株式譲渡とは?

株式譲渡とは、株主が自身の有する株式を他者に譲渡する取引であり、会社法第127条を根拠としています。

「譲渡」と聞くと相手方に無償で譲る印象を受けますが、その場合は「贈与」になります。株式譲渡は、株式を他人に譲る対価として、一定の金銭を受け取る「売買」としての性質を持つと考えましょう。

したがって、株主が保有する株式の売買差益(キャピタルゲイン)を得るために株式を売却する取引や、経営者が自社の株式を丸ごと他社へ売却してM&Aスキームとして活用する取引など、株式を売却する取引全般を株式譲渡と呼びます。

ただ、一般的にビジネスの世界で株式譲渡という用語は、「株式を売却して会社の経営を承継させる手続き」という狭義で使われます。そのため、本稿では狭義の株式譲渡について解説します。

株式譲渡とM&Aの関係

まずは株式の性質からおさらいしておきましょう。

株式は、株式会社が資金調達(エクイティファイナンス)のために発行する資本であり、株主には出資の見返りとして、会社の経営に参加するための議決権が与えられます。

株式の保有率(持株比率)が高くなるほどに議決権も強力になっていき、重要な決定事項に意見したり、相手を子会社化して支配したりすることまで可能になります。例えば、持ち株比率が33.4%以上だと特別決議を単独で阻止することが可能です。

また、50.1%以上だと株主総会の普通決議や役員報酬の変更、剰余金の配当などの事柄を単独で可決できます。さらに66.7%以上だと株主総会の特別決議や取締役の解任、定款変更、合併や解散、など、会社経営に関する重要な事柄を単独で可決できるようになります。

すなわち、株式を他社に譲渡するというのは、会社の経営権をその会社に譲渡しているのと同義であり、これによりM&Aが成立するのです。

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株式譲渡は中小企業が多く採用する手法

譲渡の手続き自体は、売り手と買い手が合意した内容の株式譲渡契約書(SPA)を締結して、株式の対価の支払いが行われたら、株主名簿の書き換えを行うだけで完了します。

また、中小企業では筆頭株主と、経営に深く携わる取締役や社長がイコールで結ばれる場合が多いのが現状です。そのため、経営者としての引退を考えるとき、まずは株式を後継者に引き渡すことによって会社への影響力を弱め、事業承継を進めやすくするのが一般的に流れになります。

手続きが簡便であり、事業継承を進めやすいため、中小企業が執り行う「スモールM&A」の取引は、ほとんどが株式譲渡によって行われています。

関連記事:スモールM&A市場が活況!注目されている理由やメリット、課題などを解説

株式譲渡と事業譲渡の違い

株式譲渡とよく混同されるのが、「事業譲渡」という取引です。

事業譲渡とは、会社における一部の事業のみを売却するM&Aスキームのひとつです。株式譲渡と同様、買収する企業と売却する企業が、売却対象とその対価を取引する形式となります。

株式譲渡と事業譲渡は、そもそも契約の種類が異なり、多くの観点で違いがあります。両者の違いを確認できる主な観点は、以下の4つです。

・取引相手
・売買対象
・移転対象
・売り手側の主な目的

それぞれの詳細な内容は下記の表にまとめました。

株式譲渡 事業譲渡
取引相手 買い手:法人
売り手:株主(経営者)
買い手:法人
売り手:法人
売買対象 株式 事業の一部または全て
移転対象 会社の所有権・経営権・許認可・経営者の個人保証など 事業単位の有形もしくは無形財産・人材・組織など
売り手側の主な目的 事業承継や経営基盤強化 事業の選択と集中・不採算事業からの撤退

株式譲渡のメリット・デメリット

では、株式譲渡を活用したM&Aにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。それぞれ買い手側と売り手側に視点を分けて解説します。

買い手側のメリット

株式譲渡を受ける買い手側では、取引先や従業員との再契約が不要なため、登記変更申請などの手続きが必要なく、迅速な手続きが可能というメリットがあります。

さらに、売り手側が有していた会社独自のノウハウやブランド、優良顧客との販売ルートといった、「貸借対照表では測れない資産価値(のれん)」を得られます。

少ない労力で技術や顧客を獲得でき、これらの資産価値を活用すれば、事業を拡大し利益を増やせる可能性が高まるでしょう。

売り手側のメリット

株式譲渡の迅速な手続きは、株式の売り手側である株主から見ても、現金を早期に手に入れられるというメリットを生み出します。

また、売り手側の会社はこれまで通り存続し、社名や債権債務、取引先との契約関係は変化しないため、株主、従業員、顧客、取引先などのステークホルダーに大きな混乱を与えるおそれは少ないでしょう。

買い手側のデメリット

買い手側のデメリットは、譲り受けた会社の問題点や負の遺産も引き継いでしまう点にあります。

いざ取引が終了すると、実際は不要な経営資源や賠償義務が潜んでいたことに気づき、買収額(投資額)が回収できないばかりか、株価の下落を招く最悪の事態まで起こりかねません。

M&Aの前は必ず入念な事前調査や投資判断指標の計算を行い、効果的な取引となるか否かを見極めましょう。

関連記事:M&A を成功に導くデューデリジェンスとは?目的や種類を徹底解説

売り手側のデメリット

売り手側のデメリットとして代表的に挙げられるのが、税金の支払いです。株式の売却によって得られた対価は、有価証券の譲渡税という位置付けで課税対象となります。

譲渡税は、給与所得と事業所得を合算した金額とは別の区分で計算する申告分離課税を採用しており、事業で得た金額とは無関係に一定の税率が課されることとなります。

株式譲渡の売り手が個人か法人かで税金の額は異なるため、それぞれの計算方法についてご紹介します。

まず個人のケースでは、譲渡によって獲得した代金から、譲渡にかかった諸費用(取得費や譲渡費用)を引いて譲渡所得を算出します。

譲渡所得に「所得税15,315%+住民税5%=合計20,315%」の税率をかけた金額が税金の額となります。

法人のケースでは、先ほど同様に算出した譲渡所得に対し、法人税をかけます。法人税は会社によって異なりますが、約30%程度の税率がかけられた金額が税金の額となります。

株式譲渡で効果的にM&Aを成功させよう

株式譲渡は、株式会社における経営権の根拠となる株式を取引することで、M&Aに活用するというスキームでした。

他のM&Aスキームよりも比較的簡便に実施できる分、相手方企業の調査が十分でないと、思わぬトラブルを抱える可能性もあります。

中小企業同士の事業承継や、その他事業整理や事業拡大に利用するにせよ、株式譲渡は綿密な計画に基づいて行いましょう。

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