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「caper」のスマートカートがもたらす変革(Retail Tech) 海外スタートアップ企業の注目技術①
当社(フロンティア・マネジメント)は2020年5月、米国および中国を中心に世界約100 万社のスタートアップ企業に特化した情報プラットフォームを提供するZuva(ズウバ)株式会社と資本業務提携を行った。これらのデータベース・アクセスを利用することで、海外スタートアップの探索から買収/出資に関するサポートまで、新規事業構築に関する一貫したサービスを提供している。この記事では、「Retail Tech」をテーマに、Zuvaのデータベースより抽出した要注目の海外スタートアップ企業の技術を紹介したい。(caperのHP https://www.caper.ai/ https://www.caper.ai/post/the-rise-of-smart-cartsより引用)
「caper」カートで買い物ができるAIスマートショッピングカート
▲各社ホームページ等を参考に、筆者作成
第1回目に取り上げる企業「caper」は2016年にニューヨークで設立。かごの中だけで商品の決済が済んでしまう、画期的なAIスマートショッピングカートの開発・販売を行っており、すでに米国内のいくつかのスーパーマーケットにて導入されている。
レジが要らず、店舗、消費者ともに余計な手間なく簡単に買い物体験を「スマート」にしてくれるだけでなく、消費者の購買意欲を掻き立てる機能もあり、顧客の1回あたりの買い物量(「バスケットサイズ」)が平均18%増加したというデータもある。
導入ハードルを最小限に
スマートカートを用いた小売り店舗のスマート化は、ここ最近すでにいくつかの形態が出現している。海外に目を向けると代表的な事例としてはアメリカのAmazonGo。国内においてもディスカウントスーパーを各地で展開する「トライアルホールディングス」(福岡市)がすでに導入している。caper社のスマートカートはこれらと何が異なるのか、比較してみる。
他の2社については、そもそも無人店舗での運営を前提にしている。店舗内には大量のカメラの設置が必須であり、大きなリノベーションを余儀なくされる。既存のスーパーがこれらの方式を取り入れる場合、店舗の設計ならびに運営について大きな変更が強いられ、初期投資も多く必要となる。
一方で、caperの場合は既存のスーパー等を対象にしている点が大きく異なる。設備の大幅な改装は必要なく、スマートカートを導入するだけでいい。消費者にスマートな購買体験をもたらすのみならず、スーパーにとっても導入に際して大きな負担のない点が大きな違いである。
顧客視点でも煩わしさがない
導入ハードルが低いという点の他に、caper社のスマートカートの大きな特徴は2つある。
1点目は、顧客の視点から見ても、このスマートカートを利用するためにアプリのダウンロードなどといった事前の準備は一切必要なく、余計な手間なしにすぐに利用することができる。
カートに搭載されているカメラによる画像認識の技術で、かごに入れただけで自動的に商品を認識でき、既存のスマートカートであるような顧客自らが商品一つ一つをスキャンする、という煩わしさがない。
また、重量感知センサーにより、青果物など、重量により値段が変わる商品についても問題なく対応できる。
カートで決済が完結
決済については、カートについている端末でクレジットカードが使用可能だ。また、スマートフォンでのモバイル決済にも対応している。そのためレジでの店員とのコミュニケーションや行列に並ぶことが不要になる。
これらの機能は、店舗の人員削減による人件費節約、スペースの節約による賃貸料節約などを実現させるだろう。
カートにレコメンド機能
もう1点は、導入する店舗にとっては最もメリットとなるであろうが、AI・ビッグデータを活用した商品のレコメンデーション機能を有することである。
例えば、かごの中の食材をもとにレシピを提案し、その料理を作るうえで必要な材料を顧客に表示することが出来る。
また、地図機能も搭載しており、画面上に店内マップを表示し、必要な商品やおすすめの商品がどこにあるか、案内してくれる。
これを可能にしているのが、カメラが収集した画像データのディープラーニングである。データ分析により消費者が潜在的に必要としていると考えられる商品を予測し、消費者にレコメンドする。この機能によって消費者の購買意欲を掻き立て、caperを導入した食料品店において、平均バスケットサイズ(顧客あたりの購入量)が18%増加したというデータもある。
対面での接客が不要、コロナ禍で注目
caperのスマートカートはその性質上、コロナ禍において非常に有用であると考えられる。caperのスマートカートによりレジでの会計は不要となるため店員と顧客の接触がなくなり、双方を感染リスクから解放する。
また、レジに並ぶ必要がなくなるためレジ待ちの行列も解消され、いわゆる「密」な状況の発生を防ぐことができる。なお、共同創業者であるAhmed Beshry氏はコロナ禍においてcaperがすべての関係者の健康と安全にコミットすることを表明している。
以前より複数の米国メディアで取り上げられていたが、コロナ禍においてより一層注目を集める企業となりそうだ。
■Zuvaで世界のスタートアップと出会う
上記の事例のみならず、海外においては先進的なスタートアップがいくつも存在する。AIの小売業への応用は、コロナ禍においてはより注目を集められると考えられる。今後、より多くの魅力的なスタートアップが海外において現れるだろう。
caperのような画期的なプロダクトを開発している海外スタートアップを、Zuvaのサービスを使えば、手軽に数クリックするだけで見つけられる。また、Zuva独自のネットワークにより、魅力的なスタートアップへ実際にアプローチすることも可能である。
是非Zuvaを活用して、海外の多くのスタートアップの存在を自ら確かめていただきたい。
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