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オンライン服薬指導の混乱 長期的な調剤薬局市場への影響
オンライン服薬指導をめぐる混乱が生じている。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が再拡大する中、特例として時限的に解禁された「非接触服薬指導」と、9月施行の改正薬機法による「オンライン服薬指導」が並行する形になったためだ。この記事では、二つの制度の違いについて詳しく説明するとともに、オンライン服薬指導をめぐる混乱が、コロナの収束期に向けた調剤薬局経営へ与える影響についても考察する。
オンライン服薬指導、オンライン診療の原則とは
「オンライン診療」の定義は、情報通信機器を用いた「リアルタイムの視覚および聴覚の情報を利用した遠隔診療行為」であり、対象は特定の疾病に限られ、初診での実施は認められていない。
日本でのオンライン診療は、2018年3月に厚生労働省が指針を策定、2018年度診療報酬より「オンライン診療料(月1回、71点)」「オンライン医学管理料(同100点)」が新設収載されて開始した。
それ以前にも「電話等再診料」は存在していたが、これは既存患者からの求めに応じて電話やテレビ電話などで治療上の意見や指示を提供するものであり、診断や医薬品の処方は認められていなかった。
一方、保険調剤薬局で行われる服薬指導はこれまで対面のみが原則とされていたが、2019年の薬機法改正によって法整備され、2020年4月に保険収載、9月からの実施が施行された。
これはそもそも体系的なオンライン医療の充実を目的としているため、オンライン服薬指導の対象となる処方箋は、オンライン診療または在宅・訪問診療によって発行されたものに限られる。
更に服薬指導の実施は、従前に対面調剤の実施歴のある患者への同一薬剤ついて、同一の薬剤師が行うことが求められる。保険薬局は事前に服薬指導計画を作成して内容を患者と合意し、医療機関と共有したうえで当該計画に基いて実施することが要件となっている。
「0410対応」コロナウイルス感染防止のための「非接触服薬指導」の前倒し解禁
新型コロナウイルス感染症の発生をうけ、2020年3月に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」が決定され、院内感染防止のための非接触の診療及び服薬指導の早期実施が求められた。
これを受けて厚生労働省は2020年4月10日に「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(0410事務連絡)を通知した。
これはオンライン診療・服薬指導の要件を時限的な特例として大幅に緩和したものである。中でも、即日解禁された「電話や情報通信機器を用いた服薬指導」は、診療形態による制限なども大幅に緩和され、対象が大幅に拡大。薬機法の「オンライン服薬指導」原則からは大きく異なるものとなった。
厚生労働省は0410対応をあくまでも「時限的な特例措置」であり、これが終了した際のオンライン服薬指導は9月より施行されている改正薬機法に基づく要件が求められるとしている。
▽参考記事
診療報酬改定2020、改正薬機法で、再編加速する調剤薬局業界
薬機法の「オンライン服薬指導」と「0410特例」が並行
▲出所:改正薬機法概要及び0410特例通知よりFMI作成
薬機法が定義するオンライン服薬指導と0410対応による非接触服薬指導の相違点を上の図に示したが、大きな違いのひとつとして、前者はリアルタイムの視覚情報を含む情報機器の使用が前提であり、後者は電話のみによる服薬指導(太字)が認められていることである。
厚生労働省が公表した7月までの0410対応オンライン診療実施状況の検証結果では、全医療機関中で電話・オンライン診療を実施した医療機関の割合は4月末の9.6%から7月末には14.6%まで増加している。
但しその中で使用された情報機器は、データが示された4-6月のいずれの月でも電話による診療が過半数を占めている。服薬指導における同様のデータは示されていないが、大手調剤薬局チェーンのヒアリングや市中の門前薬局の店頭掲示等では、「来店不要及び電話カウンセリング対応」の訴求が多く見られている。
0410特例で、オンライン服薬指導(電話)が浸透へ
コロナの感染拡大状況を踏まえ、厚生労働省は8月に0410対応の延長を発表した。現在(2020年11月)のコロナ感染状況を見る限り、当面はこの対応が続く可能性が高いだろう。
この中で、初診を制限しないオンライン診療や、処方元の診療形態や当該薬局の利用歴を問わないオンライン服薬指導は、慢性疾患や深刻ではない症状の患者にとって便利なものとして浸透する可能性は否定できない。
9月からは予定通り薬機法上の「オンライン服薬指導」が開始された。オンライン診療システムプロバイダー大手の株式会社メドレーが11月13日に開示した決算概要によると、同社のオンライン服薬指導システムPharmsは9月末時点で2,000件以上が導入されたとのことだが、その大半は従来から9月に向けた準備を計画していた大手・準大手調剤薬局チェーン3社向けのものと判断される。
その他の大手チェーンは、従来計画通り導入準備を行っている企業や、現状では処方元医療機関の状況に応じて必要な対応を行いつつ、コロナ禍を受けて検討されているオンライン診療・服薬指導に対する規制見直しの動向を窺い、店舗特性毎の本格導入要否とタイミングを計っていると見ている。
オンライン服薬指導の提供は継続するか
国内で約5.9万軒の調剤薬局のうち、7割程度は中堅、中小規模あるいは個人事業主により開設されている。COVID-19感染が本格化した3月以降の調剤薬局市場は、8月に至っても依然として処方箋枚数、金額ともに前年同月を割り込む厳しい状態が続いている。
0410特例を受けて現状で非対面服薬指導を提供しているこれらの中小規模薬局の中で、薬機法の要件を満たすための人的・経済的リソースを有する薬局は限定されている。筆者は今後のオンライン服薬指導の要件見直しが患者の薬局選択に及ぼす影響に注目しており、0410特例の終了が小規模薬局の淘汰の引き金の一つとなる可能性に注視している。
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