EVは本当に最適か?⑤ 基幹産業=自動車を守る為に

ゼロカーボン社会に向け、EV(電気自動車)は本当に最適なのだろうか?シリーズ最終回は、日本が技術的優位に立つ「Hy-CAFE」(Hy:水素/C:Cold fusion/A:Ammonia/F:Fuel cell/燃料電池/E:e-fuel」を生かした、自動車の次世代エネルギー革命についてまとめた。

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日本の基幹産業を守る

日本の基幹産業を守る

日本の石油産業・自動車産業は重厚長大で裾野が広い。同じく重厚長大な電力産業においても、混焼やCCUS(Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage)での既存設備活用を目指している。自動車産業においても、全てをEVに代替するのではなく、裾野の広い産業構造を踏まえ、既存設備活用もできる技術革新が、日本にいま求められているのではないだろうか。

「Hy-CAFE」による次世代燃料革命

「Hy-CAFE」による次世代燃料革命

今後の日本の自動車産業の浮沈を占うのは「Hy-CAFE」(Hy:水素/C:Cold fusion/A:Ammonia/F:Fuel cell/燃料電池/E:e-fuel」ではないだろうか。すなわち、「Hy:水素」、「C:Cold fusion/常温核融合」、「A:Ammonia/アンモニア」、F:Fuel cell/燃料電池」、「E:e-fuel/合成燃料」である。

今後の現実的なステップとしては、まずはe-fuelを活用しながら、アンモニアのエネルギーキャリアにより水素を活用、次に水素が自給できるようになり、将来的には常温核融合にて再生エネルギー比率を高めなくても十分に電力も賄えるようになる、といったところだろうか。

「Hy-CAFE」においては、日本の技術が先行しているといえる。BEVを伸ばしている欧州や中国に踊らされず、日本企業は日本の技術を生かし、長期的な戦略を構築しなければならない。BEV、PHV、FCV、e-fuel、水素エンジン、これらのエネルギーをバランス良く活用しながら、日本なりの循環型社会を目指していく必要がある。

求められる次世代燃料の国家戦略

そもそも日本のエネルギー構成は欧州とは異なる。自動車のパワートレインは、エネルギーミックスも踏まえて考えるべきである。いたずらにBEV化を進めても、カーボンニュートラルという目的達成には直結しない。また、バッテリーの廃棄問題という負の遺産を後の世代に遺すことになり、かつ、その方向性では、先行する欧州や中国の後塵を拝し続けるのではないだろうか。

日本が世界で競争力を発揮するためには、次世代燃料戦略として、本シリーズで紹介してきた、e-fuel、燃料電池(FCV)、アンモニア、常温核融合の分野で、技術開発を先行して進めることが期待される。

これには民間任せではなく、国家戦略も必要となる。昨今半導体が何かと話題だが、これらの次世代燃料のコア要素技術となる水素には、国家戦略としてしっかりと予算を割くべきであろう。

今後は、世界と比較してクリーンな日本の火力発電所や、余ったガソリンは輸出するという選択肢も大いにありえるであろう。

太陽光発電における日本の新技術

太陽光発電における日本の新技術

これまで基本的に「燃料」という文脈で話を進めてきたが、最後に「発電」という文脈でも、日本の先端技術に触れておきたい。「発電」分野においても、日本の研究開発は進んでいる。

最も実用化に近いのは、東京大学が研究している次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池(PSC)」だ。現在の太陽電池では、最も高効率で主流となってきている単結晶型でも変換効率が概ね20%程度のところ、2020年11月に、PSCでは変換効率28%達成を発表した。

実用化に向けては、大型化と耐久性が課題に挙げられるが、現在パナソニックやリコーなどが研究を進めている。今後、産学連携による技術開発の加速化が期待されている。〈*1〉

また、更に変換効率の高い技術として、量子ドット技術による太陽電池も東京大学で研究されている。半導体中に量子を閉じ込めることで、様々なエネルギーの光を吸収することが可能になる量子化と呼ばれる現象を利用しており、既に29.6%の変換効率達成が発表されているのに加えて、理論上は変換効率60%を超えることが可能というから驚きである。〈*2〉

この「量子ドット太陽電池」は、製造コスト面の課題が挙げられるが、こちらも花王などが産学連携で研究開発を進めており、今後が期待されている。〈*3〉

更に、2050年の実装に向け、宇宙空間において太陽エネルギーで発電した電力を、マイクロ波などで地上へ変換・伝送し、地上で電力利用する「宇宙太陽光発電」も京都大学などで研究されている。〈*4〉

但し、日本の産業競争力の根幹中の根幹である安定的な電力供給は絶対に守らなければならない。太陽光などの再生可能エネルギーによる電力供給において、安定した電圧で供給できるのか、というポイントを見落としてはならない。なぜ日本の加工部品は精度が高いのか。精度の高い加工機械を質のよい電力(電圧が一定)で動かすため、加工にムラが出にくい、ということはあまり知られていない。職人技だけの話ではなく、トータルで質のよいモノづくりができる環境が整っている。

EV一択は正解ではない

EV一択は正解ではない

自動車産業、石油産業、電力産業、これらの日本の基幹産業であるエネルギー産業には、いま大きな変化の波が押し寄せていることは間違いない。2050年のカーボンニュートラルに向け、国家全体として、電化の方向性が必要であることは否定しない。だが、日本のエネルギー産業において、盲目的にEV化を進めることが、必ずしも正であるとはいえないと筆者は考えている。これは、カーボンニュートラルという目的達成への最適解という観点と、日本のグローバル競争力の復権という戦略的意図の観点の両面からである。平たく言うと、「そもそも違うし、勝つためにも違う」ということである。

また、どんな自動車に乗るかを決めるのは結局消費者であり、EV一択であるはずがない。

日本企業は、長期戦略的な視点を持ち、日本のエネルギー構造の特徴を踏まえて、日本の得意な技術を生かして、世界を再びリードする存在になって欲しい。かねてより、日本は「技術」の国であったはずである。EVで覇権を握ろうと目論む欧州や中国よりも先行している技術があり、これを活かさない手はない。

最後に笑うのは…

国家戦略として育成していくべきは、EVではなく、次世代燃料「Hy-CAFE」である。5年後、10年後に笑うのはテスラではなく、日本企業になれるかどうかは、欧州や中国の外圧に流された「産業構造の大転換」ではなく、技術に基づく次世代燃料「Hy-CAFE」を軸とした「既存産業からの発展的進化」が出来るかどうかにかかっている。

〈注釈〉

*1:日本経済新聞「次世代太陽電池「ペロブスカイト」、脱炭素へ期待、効率向上、大型化・耐久性に課題」

*2:東京大学 先端科学技術研究センター「希土類添加半導体のエネルギー移動機構を利用したラチェット型中間バンド太陽電池の光制御に世界ではじめて成功!」

*3:日本経済新聞「花王など、量子ドット太陽電池で新製法 安価で高効率」

*4:経済産業省 資源エネルギー庁「脱炭素化に向けた 次世代技術・イノベーションについて」

▼過去記事はコチラ
EVは本当に最適か? 自動車の次世代燃料革命に必要なもの ①石炭火力は無くならない
EVは本当に最適か?② ガソリン車はなくなるのか 次世代燃料「e-fuel」とは
EVは本当に最適か?③ 水素社会は、実現する
EVは本当に最適か?④注目の「常温核融合」は本物か

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