CES2020 現地からの報告~5Gからスタートアップ動向まで~ (3)デジタル×ヘルスケアのいま

日本国内では2025年、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上というこれまでにない「超・超高齢社会」を迎える。 その影響は医療分野にとどまらず、介護の分野にも影響している。介護士の数が追いつかず、介護を受けられない人が出ることが予想されていることから、高齢者や介護者を対象としたソリューションが期待されているのがデジタルヘルスの分野だ。 ヘルスケア業界が目指している「医療の質向上」「医療費の抑制」「医療へのユニバーサルアクセス(誰でも医療が受けられる)」の実現において、デジタルヘルスによるソリューションは必須で、高齢者や介護者だけでなく、昨今では健康への意識も高まっている。 今回のCES2020では、健康状態をモニタリングできるウェアラブルデバイスだけでなく、睡眠ケアソリューション(スリープテック)が目立った。

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睡眠データの測定で、睡眠の質を向上

スリープテックの中でも注目を集めていた日本の寝具メーカーである西川株式会社は、個人のスリープマネジメントからオフィス・ヘルスセンシングや女性ヘルスセンシングなどのあらゆる領域まで、睡眠解析データを活用して生活者の暮らしを豊かにする、という将来的なビジョンを発信していた。

西川株式会社のエアーコネクテッド SIマットレス
図1 西川株式会社のエアーコネクテッド SIマットレス

睡眠科学に基づいて開発したマットレスに睡眠データを計測するセンサーを搭載しており、取得した睡眠中のパーソナルデータは西川のプライベートクラウドに送られ、睡眠データを測定することで、睡眠の質が解析される。

その睡眠解析データを用いて、Amazon Alexaなどのサービスと連携して寝室環境をリアルタイムで制御し、個人の眠りの状態に合わせて、エアコンや照明、音響などの生活家電をコントロールすることで快適な睡眠環境を実現できるという。

その他、取得した睡眠解析データを基に、睡眠の質などのパーソナルデータを可視化し、栄養管理、トレーニング指導、化粧品の提案など、一人ひとりにあったアドバイスで、日常生活をトータルサポートするサービスの構築を目指すというものだ。

近年ではApple Watch、Fitbitのスマートウォッチを筆頭に、腕につけて心拍数などを図るウェアラブルデバイスの多くが既に製品化されており、目新しいものは少なかったが、腕で心拍数や歩数を図るのではなく、食習慣をトラッキングするスマートベルトや、スマートフォンと簡単に接続でき、GPSトラッキング、ペダリングテクニック分析、人工知能による疲労度やケガのリスク探知の機能を一つのインソールに集約したサイクリスト向けインソール(靴底シート)などの展示があった。

WELTのスマートベルト
図2 WELTのスマートベルト

今回展示してあったWELTのスマートベルトは、バックルに埋め込まれた磁気センサーがリアルタイムでウエストサイズを計測するものであり、搭載された各センサーで生活習慣にまつわるデータも収集できる。

座っている状態を検知し、1時間座りっぱなしのときは必要に応じてアラームで知らせてくれる。歩いた歩数をカウントしてカロリー消費量も計算する。歩数やカロリー消費量は、専用のスマホアプリから確認可能であり、アプリでは個人の体重と年齢を分析し、ユーザーに適した1日あたりの移動目標距離を提示する。カラーバリエーションも豊富で、日常のファッションに取り入れられるウェアラブルデバイスとして注目を集めていた。

デジタルヘルスの今後

展示されたヘルスケア製品
図3 展示されたヘルスケア製品

5Gの展開による通信面での追い風がある中、腕、ベルト、靴底、衣類と身に着けるものすべてにセンサーがついていくだけでなく、今後はAIの活用により自身の健康状態を把握する精度が増していくことは間違いない。

さらには、健康状態の把握にとどまらず、健康状態の予測、異常の早期発見や最適な治療が受けられる時代が近い将来に来るだろう。

日本だけでなく、デジタルヘルスは世界市場で注目されており、米国デジタルヘルス関連スタートアップへのVC投資額推移は2017年の57億ドルから42%も増加し、81億ドルに達している。特に高齢化が進む日本企業にとって、デジタルヘルスの分野は注力すべき分野であり、今後も多くのベンチャー企業によるプロダクトが開発されていくだろう。

iOSアプリ「パーソナルヘルスレコード」のように個人のヘルスケア情報をアプリ上に集約するといった「情報の管理・運用」、ウェアラブルデバイスによる生体情報収集やモニターの「診断・治療関連」、アマゾンによるオンライン薬局を例とする「保険・薬局」など、デジタルヘルスのカバー範囲は広範囲に及ぶ。

実際にヘルステック分野に参入する企業は増えているものの、アメリカと比較すると注目度は劣る。市場成長性、テック技術の応用性の観点より、現在のデジタルヘルスブームは、多くの日本企業にとってデジタルヘルス、あるいははヘルスケア業界への投資や参入の機会になり得る。特にベンチャー企業への投資の観点では、資金調達の面でVCの役割が重要になってくるだろう。

▼続きはこちら
CES2020 現地からの報告~5Gからスタートアップ動向まで~ (4)モビリティ業界の動向
CES2020 現地からの報告~5Gからスタートアップ動向まで~ (5)スタートアップが走る道

▼過去記事はこちら
CES2020 現地からの報告~5Gからスタートアップ動向まで~ (1)5Gの動向
CES2020 現地からの報告~5Gからスタートアップ動向まで~ (2)今後のゲーム業界のゆくえ

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