ソリューションビジネスの拡大

図表

図表

新たな収益軸として、ソリューションビジネスの拡大があげられる。添付の図は、地方銀行グループの役務利益上位と業務粗利益に占める役務利益の比率が上位の金融機関を示す。本稿では当社フロンティア・マネジメントが2007年の創業時より地方銀行と連携を深めてきた法人顧客向けソリューションビジネスに絞り、今後の地方銀行の事業展開の可能性・期待についてみていく。

もちろん表に示される役務利益は、全てが法人顧客から稼ぎ出されるものでは無いが、役務利益への各行の取組姿勢に関する参考としてご覧頂くものである。

法人顧客の課題解決を実践していくため、まず顧客自身が属する産業や事業そのものを把握する事が初動として必要である。

効率化が生んだ、顧客経営陣との距離

2014年9月金融機関を監督する金融庁の方針として、金融モニタリング基本方針に事業性評価に基づく融資などが盛り込まれた。金融機関は前述に加え、競って業務効率化・システム化を進めた結果、行員自身が顧客企業や企業が属する産業の調査・分析を自分の手で行う必要性が薄れた。それが長年経営者として企業経営に携わってきた対象企業の経営陣と経営戦略に関する議論をする事へのハードルを高くしてきた。

コンサルティング機能強化へのハードル

金融機関はコンサルティング機能強化に向け事業性評価ツールを作り、またノウハウ獲得の為に調査会社やコンサルティング会社、M&A専門会社などへ連携あるいは出向によるスキル獲得のための人材育成を急いだ。但し、長年事業を培ってきた経営者・経営企画担当者と渡り合うには、やはり知識の蓄積や実戦経験が必要となり相当な時間を要する。
全て一気に内製化するリスクは、専業対比でスピード感、議論の深耕、国内外に亘る情報力といった点で、厳しい経営者からは評価を得られず、以後の会話へ不安が残る状況を作り出す。まず内製の可能がある事業、例えば人事、ICT、地元主要産業を中心に据えた支援業務があげられる。一方、早期内製化が困難な業務は連携可能な第三者を活用するが、連携する各第三者の適正を見極める目利き力も必要となってくる。

再生事案への対応

町工場イメージ

これらは事業再生分野や事業承継分野において、重要な要素となってくる。昨今の再生事案では、本業による業績悪化、市場環境の早い変化への対応に苦慮し、競争に劣位してくる企業の改善案件が増加している。既存事業の収益性、将来性などを勘案し企業として自力再生が果たせるか、難しいケースではスポンサー型に移行する可能性も視野にいれた業務遂行が必要になってくる。
事業承継分野においても、親族や従業員への承継、第三者への譲渡のいずれであっても対象企業の事業性・将来性などを正確に把握する必要は生じる。その上で次世代への税務対策や経営体制構築、更には実は譲渡の方がいいのかなど練り上げていく事が必要となるだろう。

行内の組織をつなぐ

金融機関にとっては、法人ビジネスにおいてコンサルティング機能を発揮すれば、その後の事業承継、譲渡、再生後のビジネスマッチングといった複合的な手数料収入の期待ができる。

しかし、現状は行内の各組織、各分野の業務連携がなされてないように見受けられる。それを克服する為には、「本部フロント」「本部営業」などと言われる営業とプロダクトをつなぐ、またプロダクト同士をつなぎ顧客に最適解を提案する営業部隊の強化、拡充を図る必要がある。

海外分野の議論は避けられない

海外事案についても同様だ。地方にも強い成長意欲を持つ企業がある一方で、不採算・不正の疑念が持たれる現地法人を持つ企業など、様々なビジネス機会が存在している。

しかし、地銀が地元企業の海外戦略について、議論を避けてきたケースが散見されていた。
顧客企業の海外事業の実態を把握するとともに、結果として現地企業との連携、あるいは撤退・売却、新規事業としての海外展開、個別事案としても複合事案としても、対応を進める必要がある。日々多数の商品を扱い、多くの顧客を担当する営業店に対応を臨むのは酷であり、前述の本部所属の営業部隊に海外対応可能な人材を配置するのも重要である。

再生企業への出資

地方銀行イメージ

昨今は金融規制緩和が進み、所有不動産の有効活用や人材派遣業や地域商社への参加、Fintech企業への出資・連携による新しい金融分野参入、様々なビジネス機会へ地方銀行の参入が相次いでいる。
この規制緩和の中でも筆者として特に注目をしているのが再生企業や事業承継に課題を抱える企業への地方銀行グループによる出資である。
地元企業で「親族あるいは社員へ承継するにも経営者としてまだ不安がある」「第三者への譲渡を今すぐには考えたくない」などいった考えを持つ経営者は少なくない。
再生企業や再生手前で経営が厳しくなっている企業に対し、資本性資金を提供することでガバナンスを効かせ企業の回復に努めるというケースも想定される。
株式を所有することで、地方銀行として地元経済・地元企業の発展へ貢献できる可能性が広げられる規制緩和と捉えることができる。
2020年2月15日の日本経済新聞によると、既にいくつかの金融機関で再生企業や承継課題のある企業への出資を目的に新会社が立ち上げられ、また立ち上げられようとしている。

出資をする際の対象企業の発掘・見極め、出資後の経営体制構築と経営執行(ハンズオン支援)、もちろん株式を持ち続けるわけにいかないので、最終的には企業価値向上を果たし株式を売却していく事になる。
言葉で言うのは簡単であるが、金融機関としての総合力を最も問われるものと思われる。筆者は、現時点で全てを内製化する事は困難でありと見ている。逆に拘りすぎる事で顧客ニーズに迅速に対応しきれない事態を招きかねない。自前で可能な業務とそうでない業務の瞬時の判断、自前が困難な場合の連携先の活用箇所と目利き力なども必要となる。

まとめ

地方銀行に対しては、「総合金融機関」として地元を支える存在としての役割の期待が寄せられている。金利収入が見込めなくなった地方銀行にとって、法人顧客へのソリューション提供による役務収益、そして出資によるキャピタルゲインの獲得という事業ポートフォリオの構築が求められている。

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