VRIO分析とは?

VRIO(ブリオ)分析とは、企業内部の経営資源(内部資源)が持つ強みのレベルを評価するためのフレームワークです。

このフレームワークは、内部資源に着目して自社の競争優位性(他社より優れている強み)を獲得する戦略である「リソース・ベースト・ビュー (Resource Based View:RBV)」に必要なツールとしての役割を果たします。

バーニーが提唱した内部資源とは?

RBVについて研究し、VRIO分析を提唱したアメリカのJ.B.バーニー教授は、企業の内部資源を以下の4つに分類・定義しました。
内部資源
VRIO分析ではこれらを総合して、内部資源について評価していくことになります。

3C分析との関係

内部資源の分析は、マーケティング戦略の基礎として知られる「3C分析」における「自社(company)」の分析に強く関係します。

3C分析では、まず外的環境にあたる「市場(company)」や「競合(conpetitor)」の分析をまとめます。これを踏まえて、内的環境にあたる自社の資源や強みを分析し、成功を収めるためにどのような手を打てるかを検討します。すなわち、同じ環境で戦うライバルより高いパフォーマンスを発揮するため、内的環境の分析にVRIO分析が役立つのです。

こうした分析は、SWOT分析における自社の「強み(strength)」と「弱み(weekness)」であったり、バリューチェーン分析における「自社が価値を生み出している箇所」を分析する際にも応用できます。

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VRIO分析の評価項目は4種類

VRIO分析で内部資源の評価対象となる項目は、「価値(Value)」、「希少性(Rarity)」、「模倣困難性(Inimitability)」、「組織(Organization)」の4つです。

「VRIO」の名称は、これら4つの項目の頭文字に由来します。

それぞれの項目について、何をどのように評価していくかを順に見ていきましょう。

1.価値(Value)

「価値(Value)」の項目では、自社の経営資源が、顧客、組織、社会全体に対して何らかの「経済的な価値」を提供しているかどうかを客観的に評価します。経済的な価値は、自社の売上アップやコストダウンなどのように定量化できるものや、顧客や社会のニーズを満たす付加価値のような定性的なものを含みます。

具体的には、「この資源は利益の源になるか?」「ターゲットを惹きつける強みとなるか?」といった価値に関するさまざまな確認項目に対して、イエスもしくはノーで評価を行っていきます。

2.希少性(Rarity)

「希少性(Rarety)」は、自社の経営資源が市場でどれだけ珍しいかを示す度合いです。つまり、希少性が高いということは、自社と同じ資源をほとんどの競合他社が持っていないということになります。

さきほどの「価値(Value)」の評価が高い資源があったとしても、それをどの競合他社も持っていれば、競争優位に立つ上では有力な武器にはなり得ません。希少性は、顧客の購買意欲をかき立て、脅威となる競合他社の数は減らすための重要な要素です。

3.模倣可能性(Imitability)

「模倣可能性(Imitabillity)」は、自社の内部資源について、競合他社が簡単に模倣できてしまうかどうかの可能性です。

ある資源が仮に希少性が高いと評価されたところで、模倣可能性が高い、すなわち誰にでもマネできる要素があれば、競争優位はすぐに奪われてしまいます。また、模倣可能性を検討する上では、次の3点について分けて考えると効果的です。

歴史的条件

歴史的条件とは、その資源が企業独自の歴史に基づいているかどうかという観点です。つまり、過去の出来事の順序がその資源に影響していたり、資源を手に入れるまでに長い時間を要したなどの要因があると、歴史的条件があると言うことができます。

因果関係不明性

因果関係不明性とは、企業の競争優位性という「結果」と、経営資源という「原因」の関係がはっきりとわからない状態です。つまり、何かしらの経営資源が活きているのはわかるものの、社内外の誰もが「なぜ上手くいっているのか」を正確に把握できていないと、因果関係不明性が高いと言うことができます。

社会的複雑性

社会的複雑性とは、経営資源の成り立ちが複雑すぎて、企業自身ですら管理できていないような状態です。例えば、企業内におけるチームワーク、組織の風土、サプライヤーや顧客とのコミュニケーションなどは、社会的に複雑でわかりにくく、競合がそれを模倣するのは困難であると言えます。

4.組織(Organization)

「組織(Organization)」の項目では、報酬体系やマネジメントなど、企業内のさまざまな仕組みや制度まで含めて、経営資源が積極的に活用される組織になっているかどうかを評価します。

ここまでの3つの項目で高評価を受けた経営資源が最大限の効果を発揮するためには、組織的な方針や手続きとの整合性が取れていることが重要になります。

VRIO分析の実践方法を解説

vrioの実践
VRIO分析はさきほど挙げたように、必ず「V(価値)→R(希少性)→I(模倣困難性)→O(組織)」の順に評価を行っていきます。

まずはじめに、4つの評価項目を整理するため、画像のようなフローチャートを作成しましょう。そして、対象となる経営資源を項目ごとに細かく検討し、結論として「評価できる(YES)」もしくは「評価できない(NO)」のどちらかに分類します。

最初の「その経営資源に価値があるか?」という問いがNOの場合、競争優位性が見込めず、むしろ不利な立場にある「競争劣位」の状態だと言えます。もしYESの場合は、次の問いへと進んでいきます。

「その経営資源に希少性があるか?」という問いがNOの場合は、競合と同程度の強みを持つ「競争均衡」の状態です。

このように質問を繰り返し、模範可能性の問いがNOなら、競合に追い越される可能性のある「一時的競争優位」の状態。組織の問いがNOなら、最良ではないものの簡単に脅かされることのない「持続的競争優位」の状態と言えます。

すべての項目がYESなら、稀少で模倣されにくい高価値の経営資源を持っていて、その最大限の効果を引き出す組織が構築されている「最大限の持続的競争優位」の状態という評価となります。

このように、各項目の評価の組み合わせによって、競争優位性のレベルを見極めていくのです。

トヨタの事例でみるVRIO分析

VRIO分析の具体的なイメージを掴むために、実在する他社の経営資源について評価してみましょう。今回は、トヨタ自動車を例にVRIOの各要素がどのように評価できるかを解説します。

価値(Value):柔軟な対応力

トヨタは自社工場を保有しているため、需給のバランスや経済情勢などに合わせ、生産台数などを柔軟に変更できるのが強みです。

また、こうした工場を世界各地に配備することで販売機会を増やし、世界最大級の自動車メーカーという地位の確立に成功しています。

希少性(Rarely):ロボット共存型の工場

自動車業界において自社工場を持つことは珍しくはありません。しかし、トヨタの工場には希少性が高いAI搬送ロボット「EVE500M」が導入されています。

EVE500Mは、ロボットが周囲の状況を確認しながら最適なルートを走行する「SLAM方式」を採用しており、作業員とロボットの安全な共存が可能です。ロボット共存型の工場を構築していることは非常に希少性が高く、現状は他社が入り込んでいない部分になります。

模範可能性(Imitability):かんばん方式

トヨタの工場には、「かんばん方式(ジャストインタイム方式)」と呼ばれる独自の生産方式が導入されています。この方式は、「必要なものを、必要なときに、必要な分だけ」製造することに特化し、生産効率を高めて無駄な在庫を増やさないことを可能にします。

1960年代から続く歴史的・文化的な手法でもあり、膨大なコストを費やしたとしても完璧に模倣することはできません。

組織(Organization):きめ細かなマネジメント

トヨタは、自社工場や生産方式という優れた経営資源を持ちつつ、現場単位からグループ単位にいたるまで、組織的な統率をとることに長けています。

創始者である豊田佐吉の考え方をまとめた「豊田綱領」による価値観の形成や、基本理念をベースとしたマネジメントや教育の徹底などにより、世界中に通用する競争優位を確立したのです。

VRIO分析で自社の戦力を最大限有効に利用する

マーケティング戦略の立案には外的環境と内的環境の分析が必須です。

つまり、自社の市場における立ち位置や経済情勢などの環境を把握して、次に自社が市場へ勝負を仕掛けるための経営資源を把握することが重要となります。内的環境の分析に特化したVRIO分析で、自社が持ちうる戦力を惜しみなく使えるようにしよう。

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