診療報酬改定2020、改正薬機法「対物から対人へ」の機能シフトを一層加速

処方箋イメージ

薬機法*の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質・有効性・安全性の確保、保健衛生上の危害発生及び拡大の防止、指定薬物の規制、医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進を目的に、医薬品、医療機器等の製造・表示・販売・流通・広告などを規制する法律」という。

今回の改正は、旧薬事法が2014年に改正されて以来、初の見直しとなる。

厚生労働省は法改正に先立つ2015年、長期的な調剤薬局のあるべき方向性を示す「患者のための薬局ビジョン」を策定している。

これは、「団塊の世代」全てが75歳以上の後期高齢者となる2025年をめどに整備が進められている「地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)」の中で、調剤薬局に求められる機能を定義したものである。

調剤薬局に求められる新たな機能とは

図表

出所:厚生労働省「患者のための薬局ビジョン 概要」より抜粋

上の図に示すように、同ビジョンでは地域の医療機関、介護事業者などと構築する包括的なネットワークの中で、調剤薬局には具体的な「かかりつけ薬剤師・薬局機能」「健康サポート機能」「高度薬学管理機能」を有することが求められている。

2019年の薬機法改正はこれを法的に裏付ける形で、
①薬剤師による継続的な服薬状況の把握及び服薬指導の義務の法制化
②都道府県知事の認定制度に基づく地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局の導入
③テレビ電話等による服薬指導の導入
④許可等業者に対する法令遵守体制の整備等の義務付け

以上4項目が法制化された。このうち①と③は2020年9月から施行され、②と④は2021年8月の施行が予定されている。

が施行されたことによって、9月から調剤薬局の薬剤師は、調剤時以降にも継続的かつ的確な服薬状況の把握及び服薬指導を行う義務と、患者の薬剤使用に関する情報を他の医療提供施設の医師等に提供する努力義務が課される。薬局の開設者は、薬剤師にこれを行わせる義務が課されたことになる。

これにより、特に複数医療機関の処方による多剤を併用する患者や基礎疾患を有する患者に対しては、薬剤情報の一元管理や調剤後のフォローなどは必須となる。調剤薬局にとっては、薬剤師の業務内容の増加と多様化に対応し、教育研修の強化に加えて、既存の非対人業務の効率化などは待ったなしといえる。

診療報酬改定2020の影響は

処方箋薬局イメージ

薬機法改正と並行して、原則2年ごとに行われる診療報酬改定では経済的インセンティブによって薬局の機能シフトを促してきた。2018年に新設された地域支援加算では、かかりつけ薬局・薬剤師による患者への24時間対応、在宅対応が既に算定要件となっている。

2020年4月改定では「対物」から「対人」への方向に則り、「対物業務」の中心となる調剤基本料で高単価となる薬局区分の算定範囲を縮小するとともに、低単価の敷地内薬局の報酬額も更に引き下げた。
地域支援加算は単価を引き上げる一方で、算定要件が追加され、中小規模門前薬局の加算へのハードルを高めた。

「対人業務」となる薬学管理料では、特定疾患に対する高度な服薬指導や事後フォロー、医療機関へのフィードバック提供に対する報酬の新設等を含む引き上げが行われ、9月からの改正薬機法施行に備えたオンライン服薬指導に対する診療報酬が新設された。
調剤薬局の収益を維持していくためには、規模や立地条件を問わず、在宅を含む地域医療への貢献や、薬学的指導機能を強化する必要性がますます高まったといえる。

コンビニより多い、調剤薬局は淘汰を含む再編へ

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全国の調剤薬局数は2018年度末時点でコンビニエンスストアを上回る59,613店(厚生労働省統計局)となっており、8兆円弱の市場規模に対してチェーン大手10社のシェアが2割に満たない市場である。
対して医療機関数は2019年10月時点で病院が8,300施設、一般診療所が102,616施設(厚生労働省、医療施設調査)となっている。医薬分業率が75%弱にとどまることを考慮すると、病院数に対する調剤薬局数は多く、診療所に依存する規模の薬局も多いことがうかがえる。

健康保険組合連合会が2019年11月に公表した医療経済実態調査によると、保険薬局の2018年度の全国平均損益差額率は前年度比1.4%ポイント減の5.5%だが、そのうち個人薬局平均は9.8%(同0.9%ポイント減)、法人薬局平均では5.4%(同1.4%ポイント減)となった。
法人はグループ規模が大きいほど損益差額率は高く、20店舗以上のチェーンでは7.6%(同1.3%ポイント減)と平均を大きく上回っている。

2020年度診療報酬改定が幅広い規模の薬局に対して厳しいものとなったことに加え、受診抑制による応需処方箋の減少などにより、2020年の調剤薬局業界は大手であっても収益環境は厳しい状況である。
その中でも今年及び来年と施行される改正薬機法へ対応して生き残るためには、人材確保、教育研修強化、システムなどに対する相応の投資は避けられない。

コロナが、調剤薬局の機能シフトを加速する

薬イメージ

今春にコロナウイルス感染が拡大したことを受け、医療機関受診患者数の減少が続いた。一方で感染防止の視点から特例的・時限的なオンライン診療・服薬指導が4月から解禁されるなど、調剤薬局業界にも大きな影響を及ぼしている。
この中で、改正薬機法の施行など政策による調剤薬局経営への影響に関する議論は置き去りにされているように見える。

しかしコロナ禍は、感染症などに対する医療供給キャパシティ不足や都道府県による医療行政のばらつき、医療のデジタル化の遅れ、あるいは不要不急の患者の受診行動といった日本の医療制度の課題を浮き彫りにした。

今後、医療機関の機能による再編や再配置の検討や遠隔診療の拡大が進み、不要不急の医療機関受診の抑制が継続するなら、医療機関の淘汰を含む・再編も現実的なものになると考えられる。

長期的に調剤薬局が生き残るためには、特定医療機関に依存するリスクを管理し、患者を中心に据えて複数医療機関と連携することや、遠隔医療や地域における在宅医療への対応強化など、改正薬機法が求める機能へのシフトは一層重要性を増すと筆者は考えている。

調剤薬局再編は最終ステージ、更に加速へ

筆者は、調剤薬局業界再編の最終ステージはコロナによってむしろ早まると見ている。大手を含む再編も起こりうると考えている。また、医療機関の経営状況が不透明な中で、これまで売り手市場と言われてきた中小規模チェーンにとっても環境は変わりつつある。立地ではなく、自社の強みやリソースを分析し、規制への対応能力と自社が強化すべき薬局機能を検討したうえで、存続・成長にとって他社との提携などが必要であれば、迅速に行動することが必要となるだろう。

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