縦割りの弊害

新型コロナウイルス感染は終息が見えないどころか、全国的に感染が再び拡大している。このような時代においては、コロナの影響を直接受ける産業(観光、旅館ホテル、飲食店等)以外でも、ビジネスモデルの転換や多様化を図ることを目的としたビジネスモデル改革のニーズが、日増しに高まっている。
しかし、大企業の中においては、縦割り組織の弊害や経営全体を俯瞰できる人材が不足しているなどの問題で、コロナ禍における危機的状況の中でも機動的に経営改革を実践することができない企業も少なくない。

また、「ビジネスモデルの転換や新規事業等についての積極的な意見が、役員や幹部社員から出てこない」と頭を抱えている大企業の経営者も多い。

大企業における組織的な課題「縦割り」

大企業は事業の拡大にともない、部署の数が大きく増えてしまうケースが多い。順序は企業によって異なるが、大部分のケースでは以下のような経過(順序は企業によって異なる)で、組織が細分化されていく。


1 国内外の地域別組織が発展
2 サプライチェーンの機能毎に、組織が分化
3 製品又は事業の多様化により事業別組織が増加
4 経理、財務、総務、法務、システム、経営企画等の管理組織が、専門的に
  細分化

企業規模の拡大に伴って、その業務内容は複雑化する。部署ごとの機能の細分化・専門化を図ることは各部署のマネジメントの観点から効率的であり、当該部署の部員も分かりやすい方針で仕事を進められる。上記のような部署の細分化は、組織の発展としては自然な姿である。

かつての高度成長時代のように、各社が属する産業分野の多くが成長分野であった時代は、会社組織内の各部署が、機械における歯車のように動くことで、会社組織は正常に機能していた。

しかしながら、高度成長後の低成長時代とバブル崩壊を経て、かつての日本が得意としてきた高成長分野は、成熟化又は衰退化している。インターネットを中心としたIT化の進展、通信手段や移動手段等の様々な分野での革新的な発展は、海外企業主導で実践されてきた。

改革への基盤がない

このような経過の中で、日本の大企業はビジネスモデルの変革を行う必要性が増加してきている。
しかしながら、自社の組織において以下のような経営課題を抱えているため、ビジネスモデルの変革のための基盤が整っていないことに頭を悩ませている経営者は多いものと思われる。


1 各部署の責任者である担当役員や部長等が、自部署優先の「部分最適」で物
  事を考えており、「全社最適」な意見を述べて行動する幹部が少ない
2 新しいビジネスについて積極的に提言し、実行する経営幹部や社員が少ない
3 役職者の意見集約に時間がかかり、意思決定の速度が遅い
4 次世代を委ねられるような大局観を持った優秀な人材が、なかなか見つから
  ない

これらの組織的な課題の原因は、それぞれ違う要素もあるが、根本原因は同じところからきている。

即ち、人間の心理として、部署が細分化されると、部署内での貢献が自己の人事評価に直結する反面、全社的な行動自体はなかなか部署内で評価されないため、①の部分最適という弊害が生じやすくなる。

また、会社内の各部署は、それぞれ役割やミッションが社内で決まっているため、その中で仕事をしていると、②のように当該部署の管轄を超えた大局的な新しいアイデアが出る土壌は生まれて来ない。

加えて、部署の細分化により、③のように議案をチェックする関係部署は飛躍的に増大するが、そのこと自体は、自己の責任の分担に繋がるので、各部署の幹部は意思決定の速度を速めるインセンティブに欠ける場合が多い。
最後に、各部署の幹部ですら会社全体を見る機会が少ないので、④のように当該部署の若手中堅メンバーにおいて、全社的なものの見方をできる人材は育ちにくい環境にある。

経営人材は、意図して育てよ

優秀な経営人材は、部門が細分化されている大企業において自然的に育たないケースも多い。企業が意図して、経営人材を育てる機会を作ることが肝要である。

次回㊥では、事業再生で求められるターンアラウンドの手法、㊦では大企業のポートフォリオ改革で求められるノウハウについて、詳しく述べたいと思う。

▼続きはこちら
コロナ時代における大企業の経営改革 ターンアラウンド(企業再生)のノウハウを活用 ㊥再生企業におけるターンアラウンド
コロナ時代における大企業の経営改革 ターンアラウンド(企業再生)のノウハウを活用 ㊦大企業におけるターンアラウンド

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