ベトナムの新型コロナウイルス(COVID-19)動向

ホーチミン風景

この記事を書いている時点(5月中旬)で、ベトナムはコロナ対応の「優等生」と呼ばれている。4月22日時点の報道記事によれば、感染者数268名、死者は0名に抑え込み、4月23日に大都市圏における不要不急の外出制限を解除した(その後、5月14日時点で感染者数288名/死者0名)。以下に挙げる要素を踏まえ、「big post-pandemic winner(パンデミック後の勝者)」になりうると評する記事も出るほどだ。

ベトナムの現状をまとめると、以下のようになる。

・コロナ対応における他国支援を通じたソフトパワーの獲得

・医療機器・物資の生産増、また米国・ロシア・スペイン・イタリア・フランス・ドイツ・英国といった国々への関連物資の寄付(特にトランプ大統領はTwitterでデュポンのベトナム工場における防護服生産について謝意を示している)

・中国寄りであったカンボジア・ラオスへのマスク・消毒液等の関連物資の支援

・コロナ以前から起こっていた米中貿易戦争に伴う生産拠点移転トレンド

・相対的に高い経済成長率(世界銀行による2020年のベトナムGDP成長率はワーストケースで1.5%と従来の7.0%前後より当然低くなるが、隣国タイの同指標は-5.3%に落ち込む)

当社(フロンティア・マネジメント)も拠点を構えるシンガポール(同26,098名/21名)も、一時期コロナ対策の「優等生」とされた。
しかし、3月は輸入症例の増加、更に4月に入り外国人ワーカーの感染を抑え込めない(むしろ想定できていなかった)など悪化、検査キャパシティの増加もあるが5月に入っても引き続きワーカーでの感染は拡大しており、時の経過とともに状況は変化しうる点には十分留意されたい。

なお、マレーシア(同6,819名/112名)は度重なるロックダウンの延長を決め、インドネシア(同16,006名/1,043名)はラマダンでの感染拡大防止のため移動制限をかけるなど、他のASEAN主要国については、まだ先は長いように見える。
タイ(同3,017名/56名)は非常事態宣言下で夜間の外出やアルコール販売の禁止等の施策が奏功し、出口を探っているようだ。

ベトナムのM&A動向・注目業界

ホーチミン風景

コロナ以前から、ベトナムはM&Aの対象国として安定して注目されてきた。2014年以降、日本からの対ベトナムM&A件数は20件/年を継続的に超え、2019年には30件を超えた。域内では対シンガポールの同年63件に次ぐ規模であり、日本企業の関心の高さが伺える。

100億円を超える規模の案件(三井物産によるミンフー・シーフードへの資本参加等)もあるが、基本的には50億円未満の中小規模案件が中心だ。業界はガス・物流・IT・人材・医薬品・建設など多岐に渡り、どの業界をも惹きつける期待値の高さが伺える。

販路拡大に向けた卸売案件の買収ニーズをいただくことも多いが、発掘できる例は稀で、販路を持つメーカーに視点を切り替えたほうがよい出会いがあるだろう。なお、小売は規制やPEファンドとの競争があることから、成就させるには相応に労力を要する。再生可能エネルギーも政策的な後押しがあり注目に値するが、欧州や日本の歴史を見てもわかる通りその継続性は注意深い検討を要する。

まとめ

繰り返しになるが、ベトナムは進出を目指す日本企業にとって、安定して注目されてきた。2020年は一時的なM&A件数の下落が見込まれるが、収束後は従来のトレンドを更に超える可能性もあるだろう。当社(フロンティア・マネジメント)でも2020年2月より、ベトナムにて新メンバーAlex Chauを迎え、M&Aアドバイザリー体制を強化している。

コロナ収束、入国制限解除後のベトナムにご関心をお持ちの方は、是非ともご相談ください。

参考記事
Vietnam poised to be big post-pandemic winner
ベトナム外出禁止を大半で解除 23日から
なお、本文中の感染者数/死者数はChannel News Asiaウェブサイトを参照

ランキング記事

1

「選択と集中」の誤算㊤ 大いなる誤訳

2020年3月1日、「経営の神様」と呼ばれたジャック・ウェルチ氏が死去しました。 1990年代後半、経済危機の最中にあった日本で、ウェルチ氏の存在はひときわ強い影響力を持ち、その言葉は「格言」として広まっていきました。しかし、最も有名な「選択と集中」という言葉に関しては、ウェルチ氏の意思が「誤訳」されて伝わっていました――。 フロンティア・マネジメントの代表取締役である松岡真宏が、機関誌「FRONTIER EYES vol.23」(2018年11月)に掲載した記事を再掲いたします。

2

ASEAN トピック「コロナ鎖国」に強いアセアン諸国 食料・エネルギー自給率を比較

コロナウイルスの猛威により、世界中が「巣ごもり状態」、いわば世界中が「鎖国状態」という前代未聞の状況となった。中国では他の地域に先行して生産活動に復調の兆しとの知らせも聞こえるが、地球規模の影響は長期化する可能性が高く、体力の弱い国の財政破綻の可能性すらありうる。一方、近隣ASEAN諸国に目を向けると、食料やエネルギーの自給率の面では、案外強いことに改めて気づかされる。

3

村上春樹さんから学ぶ経営②~作品に潜む成功へのヒント~

前回予告いたしましたように、「村上春樹さんから学ぶ経営」を、シリーズでお届けして参ります。今回のテーマは、「差異化」です。まずは次の一文をお読みください。

4

理想のコーポレートガバナンスを考える上で重要な「エージェンシー理論」とは?

多くの企業が、株主の利益を守るため企業経営を監視し、統制するコーポレートガバナンスを推進しています。 コーポレートガバナンスを考えるうえで有効なのが、ハーバード大学のM・C・ジャンセン氏らの論文で有名な「エージェンシー理論」(プリンシパル=エージェンシー理論)です。 コーポレートガバナンスの目的を達成するためには、まずエージェンシー理論の視点に立ち、経営者と株主の利害関係をとらえなおす必要があります。 本記事では、エージェンシー理論の意味やポイントを解説します。

5

「7割経済」時代の事業再生 Withコロナ ㊤バブル後30年の変化

コロナと共に生きるWithコロナ時代は、「7割経済」と言われている。これは、多くの産業で「コロナ前の水準に業績が回復することはない」ことを意味する。これまでの事業再生は、「経営改革を伴う再生計画を実行すれば、いずれ売上高も回復していく」という基本前提に立っているが、その前提が大きく崩れる。Withコロナ時代はこれまでとは異なる手法、事業再生の「ニューノーマル」が求められる。

人気のキーワード