睡眠データの測定で、睡眠の質を向上

スリープテックの中でも注目を集めていた日本の寝具メーカーである西川株式会社は、個人のスリープマネジメントからオフィス・ヘルスセンシングや女性ヘルスセンシングなどのあらゆる領域まで、睡眠解析データを活用して生活者の暮らしを豊かにする、という将来的なビジョンを発信していた。

西川株式会社のエアーコネクテッド SIマットレス
図1 西川株式会社のエアーコネクテッド SIマットレス

睡眠科学に基づいて開発したマットレスに睡眠データを計測するセンサーを搭載しており、取得した睡眠中のパーソナルデータは西川のプライベートクラウドに送られ、睡眠データを測定することで、睡眠の質が解析される。

その睡眠解析データを用いて、Amazon Alexaなどのサービスと連携して寝室環境をリアルタイムで制御し、個人の眠りの状態に合わせて、エアコンや照明、音響などの生活家電をコントロールすることで快適な睡眠環境を実現できるという。

その他、取得した睡眠解析データを基に、睡眠の質などのパーソナルデータを可視化し、栄養管理、トレーニング指導、化粧品の提案など、一人ひとりにあったアドバイスで、日常生活をトータルサポートするサービスの構築を目指すというものだ。

近年ではApple Watch、Fitbitのスマートウォッチを筆頭に、腕につけて心拍数などを図るウェアラブルデバイスの多くが既に製品化されており、目新しいものは少なかったが、腕で心拍数や歩数を図るのではなく、食習慣をトラッキングするスマートベルトや、スマートフォンと簡単に接続でき、GPSトラッキング、ペダリングテクニック分析、人工知能による疲労度やケガのリスク探知の機能を一つのインソールに集約したサイクリスト向けインソール(靴底シート)などの展示があった。

WELTのスマートベルト
図2 WELTのスマートベルト

今回展示してあったWELTのスマートベルトは、バックルに埋め込まれた磁気センサーがリアルタイムでウエストサイズを計測するものであり、搭載された各センサーで生活習慣にまつわるデータも収集できる。

座っている状態を検知し、1時間座りっぱなしのときは必要に応じてアラームで知らせてくれる。歩いた歩数をカウントしてカロリー消費量も計算する。歩数やカロリー消費量は、専用のスマホアプリから確認可能であり、アプリでは個人の体重と年齢を分析し、ユーザーに適した1日あたりの移動目標距離を提示する。カラーバリエーションも豊富で、日常のファッションに取り入れられるウェアラブルデバイスとして注目を集めていた。

デジタルヘルスの今後

展示されたヘルスケア製品
図3 展示されたヘルスケア製品

5Gの展開による通信面での追い風がある中、腕、ベルト、靴底、衣類と身に着けるものすべてにセンサーがついていくだけでなく、今後はAIの活用により自身の健康状態を把握する精度が増していくことは間違いない。

さらには、健康状態の把握にとどまらず、健康状態の予測、異常の早期発見や最適な治療が受けられる時代が近い将来に来るだろう。

日本だけでなく、デジタルヘルスは世界市場で注目されており、米国デジタルヘルス関連スタートアップへのVC投資額推移は2017年の57億ドルから42%も増加し、81億ドルに達している。特に高齢化が進む日本企業にとって、デジタルヘルスの分野は注力すべき分野であり、今後も多くのベンチャー企業によるプロダクトが開発されていくだろう。

iOSアプリ「パーソナルヘルスレコード」のように個人のヘルスケア情報をアプリ上に集約するといった「情報の管理・運用」、ウェアラブルデバイスによる生体情報収集やモニターの「診断・治療関連」、アマゾンによるオンライン薬局を例とする「保険・薬局」など、デジタルヘルスのカバー範囲は広範囲に及ぶ。

実際にヘルステック分野に参入する企業は増えているものの、アメリカと比較すると注目度は劣る。市場成長性、テック技術の応用性の観点より、現在のデジタルヘルスブームは、多くの日本企業にとってデジタルヘルス、あるいははヘルスケア業界への投資や参入の機会になり得る。特にベンチャー企業への投資の観点では、資金調達の面でVCの役割が重要になってくるだろう。

ランキング記事

1

「不要不急」 削減された交際費の研究

会社の交際費で飲み食いし、湯水のようにお金を使う。いわゆる「社用族」と呼ばれる人々は、バブル崩壊とともに消え去った。多くの人が、そう思い込んでいる。しかし、交際費をめぐる数字を丹念に見ていくと、そのような「思い込み」とは異なる風景が見えてくる。この記事では、前回東京オリンピックが開催された1965年からの長期トレンドを観察し、日本の「交際費」を分析する。

2

ドラマ「半沢直樹」に学ぶこと JALのリアル「タスクフォースメンバー」が語る

TBS日曜劇場「半沢直樹」の快進撃が続いている。2013年に放映された前作は、最終回の平均視聴率が平成の民放ドラマ1位となる42.2%(関東地区)をマークし社会現象になった。今回も、視聴率が20%台の中盤と極めて快調だ。筆者は、後半のストーリーのモデルとなった「JAL再生タスクフォース」のメンバーであり、実際に日本航空に乗り込んで「タスクフォース部屋」を設置した。その当時のことを思い出しながら「半沢直樹」を見ている。ドラマと実際に起こったことに違いはあるものの、スリルのある面白いドラマとして楽しんでいる。 本稿では、筆者が、「半沢直樹」をみて感じたこと、そして、学ぶべきと思ったことを述べたいと思う。

3

「7割経済」時代の事業再生 Withコロナ ㊤バブル後30年の変化

コロナと共に生きるWithコロナ時代は、「7割経済」と言われている。これは、多くの産業で「コロナ前の水準に業績が回復することはない」ことを意味する。これまでの事業再生は、「経営改革を伴う再生計画を実行すれば、いずれ売上高も回復していく」という基本前提に立っているが、その前提が大きく崩れる。Withコロナ時代はこれまでとは異なる手法、事業再生の「ニューノーマル」が求められる。

4

植物工場ビジネスの目指すべき未来 ㊤ 現状編

コロナ禍の中で植物工場が脚光を浴びている。消費者の食に対する感度が高まる中、ネット、スーパーでの需要が伸びているという。植物工場はこれまで日本の研究・理論・技術が世界の最先端を走っていたが、ここ数年は海外の追い上げが激しく、国際的な優位が絶対的ではなくなってきている。また、採算性が上がってきたとはいえ国内でも競争が激化、今後、戦略的に取り組んでいくことが必須である。この記事では、国内を含めた植物工場ビジネスの最前線と今後について、考えたい。

5

フードデリバリーの大きな「伸びしろ」と課題

UberEatsや出前館に代表されるフードデリバリー企業の隆盛が著しい。新型コロナウィルス感染の影響による飲食店利用の減少と在宅時間の増加が相まって、ファストフード(FF)店やレストランの料理の配送サービスが足元で急増している。本稿では、流通・小売業界におけるEコマース市場の歴史等を参考に、フードデリバリー業界の将来シナリオについて論考していきたい。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中