CES2020 現地からの報告~5Gからスタートアップ動向まで~ (2)今後のゲーム業界のゆくえ

ゲーム業界に焦点を絞ってCES2020を振り返ってみると、まずソニーによるPlayStation5の詳細発表が思い出されるが、本記事ではそれ以外の注目すべきトレンドを取り上げる。 2019年のゲーム業界の話題をさらったのは、いわゆるITジャイアントと呼ばれるGoogleやApple、Microsoftなどだった。 簡単に振り返ると、Googleは2019年3月にゲームストリーミングサービス“STADIA”を発表。iPhoneという圧倒的なインストールベースをてこにしたAppleによる定額制ゲームサービス”Arcade“も話題をさらった。MicrosoftとソニーによるAI・クラウド分野での戦略的提携に向けた動きもあった。こういった昨年の動きを踏まえて、今年のCESはどうだったか、早速見ていきたい。

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5G見据えたクラウドゲーミングの時代

グーグルの出展エリア
図1 グーグルの出展エリア

CES2020で目立っていたトレンドは大きく2つある。

1つ目は5G時代を見据えたクラウドゲーミングの到来。2つ目は没入感を提供するためのゲーム周辺機器の登場だ。ただ残念なことに、1つ目のクラウドゲーミングについては、主役級の企業が 不在で目ぼしい展示はなかった。Googleブースでは、STADIA専用コントローラーの展示はあったが、Google Assistantによるスマートホームへの貢献が展示の大半を占めていた。またApple、Nvidiaも展示はなかった。

しかし、5Gを活用したクラウドゲーミングを見据えた周辺機器の展示があったので紹介したい。ゲーム周辺機器メーカーのRazerが発表した左右に分離するゲームコントローラー“Razer Kishi”だ。

“Razer Kishi”
図2 “Razer Kishi”

スマホの両側に取り付ける仕様で、Nintendo Switchのような形状でプレイできる。NvidiaのクラウドゲームサービスGeForce NOWにも対応しており、5G時代を見据えた発表であることは明らかだ。

この発表を巡っては「発売後、人気が続くSwitchに似せてきた」という声もあるが、筆者は異なる見方をしている。ストリーミングによる本格的なPvP(対人戦)が広まると、当然操作性が重視されるようになる。スマホ画面上のボタンに比べて、操作性に優れたコンソール機のコントローラーのような形状に近づいていくのは自然の成り行きだ。

没入感を増幅するハードウェア登場

AR/VRゲームを体験する人々
図3 AR/VRゲームを体験する人々

2つ目のトレンド、没入感を提供するための周辺機器についても、注目事例を取り上げたい。

突然だが、Magic Leapという会社をご存じだろうか。2017年~2018年頃にGoogleなどから巨額の出資を集めて注目を浴びたAR/MRスタートアップだ。2018年8月に最初のプロダクト「Magic Leap One Creator Edition」を2,295ドル(約25万円)で発売したが、その後の売れ行きは芳しくないようだ。

連日大きな人だかりを作っていたのは、Magic Leapのライバルでもある中国企業Nreal(エヌリアル)だ。彼らの製品“Nreal Light”は重量88g、見た目は少し大きめのサングラスといった自然なデザインだ。詳細には立ち入らないが、視野角の広さ(片目52度)、6DoFといったスペックは特筆に値する。こういった軽さ、デザイン、スペックを実現しながら、販売価格は499ドルを予定している点が、注目を集めた理由だ。

Magic LeapやMicrosoftのHololensをはじめ、コンシューマー向けのAR/MRグラスとしていまだ成功した例はない。実物を見て触った筆者としても、次こそは、と期待してしまう。NrealはKDDIと提携を結んでおり、日本市場での将来的な展開も期待できる。

実はMagic LeapもNTTドコモと提携して日本市場での販売を画策していたそうだ。販売不振にあえぐ現在、国内投入計画が白紙化されたかは知る由もないが、通信キャリアとAR/MRグラスの相性が良いのも確かということだ。Magic Leapの二の舞とならず、国内発売までこぎ着けてくれることを祈っている。

ゲーム、AR/VR業界に限れば、日本企業のCES2020での存在感は極めて低かった。勿論PlayStation5の情報開示が注目を集めたのは確かだが、それは日本企業が元来得意とするコンソールゲーム市場(家庭用ゲーム専用機)での順当な進化と言える。

クラウドゲーミングやAR/VRといった新しいハードウェアの胎動が始まるなか、日本企業が取り残されていくのでは、という危機感を抱いた。

先にも述べたが、ゲーム業界でうねるトレンドに対して日本企業がフォロワーに徹してしまっている点が、大きな課題と言える。確かにコンソールゲームでは日本勢は圧倒的かもしれない。しかしこのままでは、ITジャイアントをはじめとする新興勢力に市場を奪われてしまうバッドシナリオも考えられる。

今後の日本企業の対応

ソニーの出展ブース
図4 ソニーの出展ブース

日本企業(コンソール陣営)の打ち手は大きく2つだ。

1つ目はコンソールゲームで培ったハードウェアの強みをさらに突き詰めていく方向だ。コンソールの定義をゲームから広げて、ロボットや様々なハードウェアを容易にプログラミング、操作するハードウェアプラットフォームを目指す。換言すれば、ITジャイアントのストリーミングゲーム攻勢に“手触り感”のあるハードウェアで対抗する戦略だ。

2つ目はさきほど紹介したNrealのような新しいデバイスイノベーションを取り込んでいく方向だ。PlayStation VRがそうであったように、VR/AR/MRは決してコンソール機と相性が悪い分野ではない。新たなデバイスを開発して、コンソールゲームによる体験を拡張できれば、ゲーム業界での存在感を維持できるだろう。

▼続きはこちら
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