コロナ波に乗って急速成長している中国EdTech市場

図表

(BigData-Researchの「2020年上半期中国オンライン教育業界発展レポート」をもとに筆者作成)
注1:2020年のEdTech市場規模は全年度の予測値で、利用者数は2020年6月時点の実績値
注2:為替レートCNY/JPYは15.5を採用

世界のEdTech分野のユニコーン企業トップ20のうち、9社が中国企業(※注:Holon IQ 2020年9月3日の記事参照)となっているが、2017年中国のEdTech業界のCR4(トップ4企業の合計売上が市場規模に占める割合)は6.5%に留まっている(注:iiMedia)。2020年2月時点で、既に23万社のEdTech関連企業があるが、2019年度だけで6万社が新設したという(注:Tianyancha)。毎年倒産する企業も多く、まさに過熱している競争環境にあるといえる。

そのなかで、自社サービスの根幹をなすコア技術において差別化が図れている企業が市場シェアを獲得している。今回は、中国の特筆した技術持つEdTechスタートアップ2社をピックアップし、紹介する。

1. DANAテック(杭州大拿科技)  世界初の宿題自動添削アプリ「愛作業」(Aizuoye、アイズオイェ)

愛作業イメージ

DANAテックが開発した宿題自動添削アプリ「愛作業」が、2017年9月のリリースからわずか一ヶ月間で60万人のユーザーを獲得した。

作業とは宿題(家庭作業)を指すため、「愛作業」を直訳すると「宿題大好き」という意味になる。

スマートフォンで宿題の写真を撮って、アプリ上にアップロードするだけで、1秒以内に宿題がチェックされ、間違ったところがハイライトされる。現在対応できる科目は小学校の数学、国語と英語であり、文認識率は99%以上と高い精度を有する。19年9月までの使用者数は1,600万人を超えたという。(※注:DANAテックが発表した「2019年度中国小学生数学宿題のビッグデータ分析報告」)
   

添削、採点から教師、保護者を解放

世界初のAIを使った宿題添削アプリとして、「愛作業」の目的は学習の習慣を変えるではなく、教師や保護者にとって最も手間のかかる「添削・採点」作業から解放し、より価値のある仕事に集中できることにある。教師向けの機能としての「連写識別」機能もあり、一度大量に写真を撮ってもすべて自動的に認識でき、負担を大幅に軽減することが可能となる。現在は80万人の教師が「愛作業」を使用している。

「愛作業」のコア技術は、「ディープラーニング」と「ビッグデータ」にある。技術面における最大の差別化要因は画像認識である。既存のOCR(文字認識技術)は主に印刷された文字しか対応できない。小学生の手書きの文字については、これまでのOCRでは認識が難しいものである。
加えて、もともと認識しづらい小学生の手書きの文字が印刷された文字と同じ画面になると、さらに識別が困難でなる。この問題を解決するため、DANAテックはディープラーニング技術を活用することでOCR技術を改善させ、システムが自動的にデータノイズを除去する技術を開発した。
現在の、手書き文字を含めたOCRの認識精度は99%以上である。
 
宿題添削機能以外に、「愛作業」はほかの機能も開発している。DANAテックはアップロードされた写真をもとに、ユーザーの学習習慣や成果を収集、得意・不得意なことを分析できる。それに基づき、全国各地の教師が作った練習問題やオンラインレッスンをレコメンドする。AIによるアダプティブラーニングを徹底的にすることがDANAテックの目標である。

2. STEAM教育のパイオニアMakeblock社~初心者でもプログラミングで制御できるロボットを開発

ロボットイメージ
▲MakeblockのHPより

Makeblock(童心制物)は2013年に深圳で設立された会社であり、初心者向けのプログラミングロボットキット・ドローン、教育課程、ロボットコンテストの開発・運営を行うSTEAM教育(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)の先駆者である。
現在は140ヵ国に販売しており、世界中の25,000所以上の学校がMakeblockの製品を使っている。特にフランスにおいてMakeblockの製品が教科書にも記載されており、6,000校以上の小・中学校が使っている。
Makeblockの代表的な商品の一つはプログラミングロボットキット「mBot」である。自分で組み立てたロボットにプログラミングで指示を出し、制御することに通じて、遊びながらプログラミングの楽しさと原理を味わえる。キットのパーツが多く、一見難しそうだが、視覚的なデザインと3D組み立てガイドビデオによって子供も組み立てやすく、手作業を通じてロボットへの興味を築くことができる。

図表
▲MakeblockのHPより

全年齢層でもmBotを楽しめるよう、MakeblockがmBotの操作方法を3レベルで設定している:①Makeblockアプリやブルートゥースコントローラを使って直接操作、②ゲームの指示に従ってプログラミング指示があるブロックを引っ張ることで操作、③自由にプログラミングソフトでブロックをドラッグ&ドロップして組み合わせることでmBotを操作する。最高のレベル③ではワンクリックでテキスト形のプログラミングに切り替えることもでき、スキルアップをしたい人がプログラミング言語原理も勉強できる。
プログラミング指示に対して、mBotが障害物を避けたり、線をなぞって走行したりといった反応をしてくれる。さらに拡張パーツキットを使うと、mBotが猫、虫、カエルなどの動物の形にもなる。楽しくプログラミング力を身につけることができ、多くの学校で教材として使われている。

図表

イノベーションを重視し、Makeblock約450名のチームのうち(※注:2019年3月時点)、約半数がエンジニアであり、開発に重きを置く。また、Makeblockは 毎年ロボットコンテストを開き、19年のコンテストにおいては、60か国から10,000以上のチームが参加し、エンジニア同士の交流の機会を設けることにも貢献している。

膨らむパイの正体~中国のEdTechが急成長する理由は?

中国のEdTech市場規模が、年間約20%増と早いペースで成長する要因は複数あると考えられる。

①学習の個別最適化を実現
一点目は学校や塾で受ける授業と違い、Edtechはアダプティブラーニングを重視し、個人にカスタマイズした授業を提供できる。多様なサービスによる学習内容の選択肢が広がる一方で、勉強できる時間・場所など、AIによってユーザーの学習習慣を分析して、カスタマイズしたカリキュラムをレコメンドすることもできる。さらに最新の技術を利用することで、学習効率や効果を高めるメリットがある。

②出生率低下による強くなっている教育への投資意欲
二点目は中国では出生率が減る一方、1家庭につき子どもの数が減少しつつあるため、親が子供の教育に投資する意欲が強くなっている。2019年度、中国では38.8%の家庭が家計収入の2割~3割、20%以上の家庭が家計収入の3割以上と、大金を教育に費やしている。家計収入が高ければ、子供の教育に使う金額が家計収入に占める割合が高くなる傾向もある(※注:51Job)。

③教育の低年齢化
三点目は教育の低年齢化が進んでいることである。中国には、歴史的に教育を重要視する文化があり。十数年前の最も重要な試験はまだ「高考」(普通高等学校招生全国統一考試、統一の大学入試)であったが、現在は「高考」はもちろん、「小学校入学試験」、「幼稚園入学試験」の重要性も高くなっている。

より良い幼稚園に通えば、良い小学校、良い高校、そして良い大学に合格する確率が高くなる。教育の競争が低年齢化すになることは、親が早いうちから教育に投資するからである。

近年EdTechのうちK12分野(幼稚園から高校まで)が最も成長が早いのは、教育の低年齢化が要因である。

Zuvaで世界のスタートアップと出会う

上記の事例のみならず、Zuvaでは手軽に数クリックするだけで多数の画期的なプロダクトを開発している海外スタートアップを見つけられる。また、Zuva独自のネットワークにより、魅力的なスタートアップへアプローチをすることができることも可能である。
是非Zuvaを活用して、海外の多くのスタートアップの存在を自ら確かめていただきたい。

当社(フロンティア・マネジメント)は2020年5月、米国および中国を中心に世界約100万社のスタートアップ企業に特化した情報プラットフォームを提供するZuva(ズウバ)株式会社と資本業務提携を行った。これらのデータベース・アクセスを利用することで、海外スタートアップの探索から買収/出資に関するサポートまで、新規事業構築に関する一貫したサービスを提供している。このシリーズでは、「Ed tech」をテーマに、Zuvaのデータベースより抽出した要注目の海外スタートアップ企業の技術を紹介したい。

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