「ベビーテック」とは?育児支援に役立つITの活用事例や市場動向を解説

核家族化の進行や、夫婦共働きの世帯の増加により、以前と比べて子育てにかけられるリソースが減少しています。そこで、テクノロジーを使って育児・保育の負担を減らす試みが、「ベビーテック(Baby Tech)」の推進です。 ITやIoTの活用によって、赤ちゃんの授乳や食事、知育、健康管理、安全対策は、以前よりも手軽で効率的なものになりつつあります。本記事では、ベビーテックの概要や、家庭や育児施設での活用事例、近年の市場動向の変化について解説します。

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ベビーテックとは?

ベビーテック(BabyTech)とは、「Baby(赤ちゃん)」と「Tech(テック、テクノロジー)」を合わせた造語で、育児や保育を効率化し、保護者の負担を軽減するための製品・サービス・テクノロジーの総称です。

とくに子育てにかけられるリソースが少ない核家族世帯や共働き世帯、シングルマザー/ファーザーでは、子育ての効率化は喫緊の課題です。

ベビーテックは、母親の負担が大きい妊娠・出産・産後の時期や、子育ての負荷が高い新生児~小学校入学前(未就学)の時期をターゲットに選び、子育てをするすべての人をサポートしています。

ベビーテックの注目度は近年高まりつつあります。

2016年には世界最大級の電子機器の見本市であるCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)で、ベビーテック製品が取り上げられました。

日本でも、2019年にBabyTech Award Japan 2019が開催され、子育てにITやIoTを活用する動きが高まっています。

なぜ今ベビーテックが注目されているのか?市場規模と普及の背景

ベビーテックの市場規模は拡大しています。

なぜ、今ベビーテックが注目されているのでしょうか。ベビーテック製品の普及が急速に進む背景を解説します。

ベビーテックの市場規模は拡大傾向にある

矢野経済研究所の調査によると、日本国内のベビー用品・サービスの市場規模は、2018年の時点で4兆1,210億円です。

前年比4.5%増であり、市場は拡大傾向です。[注1]

ベビー用品・サービスの市場は、少子化が進行し、出生数が減少しているため、内需の拡大という観点から、長期的な漸減トレンドが予想されていました。

なぜベビー用品・サービスの市場は拡大しているのでしょうか。

その一因として挙げられるのが、育児・保育の負担を軽減し、子どもの健やかな成長を守るためのテクノロジーへの需要の高まりです。

たとえば、赤ちゃんの体にやさしいベビーフードや粉ミルク、スキンケアアイテム、利便性の高い哺乳関連用品のマーケットが伸長しています。

子育ての負担を軽減するベビーテックの市場も、このトレンドをベースに今後拡大していくと予想されています。

ベビーテック普及の背景を読み解く3つのポイント

ベビーテックのマーケットが拡大している背景を詳しく見てみましょう。

ベビーテックへの関心が高まる要因として、次の3つのポイントが挙げられます。

  • 核家族化が進み、複数の世帯で子育てを分担できなくなった
  • 共働き夫婦が増加し、子育てにかけられるリソースが減少した
  • 晩婚化によって、「子育て」と「介護」が重なるダブルケアラーが増加した

とくに注意が必要なのが、晩婚化にともなう「ダブルケア」の問題です。

女性の出産年齢が高齢化したため、子育てを行う時期と両親・義父母の介護を行う時期が重なるケースが増えています。

内閣府男女共同参画局の2016年の調査によれば、ダブルケアラーの人口は約25万人(女性約17万人、男性約8万人)と推計されており、多くの方々が育児・介護の両面の負担を抱えています。[注2]

その解決策となりうるのが、子育ての負担を軽減するベビーテック製品です。

ベビーテックが期待される5つの領域

ベビーテックの導入効果が期待される領域は、大きく分けて5つ存在します。

1.Baby Eats(赤ちゃんの授乳や食事)

第一の領域は「赤ちゃんの授乳や食事」です。

ベビーテックを活用すれば、授乳を行う母親の負担軽減や、食事の安全性を高められます。

たとえば、電動さく乳機器は乳房の負荷を抑えて、授乳をアシストします。

また、授乳・食事の履歴をスマートフォンアプリに転送し、赤ちゃんの成長記録を管理できます。

2.Baby Learn & Play(赤ちゃんの学びと遊び)

赤ちゃんや未就学児童を対象とした知育分野でも、ベビーテックの活用が進んでいます。

たとえば、タブレットを使った幼児向けのラーニングシステムが代表例です。

また、アプリで遊べる「スマート積み木」や、スマホ・タブレットと連動した「スマートぬいぐるみ」など、学び・遊びも進化をつづけています。

3.Baby Safety(赤ちゃんの安全対策)

睡眠中のSIDS(乳幼児突然死症候群)対策や、事件・事故を未然に防ぐ見守りサービスなど、赤ちゃんの安全対策分野でもベビーテックが活用されています。

とくに保育施設では、午睡(お昼寝)中の監視のため、IoTを活用したマット型の睡眠監視デバイスを導入するケースも増えてきました。

布団やマットレスの下にセンサー付きのマットを敷き、園児の状態を数分おきに確認できます。

4.Healthy Baby(赤ちゃんの健康管理)

「赤ちゃんの健康管理」の分野では、IoTデバイスを活用して子どもの体調を知り、健康管理に役立てています。

身近で使えるものとして、スマート体温計があります。

子どもの体温を簡単に計測できるだけでなく、スマホやタブレットに自動でデータを送信できます。体調の変化(体温の大きな変動)があれば自動で警告する仕組みがあるため、保育施設や医療機関でも活用されています。

5.Fertility & Pregnancy Help(妊活・妊娠支援)

妊活・妊娠中の方をテクノロジーで支援するため、自宅でも妊活に取り組めるデバイスや、医療機関と妊婦の連携を強化するサービスが開発されています。

たとえば、胎児モニターを使えば、自宅でも胎児の健康状態をモニタリングできます。

また、医療機関では周産期遠隔医療プラットフォームの導入が進んでいます。

遠隔地でも、産婦人科医の診断を受けられる環境が整いつつあります。

ベビーテックを子育てに取り入れる3つのメリット

ベビーテックを育児や保育に取り入れると、次の3つのメリットが得られます。

1.赤ちゃんの危険や体調変化をすばやく察知

ベビーテックを使えば、赤ちゃんの危険行動を監視し、体調変化にすばやく気づけます。

IoTデバイスには、脱水症状をセンサーで検知する製品や、呼吸や心拍数をモニタリングする製品があります。

また、睡眠中の危険行動を監視するアプリや、シートベルトの脱着時に警告するチャイルドシートも存在します。

2.保護者以外による育児・保育のアシスト

ベビーテックを活用すれば、保護者以外でも育児や保育を手伝えるため、子育ての負担が大きく軽減します。

たとえば、親族に子どもを預ける際でも、ベビーテック製品があれば子育ての質が低下しません。

赤ちゃんの健康管理を行うアプリを活用すれば、遠く離れた場所でも預けた子どもの体調がわかります。

3.保育施設の負担を軽減し、サービスの質を向上

保育施設は深刻な保育士不足に悩んでおり、サービスの質の向上の足かせとなっています。

厚生労働省の調査によれば、令和元年の保育士の有効求人倍率は3.05倍であり、高い水準で上昇しています。[注3]

ベビーテックを活用し、赤ちゃんの状態をツールですばやく管理できるようになれば、保育現場の負担が減少します。

保護者にとっても、安心して子どもを預けられる場所が増えます。

ベビーテック製品・サービスの2つの事例

ITやIoTを駆使したベビーテック製品・サービスは、次々と新しいものが登場しています。

その中でも、とくに注目の事例やユースケースを紹介します。

ベビーケアアラーム AKOi Heart:赤ちゃんの泣きや寝返りを検知

「ベビーケアアラーム AKOi Heart」は、赤ちゃんの動きを数種類のセンサーで検知し、睡眠中などの事故を防ぐ製品です。

泣き・寝返りを検知すると、すぐにスマートフォンやタブレットへアラームを送信します。

赤ちゃんの安心・安全を守るだけでなく、「赤ちゃんの状態が気になって、何度も起きてしまう」状態から開放し、保護者の育児・保育疲れを解消する製品です。[注4]

Withings Body +:赤ちゃんの健康をスマホで管理できる体組成計

「Withings Body +」は、Wi-Fiによる無線通信機能を持った体組成計です。

「体重」「BMI」「体脂肪」「体水分率」「骨量」「筋肉量」などの身体の記録を取得し、スマートフォンのアプリに自動で送信してくれるため、赤ちゃんの健康管理が容易になります。

妊娠中の母体の体重の変化を計測して、健康状態をサポートする機能もあり、妊活・妊娠中の方にも役に立つ製品です。[注5]

医療面や教育面での進歩も期待される

ベビーテックの本質は、育児・保育のリソースを効率的に活用して、保護者の心理的・身体的な負担を減らす点にあります。

子育ての負担が減れば、育児・保育がもっと楽しくなり、家庭生活における子どもの情操教育の点でもメリットがあります。

5G通信のような情報通信技術が発達し、赤ちゃんの健康状態・行動・感情・生活環境などのビッグデータの分析によって、今後も優れたITシステムやIoTデバイスが開発される可能性があります。

育児や子育てだけでなく、小児医療や児童教育の分野での進歩も期待されています。

子育てとテクノロジーを結びつけるベビーテックは、今後も目の離せない成長分野の1つです。

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<参考>
[注1]
株式会社矢野経済研究所 ベビー用品・関連サービス市場に関する調査を実施(2019年)
[注2]
内閣府男女共同参画局 「共同参画」2016年6月号
[注3]
厚生労働省 保育士の有効求人倍率の推移(全国)
[注4]
赤ちゃんの動きを感知してアラーム!ベビーケアアラーム AKOi Hear
[注5]
Wi-Fi対応 体組成計 – Body+

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