中国「夜経済」の現状は

中国「夜経済」の現状は

(出所:iimediaより1元=16.5円で計算 同ソースでは2020年は対前年比+5%となっているが、報告実数を適用)

夜経済(ナイトタイムエコノミー)とは、夜6時から翌朝6時までの時間帯の経済活動を指す。

中国の夜というと、違法KTV(カラオケTV→転じて接客を伴うカラオケ店)や風俗といった「地下経済」のイメージを持つ読者もいると思う。

1980年代以降、各地で違法性のある店舗の開業と、取り締まりの「いたちごっこ」が行われてきたのも事実である。

2010年以降の中国は、国を挙げて飲酒関連事業だけでなく、様々な娯楽、地域の文化施設との組み合わせで「夜経済」の活動を展開し、消費拡大につなげようとしている。

コロナ後だから、この議論が起こっているのではない。コロナ前から夜経済効果については、国を挙げた消費拡大の施策として討議が行われている。

中国の夜経済は、2016年から20年までに、年平均17.9%の成長率をみせている。

中国は、コロナ発生から通常経済活動再開までの期間は、日本に比較して極めて短期間であった。とはいえ、2020年社会消費小売総額は39.2兆元(約647兆円)で前年比マイナス3.9%であった。

そんな中でも、2020年も夜経済市場が拡大した事は、非常に特徴的である。 

夜経済1.0版

夜経済1.0版

夜経済の始まりは、広東省広州市に1984年設立されたネオン街の夜市だ。これが中国夜経済1.0版と言われている。

個人屋台からレストラン、バー等の飲食街に発展。ショッピングセンターが建設され、その中には、映画、劇場の施設を導入。更に博物館など文化施設へと拡がっていった。

各地の都市でも広州と同様に、活発な夜間の商業活動が進んできた。

都市部での居住人口集中度が高まるにつれ、都市中心部の一日の経済活動を重視し、地域の住民、就業者、そして旅行集客、消費に繋げる動きが活発化していると言える。

訪日客頼みだった日本の「夜経済」

日本では、コロナ前の2019年 国土交通省観光庁は、「ナイトタイムエコノミー推進に向けたナレッジ集」を発行している。また、各地で推進するために観光地域つくり法人(DMO)の登録制度を進めている。(DMO =Domestic Management/Marketing Organization)

DMOに期待される役割は法人間の典型と役割分担を行い効率的な観光地域つくりとなる。(出所:観光庁ホームページより

上記ナレッジ集では、ナイトタイムエコノミーを推進している例としてロンドン、ニューヨーク各経済規模は3.7兆円と2.1兆円と表している。

日本の場合は、夜経済を訪日外国人の消費拡大を当て込んだものと受け取れる。

残念ながら2020年以降状況は大きく変化しており、この戦略は見直さざるを得ない状況となっている。

政府の消費促進における夜経済の位置づけ

政府の消費促進における夜経済の位置づけ

2019年8月、国務院弁公庁は消費に関する2つの意見書を提示している。

  1. 「流通の発展加速化と、商業消費の促進を行う事に関する意見」(关于加快发展流通促进商业消费的意见)
  2. 「文化、旅行消費の潜在力を更に高めるための意見」(关于进一步激发文化和旅游消费潜力的意见)

1.は、20条の消費促進策と、それに伴う流通体制の発展を提示。この中に夜間のビジネスと市場の活性化が含まれている。

国家レベルの消費促進策のひとつが夜経済の拡大と言える。
                                 
要点は以下となる。

  • 主要商圏と特色あるショッピングストリートの開発
  • その為に文化、旅行、レジャー等のニーズと緊密な連動が必要
  • 営業時間の延長、深夜営業専用区、24時間営業店の充実
  • 更に「深夜食堂」等特色あるレストラン区の設置も検討
  • 夜の消費を促進する為に夜間交通整備、安全、環境整備の実施(発展改革委員会、工業情報化部、公安部、農業農村部、商務部、緊急部、税関総局、食品薬品監督管理局が担当部分の責任部署となる)

出典:中国中央人民政府HP

「深夜食堂」は、日本の同名TVドラマが中国でもリメイクされ、放送されている。

ドラマのタイトルを引用しているのかは不明だ。しかし、この記載により日本の夜消費についても興味、研究があったとも思われる。

この時点で各都市の試験区による夜経済整備状況が報告されていた一方で、政府の継続的な支持を求める声も出ていた。

夜経済の事業に資源投入し、その後新たな規制が出る事も恐れていた地域、企業があったためとみられる。

2.については、全体目標は文化、旅行領域における施設、消費環境及び伴うサービスの改善から消費拡大につなげる事にある。

11条になる意見のひとつに「休暇と夜経済(夜間経済)」があり、要点は以下となる。

  • 有給休暇の実施により、祝日以外の観光消費の拡大
  • 観光ピーク時の消費者動向把握により景勝地と周辺高速道路の接続及び管理強化
  • 安全確保等条件を満たす景勝地のナイトツアーサービスの奨励
  • 観光地でのディナー、ショッピング、舞台芸能、24時間書店の奨励
  • 2022年までに200か所以上の国家レベルのナイトタイム消費区の構築

出典:中国中央人民政府

これらの政策は2020年に本格化する予定であったが、中国でも20年上半期はコロナ禍により、延期を余儀なくされた。

再起動した夜経済2.0

再起動した夜経済2.0

コロナ禍を経て、中国の「夜経済」政策は再び動き始めた。

2021年初めに中国商業聯合会(中国商業全般管轄、民政部管理)が「2021年商業十大重点展望」を発表した。

毎年発表しているものであるが、第十四次五カ年計画初年であり、前年のコロナ後を受けての時期だけに注目された。各項目との連動する点があるが夜経済についても重点として提出している。

  • 現在、夜経済は都市経済の活力の重要な指標である
  • 夜経済は内需の拡大、市場繁栄、雇用創出等多くの効果がある。
  • 2.0版として単一業態のビジネスモデルから複数の業種業態との融合により各シーンでの販売拡大につなげ、都市間競争を進める

各都市で特徴ある夜経済モデル創りを進める事、これは都市部生活者だけでなく観光業として外部からの流入による消費拡大の為、各業態が連携し新たな消費シーンを創る事を求めている。

観光において夜間のコンサート、芸術活動以外に遊覧、博物館時間延長等文化活動の推奨でコト消費の場を増やし、これらと交通機関、外食産業、宿泊施設との連携(観る、遊ぶ、食べる、住む)により消費拡大を図っている。

ナイトツアー

中国大手旅行サイト「C-Trip」は2021年7月、旅行業+夜経済実績について「2021年上半期ツアー夜経済報告」を発表している。

夜の観光地入園料販売額は2020年上半期比469%、2019年同期比でも106%と大幅な増加を示している。

利用客は観光地周辺からが約40%、女性が53%、そして年代別では「90后」が34%、「80后」が29%、「00后」が12% で、合計75%を占める。

特に90后世代は、2019年比3倍、00后世代は同4.5倍と急増している。また親子での「夜遊び」も昨年比215%と大きな伸びを示している。 ロケーションは近場。若年層、親子連れ、女性の志向をつかむ事が必要ともいえる。

人気都市

C-TRIP社レポートではナイトツアー目的地トップ10は、洛陽、上海、深圳、 広州、西安、武漢、杭州、北京、三亜、成都であり、4月に新華社シンクタンク、テンセントWeShowが発表した「2020年中国夜経済に十大影響力ある都市」では、重慶、成都、長沙、青島、北京、西安、上海、深圳、広州、武漢となる。
                                        
両方から歴史的建造物、遺跡のライトアップ、3D映像組、夜景ショーアップ等中国伝統と新技術の組合せに飲食、購買行動を促している地域が多い印象を受ける。

夜経済と小企業活用

夜経済と小企業活用

2021年7月、前述の国家レベルの200か所の夜経済モデル区の建設につき、文化観光部から正式な通知が発布された。

各省(区、市)に8月13日を締め切りに、迅速に文化・娯楽・観光集積地を選定し、新たな消費モデルを構築するよう求めている。

また中国商業聯合会は夜経済において小店舗の活動に大きなポテンシャルがあると訴えている。

ここでの小店とは従業員10人前後、年商100万元以下(1,600万円)の小企業、またはEC営業額1,500万元(2.5億円)としており、地域社会に最終消費者へ供給する毛細血管的な役割と機能があるとしている。
       
消費者に近い業界である、外食産業について国家統計をみると、小規模企業の環境に変化がみられる。

2020年末で外食店舗総数は前年の712万から635万へと約11%の減少となった。

この外食産業は2021年1-6月で急激な回復を示しており、限度額以上の企業売上は2020年比+56.3%だが、外食全体の2020年同比は+48.6%となっており、小規模企業の回復は遅れている。 

国を挙げての夜経済活性化の背景

中国政府は、国内経済拡大に夜経済の再活性を掲げている。中国にが8,000万強の小企業があり、同従事者は約2億人と推測されている。

夜経済の振興は、コロナ後の回復が遅れている、小企業支援策の意味合いも強いと考えられる。

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