EVは本当に最適か?④注目の「常温核融合」は本物か

「EV化」は、カーボンニュートラル達成の為の唯一の答えなのか。前回までに紹介したe-fuel、水素、アンモニアに続き、ゲームチェンジャーになりうる次世代エネルギー「常温核融合」(cold fusion)について考察する。

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水素技術の切り札「常温核融合」とは

水素技術の切り札「常温核融合」とは

常温核融合は、水素の同位体である重水素と三重水素(トリチウム)の原子核を融合させる際に生まれる膨大なエネルギーを利用するものだ。通常の核融合は数千万度の高温と高圧が必要だが、常温核融合は数百度程度のため、はるかに扱いやすい。

水素技術の中でも、まだ実用化に向けた研究段階であるが、エネルギーの分野でゲームチェンジを起こす可能性があるとみて注目されている。日本ではトヨタ系シンクタンクや大学などとの研究が進んでおり、世界に先行している。

常温核融合の仕組み

常温核融合の仕組み

常温核融合の仕組みはこうだ。軽くて燃えやすい水素の同位体である重水素と三重水素(トリチウム)の原子核を融合させると、ヘリウムと中性子ができる。このとき、反応前の重水素と三重水素の重さの合計より、反応後にできたヘリウムと中性子の重さの方が軽くなり、この軽くなった分のエネルギーが放出される。

核融合反応では、少量の燃料から膨大なエネルギーが発生し、例えば1グラムの重水素、三重水素燃料からタンクローリー1台分の石油(約8トン)に相当するエネルギーを得ることが可能という。

現在実用化に向けて研究が進んでいる「金属水素間新規熱反応」・「凝縮系核融合」では、水素吸蔵技術を用いて、軽水素とニッケルで更に効率よく莫大な熱エネルギーを得ることが可能になるようだ。〈*1〉〈*2〉

最近では、2019年5月に英総合学術誌「Nature」で記事が取り上げられ、「ITER国際核融合エネルギー機構」による国際的な実証実験も計画されており、ジェフ・ベゾス氏やビル・ゲイツ氏もベンチャー出資するなど、世界的な注目が再び高まりつつある。〈*3〉

発電コストも低い

発電コストも低い

通常の核融合が発電に使用される場合、数千万度の熱が発され、高圧・巨大装置が必要になる。一方で、常温核融合は数百度とはるかに低い温度と、小さな装置での核融合が可能であり、サイズ・コスト面で既存の発電方式を凌駕している。

常温核融合が実現されれば、ガソリン燃料の4倍~1万倍の熱密度が出せること、有害な放射線やCO2が出ないこと、加えて、発電コストも1キロワット時当たり2.6円(既存の火力発電の5分の1)に下がることから(テクノバ試算)、原子力発電と比較しても、安全性・コスト面で優位だ。〈*4〉

「常温核融合」研究の経緯

発電コストも低い

「常温核融合」が最初に発表されたのは、1989年3月。米ユタ大学で、2人の研究者が発表し、世界的に脚光を浴びた。だが、各国で一斉に追試(第三者が同じ実験をして再現性をみる)が行われた結果、米欧の主要研究機関が1989年末までに否定的な見解を発表。日本でも経済産業省が立ち上げた検証プロジェクトの報告書で、1993年に「実証できない」との見解を示した。〈*4〉

しかし、2008年に荒田吉明・大阪大学名誉教授が日本で初めて公開核融合反応実験に成功したのを契機に研究が進んで、徐々に再現性が高まった。

2010年頃から、米国やイタリア、イスラエルなどに、エネルギー利用を目的としたベンチャー企業が次々と生まれた。

日本でも、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構のエネルギー・新技術先導プログラムで、東北大学、九州大学、日産自動車、テクノバ(トヨタグループの技術系シンクタンク)が産学連携で調査を行い、2015年~2017年の実証実験により再現性が確認されている。〈*1〉

さらに現在は実用化に向けて、水素を金属に吸蔵させ、ある一定の条件下で刺激を加えて相互作用させると莫大なエネルギーが発生する「金属水素間新規熱反応」や「凝縮系核融合」と呼ばれる研究が進んでいる。〈*1〉〈*2〉

常温核融合日本が先行 トヨタ系テクノバ「2025年までに」

常温核融合日本が先行 トヨタ系テクノバ「2025年までに」

Googleも最近研究を始めているが、当該技術では日本が先行している。

当社(フロンティア・マネジメント)で国内最大手の先行企業にインタビューを実施したところ、既に特許も取得し、製品化に向けて実証実験の準備段階に入っているとのことである。トヨタグループの技術系シンクタンクであるテクノバも、電気自動車の電熱ヒーター用など出力5kW程度の発電であれば「2025年までには可能」とみており、実用化への期待が高まっている。〈*3〉〈*4〉

常温核融合が、ゲームチェンジャーに

日本がいち早く実用化に成功すれば、国内はおろか、世界のエネルギー問題・環境問題を解決する「ゲームチェンジャー」となり、かつて1980年代に半導体産業のように覇権を握れる可能性がある。そのためには、日米半導体協定と同じ轍を踏んではならない。

〈注釈〉

*1:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「エネルギー・環境新技術先導プログラム 金属水素間新規熱反応の現象解析と制御技術」

*2:日経BP総研「期待高まる『常温核融合』、三浦工業もベンチャーに出資」

*3:Nature(volume 569 issue 7758,30 May 2019)「Google revives controversial cold-fusion experiments」

*4:日経BP総研「地上の太陽エネルギー 核融合発電が原油依存の枠組みを一掃」

*5:日本経済新聞「米で特許 再現成功で「常温核融合」、再評価が加速」

▼過去記事はコチラ
EVは本当に最適か? 自動車の次世代燃料革命に必要なもの ①石炭火力は無くならない
EVは本当に最適か?② ガソリン車はなくなるのか 次世代燃料「e-fuel」とは
EVは本当に最適か?③ 水素社会は、実現する

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