M&Aにおけるディールとは?M&A成約までのプロセスやディールメーカーについて解説

M&Aは、企業同士の合併や経営統合、企業や事業の売買、企業間提携といった経営手法です。 参加する企業が互いの課題を解決したり、急速な成長を目指すため、ビジネスの世界ではM&Aはよく使用されます。 では、具体的にM&Aはどのようなプロセスで行われるのでしょうか? 本稿では、M&Aのプロセスとなる「ディール」について、関連する用語やディールメーカーという重要な存在、M&Aが成約するまでのプロセスについて解説します。

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M&Aにおけるディールとは?

ディール(deal)は、「取引/契約/商談」などと訳す英単語です。

M&Aにおけるディールとは、M&Aの相手方企業と交渉し、価格などの諸条件をまとめ、買収や合併の契約を成立させるまでのプロセス全般を指します。

M&Aは、企業が経営上の課題を解決するためにより良い相手を探した上で、互いの利害が一致していたり、相手方が条件に納得していなければ、成約まで辿り着くのは困難です。

つまり、企業同士の関係を良好に保ちながらM&Aの目的を達成するには、いかに適切なディールのプロセスを辿るかが重要となります。

ディールメーカーは最適なM&Aのために頼れる存在

M&Aにおけるディールメーカーとは、広義ではディールのプロセスをコントロールする存在です。

具体的には、M&Aを仕掛ける側の当事者となる会社や、仲介会社あるいはアドバイザーなどの専門家が該当します。

本稿では、後者の仲介者や専門家としての存在をディールメーカーとして扱います。

多くの場合、ディールのプロセスは手続きが複雑で高度な専門性が求められます。双方の納得がいく形でM&Aが成立するためには、専門家による仲介や的確な助言がほぼ必要不可欠です。

多くのM&Aでは、当事者となる買い手企業や売り手企業がディールメーカーとアドバイザリー契約を結び、互いに最適なM&A相手を見つけ、円滑にディールを進めるのが通例となります。

M&Aのディールに関する知っておくべき用語を解説

M&Aのディールのプロセスについて解説する前に、基本事項を押さえるため、関連する用語について知っておきましょう。

主に知っておくべき用語は次の4つです。

ディールサイズ:M&Aにおける売買価格の規模

ディールサイズとは、M&Aにおける売買価格の規模です。規模は小中大に分けられるのが一般的で、金額と規模のおおまかな関係は以下の通りです。

小規模案件:売買価格1億円以下
中規模案件:売買価格数億円〜数十億円
大規模案件:売買価格数百億円以上

小規模案件は、スモールM&Aとも呼ばれ、主に中小零細企業や個人事業主を対象としたM&Aです。

中規模案件は、ベンチャー企業や中小企業の中でも、比較的規模の大きい会社を対象としたM&Aです。具体的な会社規模としては、売上高が数十億、従業員100名以上といった基準が一般的です。小規模から中規模までであれば、民間の仲介会社や国内証券会社、地方銀行などがM&Aのディールメーカーです。

大規模案件は、大企業同士の合併や、大企業によるクロスボーダーM&Aなどが該当します。とりわけ売買価格が数兆円を超えるようなものは「メガディール」と呼ばれます。大規模M&Aでは、主に外資系の投資銀行やメガバンクなどがディールメーカーとなる場合が多いです。

関連記事:クロスボーダーM&Aとは?成功・失敗を分けるポイントや事例を紹介
関連記事:スモールM&A市場が活況!注目されている理由やメリット、課題などを解説

ディールブレイカー:重大なリスク

ディールブレイカーとは、M&Aが破談になりかねないような重大なリスクです。

例えば、売り手企業による粉飾決算や脱税といった不正や、売り手企業が抱える債権債務などについての法務上の問題などが該当します。

ディールブレイカーは、買い手企業が買収を検討する初期段階からできる限りの想定をしつつ、デューデリジェンスによって明らかにしなければなりません。

洗い出された問題が解決不可能なレベルであれば、最終的にM&Aが成約しないこともあります。

関連記事:M&Aを成功に導くデューデリジェンスとは?目的や種類を徹底解説

プレディール:M&A実施前のディールの検討と準備

プレディールとは、M&A実施前のディールの検討と準備の段階です。

M&Aは、買い手企業が投資する額と同等かそれ以上のシナジーを得るため、それを実現するためのシナリオや実行計画が重要です。

プレディールのプロセスでは、「どういった戦略のもとM&Aを実施するのか」という観点で、売り手企業となるターゲットの特定や事前検討を行います。

ポストディール:M&Aのディール後の統合

ポストディールとは、M&Aのディール後の統合を行うプロセスで、「PMI(経営統合)」とおよそ同義です。

統合の対象は、経営、業務、意識など統合に関わるすべての範囲に渡ります。

買い手企業と売り手企業が合意するまでのプロセスも大切ですが、その後の統合作業に失敗してしまうと、M&Aに期待される効果が発揮できないだけでなく、M&A自体が破談になる可能性もあります。

関連記事:PMIはM&Aの成否を握るプロセス

プレディールからM&A成約までのプロセス

ここからは、プレディールからM&Aが成約にするまでに、具体的にどういったプロセスを踏んでいくのかを解説します。

プロセスは大きく分けて7つあり、表に整理すると以下のようになります。

順序 M&Aの段階 プロセス
1 プレディール M&A戦略の策定
2 プレディール M&A先企業の特定
3 プレディール 事前検討
4 ディール 基本合意書の締結
5 ディール デューデリジェンスの実施
6 ディール 最終契約の締結
7 ディール クロージング・成約

まず、ディールメーカーに相談や仲介を依頼するためのアドバイザリー契約は、これらのプロセスを開始する前に行うのが前提です。

プレディールでは、そもそものM&Aを実施する必要性や目的を戦略の検討によって明確にし、理想の相手企業を探したり、その企業の事業概要や財務状況といった情報を収集します。

続いて、順序4のディールプロセスから、各項目の詳細をまとめていきます。

基本合意書の締結

基本合意書とは、M&Aに向けた基本的な諸条件(その時点での)の合意事項を確認するため、当事者同士で交わす契約書です。M&Aのスキームが株式譲渡なのか事業譲渡なのか、譲渡価格はいくらか、今後のスケジュールをどうするのか、といった内容がここで決まります。

プレディールの段階で合意ができたら、合意内容を基本合意書に記載し、締結します。基本合意書に法的拘束力はありませんが、以降のM&Aをスムーズに進めていくうえでベースとなる文書です。

デューデリジェンスの実施

続いて、買い手企業がディールブレイカー含む買収リスクを減らすため、売り手企業に対してデューデリジェンス(企業監査)を実施します。調査項目は、先ほど締結した基本合意書で取り決めるのが一般的で、その内容は事業・財務・税務・法務など多岐に渡ります。

したがって、効果的な調査やヒヤリングを実施するため、ティールメーカーや弁護士、会計士などの専門家の手を借りる場合がほとんどです。デューデリジェンスの結果は、基本合意者に反映されます。

最終契約書の締結

最終契約書は、M&Aの正式かつ最終的な合意を締結するための契約書です。契約書の内容は、基本合意書をベースにしますが、デューデリジェンスにより問題点が発覚すると、交渉の条件が変更となる場合もあります。

このように、基本合意書とデューデリジェンスの結果を踏まえ、買い手企業がM&Aへの意思が確定したタイミングで最終契約が交わされます。基本合意書と違い、最終契約書には法的拘束力があるため、締結後は容易に後戻りはできません。

もし契約後にM&Aが破棄される場合、解約の申し出を受けた側は相手に違約金や損害賠償を請求できるようになります。そのため、最終契約の締結前には、意思決定について十分な検討をしておく必要があるのです。

クロージング・成約

クロージングとは、最終契約書に基づき、正式に売り手企業の経営権が買い手企業に移転させる最後の手続きです。クロージングはM&Aのスキームによって内容は異なります。

株式譲渡の場合を例にすると、売り手企業の経営者から株式の譲渡により経営権の移転が行われ、買い手企業から譲渡対価の決済が行われます。クロージングが完了した時点でM&Aの成約となります。その後はポストディールによって統合作業が行われていくことになります。

M&Aのディールは長く複雑なプロセス。ディールメーカーとの協力で理想的な成約を

M&Aが成約するまでには、プレディールから始まり、メインのディールを含め多くのプロセスがあります。もちろん、成約後の経営統合(ポストディール)もM&Aの成否を握るほど重要です。

いずれのプロセスも専門的な知識やノウハウが必要なため、ディールメーカーの協力が実質必須となります。戦略上の目的にかなったM&Aを最適な形で達成するためにも、各プロセスで重要なポイントを押さえ、ディールメーカーと良好な関係を築くことが大切です。

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