経営Q&A① DX推進のよくある悩み・課題を本質的に解決するには?専門コンサルが成功要因を解説

2010年代中盤以降、インダストリー4.0やIoTが盛んに取り沙汰され、2010年代後半に差し掛かるとIT・デジタル技術による変革を指す「DX(Digital Transformation)」という言葉が喧伝されるようになった。しかし、2020年代も半ばに差し掛かった現在、筆者が相対することが多い上場企業全体を見渡しても、デジタルネイティブでない企業がDXの推進を本質的に成功させているケースは未だ多くない。

今回は、実際にコンサルティングの現場でよく見聞きする、経営層が抱くDXにまつわる悩みと課題に答えていく。「そもそも、何から着手すればいいのかわからない」という悩みから、「取り組みは進めているが、成果が見えてこない」という悩みまで、段階に合わせて答えているので、本記事が誰かの一助となれば幸いだ。

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<本記事で回答する悩み・課題の一覧>

DXを推進するにあたって、何から着手すれば良いかわからない

DXを推進するにあたって、何から着手すれば良いかわからない
悩み・課題
DX推進の必要性を感じており、一定の投資を行う準備はできている。しかし、中長期的に会社を変革するようなDXの取組方針に対するイメージをまだ持てていない。

悩み・課題を抱える企業・担当者の想定プロフィール
50代男性 代表取締役
業種:製薬メーカー
資本金:10億円
売上高:250億円
従業員数:600人
企業フェーズ:安定・拡大期

考えうる解決策は?
そもそも、DXはデジタル技術やデータなどを用いて顧客価値を高め続けていくための長期の変革活動であり、そのために企業として何を変革していくかという議論が出発点となる。

FMIは、DXを通じて主に変革すべき対象は以下の4つだと考える。

  1. ビジネスプロセス変革
  2. ビジネスモデル変革
  3. 組織・風土変革
  4. 社会変革

経営層にはまず、自社全体を俯瞰しながら、「中長期的にどのように社会を変革していく企業体でありたいか」、「社会に対して、より良い価値を創出する企業に生まれ変わっていくためにどのような組織・風土を築いていきたいか」などの問いを立て、「D(Digital)」よりも先に「X(Transformation)」について深く議論することを推奨したい。

そのためには、将来設計から逆算して道筋を定める、バックキャスト的な設計プロセスが求められる。テクノロジーにより社会全体が変容していく中、「中長期でどのようなビジネスモデルを構築する必要があるか」、「一筋縄ではいかないビジネスモデル変革に向けて、まずはどのように既存のビジネスプロセスを変革していくか」などという検討事項から具体的な取組方針を考えることも得策だ。

DX戦略をどのように描けば良いかわからない

DX戦略をどのように描けば良いかわからない
悩み・課題
DXを推進しているものの、「戦略」ではなく、現場のDX活動を寄せ集めているボトムアップ的な「施策の集合体」になってしまっている。

悩み・課題を抱える企業・担当者の想定プロフィール
30代 男性 DX推進部 チームリーダー
業種:商社
資本金:150億円
売上高:2,000億円
従業員数:1,500人
企業フェーズ:衰退・再成長期

考えうる解決策は?
先述のように、当社が定義するDXを構成する主な要素は、ビジネスプロセス変革、ビジネスモデル変革、組織・風土変革、社会変革の4つ。そして、これらの変革の実現に共通して必要となるのが、組織を横断したデータの利活用だ。

経営層や事業トップは、「取り組みを通じてどのようにデータを取得・統合・分析し、顧客価値につなげていくか」という問いや、「自社におけるデータドリブン経営とは」、「それを支えるデータドリブンオペレーションとは」という問いについて考えることが好ましい。

そこで特に重要となる視点は、バリューチェーン上で取得するデータから、マーケティングのWho(誰に)、What(どのような価値を)、How(どのように届けるか)に関わる示唆をどのように得て、組織横断で顧客価値を高めていくかだ。そうした示唆を基に、組織の壁を越えて、どのようなビジネスプロセス、ビジネスモデルへと段階的に移行していく必要があるのかを考え、メンバーを巻き込みながら設計するのがリーダー層の役割だ。

このように、バリューチェーンを横断して顧客価値を向上していくことを企図し、どのようにデータを利活用していくかという視点で検討を深めれば、現場レベルで分散している各DX活動により一貫性を持たせることができるはずだ。

DXの推進が投資対効果に見合うかわからず、大きな投資に踏み込めない

DXの推進が投資対効果に見合うかわからず、大きな投資に踏み込めない
悩み・課題
戦略に応じてどれくらいのDX投資を行い、何をどのように変革し、どれくらいの効果を得られるかがわからないため、大きな投資に踏み込めない。

悩み・課題を抱える企業・担当者の想定プロフィール
50代 男性 役員
業種:メーカー
資本金:150億円
売上高:3,500億円
従業員数:3,000人
企業フェーズ:衰退・再成長期

考えうる解決策は?
当社がコンサルに入る場合、何をどのように変革するかに関しては、先述した4つの変革対象を細かく議論していくアプローチを採る。まずは経営層を中心にそうした議論を行い、次は各現場に方針を展開していきながら、各事業・機能でどのようなテーマを推進していきたいかを収集する。

中長期的な変革のロードマップに照らし合わせ、それらのテーマに優先順位を付けて投資計画を立てていくのだが、投資対効果の算出の精度に関しては、弊社はそこまでこだわる必要はないと考える。そもそも、対外公開する必要がないものであり、DXの効果を真水で測ることが困難だからだ。

しかし、DX戦略や取組内容の設計・運用の際に、財務的成果(KGI)には幅を持たせつつも、施策群の効果をどのような中間KPIで図るか、またそれらのKPIの「連動性・可観測性・管理可能性」などの要素の検討に時間を割くことにしている。それは、施策実行時に推進メンバー各々が財務的成果を意識するために必要な要素であるからだ。

そして、それぞれに設定した目標値(計画)に「妥当性・実現性」はあるか検証を行う。そのうえで、データを基にしてKPIを高頻度で観測し、高速に修正をかけていくことでKGIレベルのずれを軽減していくといったアプローチを弊社は推奨する。

自社内にDXを推進する人材が欠けていると感じる

自社内にDXを推進する人材が欠けていると感じる
悩み・課題
導入した営業DXのツールなどを個々人でうまく活用する人材は増えてきているが、周囲を巻き込んで、例えば部署全体で営業プロセスの効率化やデータの利活用などを推進できる人材は不足している。

悩み・課題を抱える企業・担当者の想定プロフィール
40代 男性 営業部長(DX推進プロジェクトメンバーを兼任)
業種:メーカー
資本金:150億円
売上高:800億円
従業員数:1,500人
企業フェーズ:衰退・再成長期

考えうる解決策は?
当社には多くの経営者から同じようなお悩みが寄せられるが、「実はDX人材は社内に隠れているものですよ」とよくお答えしている。そもそもDX人材とは、「自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材(※)」を指す。
(※)出典:経済産業省「DXレポート2」(参照:2024年10月27日)

先述した通り、DXの変革対象として、将来のあるべき姿からバックキャストしてビジネスプロセスの変革を推進することが求められる。そのために、当社では「顧客起点で組織を横断し、データを基にして提供価値を高めるためには?」という問いかけを様々な組織レイヤーで繰り返し行いながら、クライアント側の実務担当者を交え、あるべきビジネスプロセスを設計している。

実際にデータを基にしてプロセスを変革し、顧客への付加価値を向上させる過程をクライアント側の推進担当者にも経験してもらい、その方々を他の業務プロセスの変革の取り組みでもリーダーやアドバイザーとして起用するのだ。そのように、実際の変革経験をきっかけに自社のDXを自分事化できるDX人材を育成していくような活動の設計が肝要だ。

デジタル化は進めているが、企業の組織風土やビジネスモデルのトランスフォームを実現できていない

デジタル化は進めているが、企業の組織風土やビジネスモデルのトランスフォームを実現できていない
悩み・課題
デジタルテクノロジーやデータを用いた業務プロセスの効率化(デジタライゼーション)までは着手できているが、ビジネスモデルの変革には至っておらず、そこまでの道筋も見えていない。

悩み・課題を抱える企業・担当者の想定プロフィール
40代 女性 DX推進プロジェクトの責任者
業種:メーカー
資本金:200億円
売上高:3,500億円
従業員数:3,000人
企業フェーズ:衰退・再成長期

考えうる解決策は?
まずはデジタル化ということで、足元のデジタライゼーションから始めて、業務の効率化に努める企業は多い。当社も「次期中期経営計画の策定と併せて、今後のDXのロードマップを描いていきたい」という企業とお話しする機会が多く、役員合宿やワークショップなどを通じて、現行の取り組みをいかに昇華させていくか、いかにビジネスモデルの変革へとつなげていくかというお題でディスカッションを実施している。

ビジネスモデルや長期的な組織・風土変革の討議には多くの時間を要するが、デジタライゼーション(組織横断でテクノロジーを用いた業務プロセス変革)に成功している企業は、顧客価値起点で各業務に付加価値があるかを選別し、徹底的にプロセスを磨きこんでいる。

そうした企業は、すでにデータを基にした顧客理解・顧客価値創出のケイパビリティが高い水準に達している。将来的にどのようなビジネスモデルで戦うかという討議も、「デジタル技術により、社会がどのように変容しているか?」「その時に自社がとるべき指針は?」などと適切なファシリテートを行えば、活発に行われるケースが多い。

仮にデジタライゼーションに取り組んでおり、そこからどうビジネスモデル変革につなげるか迷われている場合は、改めて既存の顧客価値、デジタル技術による将来の社会変容、その際の顧客の価値の変化などに着目し、議論を展開するのが良いと考える。

難易度の高いDX。成功要因の知見で円滑な推進を

DX推進は一つ一つの業務の効率化にIT・デジタル技術を用いるというだけの取り組みではなく、中長期的に企業そのものを大きく変革していく取り組みのため、複雑性や難易度は非常に高い。

DX推進を本質的に成功させるには、テクノロジー・データ利活用、各種の変革対象、マーケティング、機能ごとの推進法など様々な観点を複合した戦略とロードマップの策定、および現場への落とし込みが必要となる。

当社では、数多くの企業のDX推進を支援する中で成功要因を見定め、それらを個々のクライアント企業向けにテーラーメイドで当てはめながら、戦略策定・実行の伴走を行っている。本記事で紹介したような悩みと課題を抱える企業は、ぜひ一度相談していただきたい。

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