緊急事態宣言を受けて化粧品企業の4-6月業績は大幅に悪化

化粧品各社の2020年4-6月期決算は、緊急事態宣言の影響を大きく受け、売上高の減少幅は1-3月期より拡大して3割超にまで達した。
全世界的な出入国制限による免税店市場が消失したのに加え、各国で続いた外出自粛や店舗閉鎖の影響も大きかった。
海外売上比率が連結全体の6割弱にのぼる資生堂は四半期ベースで赤字転落となった。
日本市場でも百貨店やショッピングモールの休業が相次いだことにより、カウンセリング販売を主力とする高価格帯製品群は各社とも軒並み厳しい状況となった。

資生堂、花王、コーセー、高い固定費率が重荷に

営業利益を見ると、資生堂、花王(カネボウを傘下に持つ)、コーセーといった、従来型流通チャネル依存度の高い企業での減益幅が大きく、自社EC比率の高いファンケルやポーラオルビスとは営業利益率で大きく差がついた。

化粧品の中でも高価格帯製品は粗利率が高いために限界利益率も高い傾向にある。一方で特にカウンセリングチャネルを主力とする場合には、ブランドコスト、店舗コスト、美容部員人件費など販管費に占める固定費割合が高く、損益分岐点のハードルは高くなりがちである。

一方で通販比率と店舗販売比率がほぼ同規模となっているファンケルや、社外ビューティーディレクターへの委託販売比率の高いポーラオルビスにおいては、マーケティング費用や販売費の変動費化が進んでいる。化粧品需要減退の影響は同様に受けているものの、利益減少幅は6割程度に踏みとどまったといえる。
国内・海外共にWithコロナに対応した戦略シフトが不可避な現在の状況では、売上を維持するためには筆者の前稿

「新しい生活様式」(ニューノーマル) 化粧品業界に求められるDX対応

で指摘したように非接触チャネルの拡大とデジタルマーケティングの強化が欠かせない。
更に利益を確保するための戦略としては、販売費における固定費負担の軽減や、変動費シフト、特に店舗販売コストの見直しが大きな課題となるだろう。

販売チャネル再構築と注力店舗の選別強化が重要に

コロナ禍による対面販売機会の大幅な減少が始まる以前から、ECの拡大に押されて地方百貨店の閉店が相次ぐなどといったリアル店舗の衰退は、化粧品メーカーにとっても既に長期的な課題として認識されてきた。

資生堂はコロナ発生以前の2019年10月から、最上級のプレステージブランドと位置付けるクレ・ド・ポー ボーテについて自社オンラインでのブランドメンバーシッププログラムを開始した。従来の店舗ごとの顧客管理から統合することで店舗を跨いだ購買履歴の把握や、ダイレクトな製品情報、美容情報などの提供を行い、併せて専用オンラインブティックによる販売を解禁した。
米P&Gはグローバルの方針として、2019年秋に最上級プレステージブランドである「SK-Ⅱ」の契約見直しを販売店に対して通達した。ブランドにふさわしい立地やカウンターの設置、潜在顧客層などについてメーカーの規定水準に達しない店舗に対する商品配荷を遅くとも2021年中には中止することにより、契約店舗数を半減する方向だ。

併せて、コーセーが2019年12月に体験型コンセプトストア「メゾンコーセー(Maison KOSÉ)」を、資生堂が2020年7月に「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」を銀座に開設したように、自社が訴求するブランド価値を最適・最大限に消費者に体感してもらうための、ブランド旗艦店を開設する動きが始まっている。
このような店舗ではブランドのコンセプトや付加価値の発見や、様々な製品をダイレクトに試用することが可能でありながら、3密や感染防止が徹底されていることもあり、来店予約は好調なようである。非接触販売が拡大する中でもリアルな製品の体験が重要な購買動機となるハイプレステージ化粧品では、ユーザーの最終的な購買チャネルが店舗であるかECであるかに関わらず、一定の商圏毎にリアルな製品体験をユーザーに提供する場を維持することは必須である。これを担う店舗を確保し、ブランド価値向上のためのパートナーシップを強化することはメーカーにとっては今後も変わらず重要なマーケティング戦略といえる。

コロナ禍によって百貨店やショッピングモールの経営悪化が加速する中で、メーカーの店舗投資に対する見極めは更に厳しくなると見られる。地域旗艦店に準じる販売(+体験)チャネルへの美容部員やサンプル、イベント機会などの投資は進める一方で、来客数や売上などの効果が見合わない店舗へのコスト適正化の必要性は一層加速していくことになる。

デジタルと融合したリアル流通戦略の再構築を

筆者は前稿(https://frontier-eyes.online/newlifestyle_cosmetics/)で化粧品のマーケティングやプロモーションにおけるデジタルトランスフォーメーションの進化について解説をした。
ライブコマースやWebチャットによる情報やデジタルメイクなど疑似体験の提供はWithコロナの生活様式の中でますます重要性を増す。一方で、リアル店舗が不要となったり、あるいは店舗が単なる商品受け取りの場になったりするかというと、それはないと考えている。
特にスキンケア化粧品においては、香りやテクスチャーに対する感性評価が依然として重要な購買決定の要因の一つであり、実製品の比較確認を求めるユーザーが依然として多いためである。
メーカー側によるライブコマースやオンラインカウンセリングがより拡大するとしても、関心を持ったユーザーの追加相談やサンプル提供などの丁寧なフォロー体制を確保するためには、ユーザーの必要に応じて美容部員が対応できる地域の店舗の重要性は継続するだろう。

DXによる化粧品販売の進化は止まらない

化粧品販売のデジタルトランスフォーメーションの進化は止まらないだろう。Withコロナの中で従来型の「製品価格帯」と「カテゴリー」マトリックスによる流通チャネル選択という戦略を維持することは困難になった。
今後は各価格帯、各カテゴリーにおいて、ブランドや製品群ごとに、最適なデジタルとリアルのユーザーコミュニケーション配分を検討し、これに合わせた流通戦略を構築する必要がある。

旗艦店舗への集約と、デジタル対応が進む

既存取引先については各々のチャネルの中で店舗ごとの契約見直し(取引条件変更や縮小)が進む可能性が高い。一方で、各地域で旗艦となる店舗を中心として、化粧品メーカーと流通企業とのパートナーシップは、店頭のみならず各々のデジタル対応を含めて今後より高度化、強化する方向が予想される。

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