げる

フットインザドアを成功させるには、要求レベルを段階的に上げるようにしましょう。
前段階との要求レベルが開き過ぎないことが重要です。

たとえば、商品を顧客に購入してもらいたい場合、5分間だけ話を聞いてもらえたとします。

その時に、次の要求としていきなり商品の購入を勧めてしまうと、フットインザドアも失敗に終わる可能性があります。

購入を進める前に、商品を手に取ってもらったり、パンフレットを受け取ってもらったりして、小さな要求を提案していくことが大切です。

同じ相手に何度も使わない

同じ相手にフットインザドアを何度も使うと、成功する確率が低くなります。

なぜなら、心理テクニックを利用していることを、相手に気付かれる可能性があるためです。

またフットインザドアは、現在では世の中に広く浸透した営業テクニックです。

これまでに数々の営業を受けてきた相手だと、「YES」を引き出そうとしていることを悟られるリスクもあります。

とくに、フットインザドアをマニュアル化したスクリプト通りに話してしまうと、相手に不快感を与える可能性もあるため注意が必要です。

営業マニュアルが準備されていても、状況や相手に合わせて、柔軟に交渉を進める心構えも大切でしょう。

フットインザドアを営業で活用する実例

フットインザドアは、訪問販売以外でも、商品やサービス購入の入り口として利用されることもあります。

お試しとして顧客に紹介される商品やサービスはフロントエンドと言われ、フットインザドアに当てはめると小さいな要求にあたります。

次に、お試しが済んだ後に顧客に紹介されるサービスや商品はバックエンドと言われ、フットインザドアでは大きな要求に該当するのです。

ここでは、日常でもよく見られる商品やサービスの販売手法の中から、フットインザドアの実例をご紹介します。

警戒心を解く目的で試着や試供品を勧める

洋服店での試着や化粧品メーカーの試供品などにもフットインザドアの実例を見つけられます。
ここでは、試供品を提供する化粧品メーカーである某大手化粧品会社を例にご紹介します。

某大手化粧品会社が販売するスキンケア商品には、3日分の無料お試しセットの注文が可能です。

多くの顧客がまずは無料のお試しセットを注文すると考えられ、その時点で、はじめの小さな要求を受け入れたと考えられます。

無料お試しセットを注文すると、それと一緒に、キャンペーンの案内が送られてきます。

そのキャンペーンの案内を見た顧客の心理には、次の商品を購入したいという欲求が芽生える可能性が高くなります。

なぜなら、試供品はお試しであることが前提なため、「商品が良ければそれを購入する」という心理が働くためです。

つまり、商品を購入するという一貫した立場を維持するためにも、顧客が次の商品購入に応じる可能性が高くなります。

まずは無料という低い要求レベルで商品を手に取ってもらい、次の商品購入につなげようとするフットインザドアのテクニックが垣間見えます。

クーポンや特価商品で心理的ハードルを下げる

クーポンや特価商品など、商品購入への心理的ハードルを下げる方法にもフットインザドアの手法が用いられています。

たとえば、インターネットやチラシの広告で見かける、初回限定の低価格キャンペーンには、フットインザドアが応用されているのではないでしょうか。

某大手脱毛サロンでは、2021年9月現在、「両ワキ+Vライン完了コース総額104円」という初回限定のキャンペーンを実施中です。

両脇とVラインの施術料金を104円と安く設定することで、安価なサービスを求める顧客に店舗へと足を運んでもらいやすくなります。

店舗に足を運んだ段階で、顧客は小さな要求を受け入れたと考えられるでしょう。

次に顧客が来店した際、もう一段階大きな要求を提示するとフットインザドアのプロセスになります。

たとえば、両脇やVラインだけではなく、他の部位も含めて脱毛をするという少し大きな要求をすることが考えられるでしょう。

フットインザドアが成功することで、最終的には回数券を購入してもらうという大きな要求へとつなげられます。

回数券の購入もクレジットカードなどの利用で、数千円程度の月賦払いにすると、要求が跳ね上がったような印象も薄れるのではないでしょうか。

フットインザドアを営業活動に有効活用

フットインザドアは、商品やサービスを顧客に購入してもらうのに有効な営業テクニックです。
一貫性の原理という人間の心理を応用して、営業活動や商談を有利に運びます。

しかし、フットインザドアを成功させるには、要求レベルを上げ過ぎないことや要求を段階的に上げていく、同じ相手に何度も使わないといったことに注意する必要があります。

フットインザドアを意識しながら日ごろの営業活動を行うことで、顧客が納得する交渉ができるでしょう。

フットインザドアの他にも、顧客の心を掴む営業テクニックは数多く存在します。
営業成績を上げるためにも、今後もビジネスに関する情報収集は必要不可欠です。

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引用(参考)
注1:2段階、3段階のフット・イン・ザ・ドア法とドア・イン・ザ・フェイス法の比較|東洋大学社会学部 今井芳昭・著

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