グローバル化が進み、企業競争が激しさを増す現在では、ビジネス環境の変化に対応するため、様々な企業がオペレーションの効率化に取り組んでいます。自社の強みを活かし、組織構造を徹底的に変革しなければ、他社との競争に打ち勝つことはできません。

そこで「オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence)」という考え方が重要になります。この考え方は、現場のオペレーションを改革することから始まり、競合他社からの優位性を得るための方法論です。本記事ではオペレーショナル・エクセレンスを実現する方法を、具体例をもとに解説します。現場の業務過程に課題を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

オペレーショナル・エクセレンスとは?組織能力で競合他社に差をつける

「オペレーショナル・エクセレンス」とは、現場の業務遂行能力を磨き上げ、競合他社に差をつける考え方です。アメリカの著名なコンサルタントであるM・トレーシーとF・ウィアセーマが1995年、『ナンバーワン企業の法則』で提唱しました。革新的な製品やサービスを生み出す「プロダクト・イノベーション(Product Innovation)」や、顧客との親密な関係を築く「カスタマーインティマシー(Customer Intimacy)」と並び、優良企業の3大指標の1つとされています。

オペレーショナル・エクセレンスの実現で得られる3つのメリット

オペレーショナル・エクセレンスを実現することには、3つのメリットがあります。

まず業務フローだけでなく、業務フローを改善するプロセスそのものがマニュアル化され、常に良いオペレーションのために改善を重ねるカルチャーが現場の末端まで根付くとされています。

例えば、ファストフードチェーンのマクドナルドには、現場のちょっとした気づきを活かし、販売や接客のマニュアルを絶えず変化させるカルチャーが根付いています。一度根付いた文化は簡単には失われません。競合他社から模倣されやすいプロダクト・イノベーションと違い、簡単には真似できない貴重な財産となります。

次に「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期・スピード(Delivery)」の要素において、新しい改善策を柔軟に取り入れ、組織能力において競合他社に差をつけることができます。

また、生産、販売、企画・研究開発、サプライチェーンなどがシームレスに連携し、組織の各部門が高いパフォーマンスを発揮する「全体最適化」を図ることが可能になるとされています。個々の現場だけでなく、企業を構成するあらゆる組織の効率化に取り組み、現場全体の高効率と高生産性の実現を目指します。

オペレーショナル・エクセレンスでは、組織のケイパビリティ(総合的な能力)を最大限に生かすことが重要とされています。組織によって、得意なオペレーションには違いがあり、例えば、正確な仕事が得意な組織がある一方で、スピーディな作業に強い組織もあります。こうした組織の特性を最大限に生かし、「他社にはない組織能力」に昇華するのが、オペレーショナル・エクセレンスの特徴です。

オペレーショナル・エクセレンスを実行した3つの実践例

オペレーショナル・エクセレンスの事例を具体的に見てみましょう。トヨタ自動車の「トヨタ式生産方式(JIT)」をはじめ、3つのモデルが定着しています。

現場力で徹底的に無駄をなくす「トヨタ式生産方式(JIT)」

トヨタ自動車の「ジャストインタイム(JIT)」は、 「必要なものを、必要なときに必要な量だけ」作ることを目指す生産方式です。リードタイムが長くなる完全受注生産と違い、各生産工程が流れるように連動することで、徹底的にオペレーションの無駄をなくすことに成功しています。例えば、組立工程(後工程)で消費した部品を生産工程(前工程)に発注し、使った分だけ部品を納める「カンバン方式」が有名です。在庫と作りすぎの無駄をなくし、リードタイムを最小化する現場力を生かしたオペレーション改革といえるでしょう。

生産品質を徹底的に追求する「シックスシグマ」

「シックスシグマ」とは、アメリカの電子・通信機器メーカーだったモトローラ社が導入し、生産現場の品質改善とコストダウンを達成したオペレーション改革です。シックスシグマの「シグマ(σ)」とは、統計学における標準偏差(ばらつき)を意味します。6σの範囲での生産品質のばらつきは、100万個に欠陥が3~4個あるかないかといった極めて精密なものです。それだけ精密な生産品質を生み出すオペレーションを目指し、現場のリーダーがトップダウン式に業務プロセスの改善を進めます。

トヨタ式とシックスシグマを合体させた「リーンシックスシグマ」

「リーンシックスシグマ」とは、アメリカのジェネラル・エレクトリック社(GE)が導入したことで有名なフレームワークです。このフレームワークの特徴は、生産品質のばらつきをなくす従来のシックスシグマと、生産現場の連動により徹底してムダをなくすトヨタ生産方式を統合させた点にあります。現場のリーダーによるマネジメントでは手が届きにくい部分も、現場力を活かして品質改善に取り組めるため、多くの一流企業が生産現場に取り入れています。

DX時代のオペレーション改革とは?自動化・自律化に向けたオペレーションの再定義

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とは、スウェーデンのエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で、「デジタル技術を世の中に浸透させ、人々の生活をより豊かなものに変化させる」ことを意味します。IoT、AI、RPA、ロボティクス、ブロックチェーンなどのテクノロジーが実用段階に入ったDX時代では、従来とは異なるオペレーション改革が必要です。

「定型化・単純化」から「自動化・自律化」の時代へ

これまでのオペレーション改革では、生産現場の前工程と後工程が緊密に連携するカンバン方式や、現場の優れた管理者がリーダーシップを発揮するシックスシグマなど、人手によるオペレーションの単純化・定型化が中心でした。

しかし、IoTやAIなどの導入が製造業で急速に進み、人手のかからない自律的なオペレーションが増えつつあります。人的リソースを機械化する従来の手法だけでなく、デジタルテクノロジーに対応したオペレーション改革を行わなければ、DX時代で競合優位性を保つことは難しいでしょう。

また、生産現場の自律化によって現場の余剰人員が発生すれば、その人員を再配置し、新たな価値を創出してもらうためのフレームワークも求められます。従来のオペレーショナル・エクセレンスに頼り切るのではなく、自社の企業価値を再定義し、現場全体でイノベーションを起こすことが重要です。

オペレーショナル・エクセレンスで業務改革を

今回ご紹介したように、業務効率の向上に寄与するのがオペレーショナル・エクセレンスです。しかし、オペレーション以外にも改善すべき点は他にも存在します。その改善点はビジネスモデルや人材のキャパシティーかもしれません。企業を成長させるためには、様々な要因を複合的な視点で分析する必要もあるでしょう。

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