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「原神」のヒットが促す変革 中国miHoYo社製ゲーム
中国miHoYo(ミホヨ)社開発のスマホゲーム「原神」のヒットが続いている。2020年9月に公開され、直近の日本でのアンドロイドの課金ランキングでは1位、中国のiOSの課金ランキングでは6位となっている。高額な開発費による美麗なグラフィックに加え、任天堂「ゼルダの伝説」に似たオープンワールド型アクションRPGを、スマホで実現した意欲作であり、今後のゲーム開発のあり方を大きく変える力を秘めている。
「miHoYo」とは
▲miHoYoは2012年に正式に設立された
miHoYoは2011年に上海交通大学の学生が創業(正式な設立は12年)したゲーム会社で、正式名称は「上海米哈游网絡科技股份有限公司」。日本のアニメ・ゲーム文化に強く影響された作風が特徴で、「崩壊学園」(日本での公開は2015年)の大ヒットで、一躍有名になった。
企業スローガンは「TECH OTAKUS SAVE THE WORLD」(技術的なオタクが世界を救う)。
「原神」の衝撃
「原神」は、3DCGを二次元アニメ調に表現する「トゥーンレンダリング」を用いた美麗なグラフィックを実装している。プレーヤーが自由に世界を冒険できる「オープンワールド型アクションRPG」は、スマホゲームではあまり見られなかったジャンルだ。
当初は、任天堂「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」からの影響が指摘され、ネット上で批判もあった。
しかし、徐々にグラフィックのクオリティやゲーム性の高さが認められ、世界中のゲームファンから広く受け入れられている。
現在、スマホだけでなくマルチプラットフォーム化され、Windows版やPlayStation4版などもリリースされ、様々な環境でプレイできるようになった。
巨額の開発費
原神の開発に、miHoYo社は、開発費と初期マーケティング費用を併せて100億円強、500人規模の開発者を投じたと報じられている。
この開発規模は、現在日本企業の投じる標準的なスマホゲーム開発費用5~15億円からは文字通り、桁違いの規模となっている。
一方、グローバルでのヒットにより、「原神」は、2か月程度でグローバル売上400億円を達成した模様とも報じられている。miHoYo社の同タイトルにおける企業活動は、「大規模開発→グローバルでの大ヒット」という、コンソールゲーム(家庭用ゲーム機向けゲーム)の開発/回収スタイルに極めて類似した企業活動とみなし得る。
グローバルなヒットで、躍進する中国ゲーム
2018年以降、miHoYo社の「崩壊3rd」や、NetEase社の「荒野行動」など、美麗なグラフィックや新規ジャンルの投入により日本国内で中国製スマホゲームの躍進が見られてきたが、これを支えてきたのは、日本を含めたグローバルでのヒットを前提とした大規模開発リソースの投入と考えられる。
「原神」に投じられた開発リソースは、上記のようなタイトルの開発リソースを更に上回る規模と見られ、「原神」のクオリティにグローバルのスマホゲームファンが慣れてしまえば、他のスマホゲーム会社も、開発リソースを強化して対抗せざるを得ないものと考えられる。
低コスト「カードゲーム型」に走る日本勢
現状、日本のスマホゲーム会社は、従来からヒットしてきたカードゲーム型RPGに、新しい魅力的なキャラクタや有力IPを載せて、既存の自社ゲーム開発エンジンを使いまわして効率的に開発するという開発スタイルを採用するケースが多い。
確かに、ビジネス判断という観点では、リスクやコストを抑えた合理的な判断とも言えるだろう。
しかし、エンターテインメントの世界で、効率性に重きを置いてしまえば、新しい“驚き”を創出することは容易ではない。
アジアの優秀なエンジニア確保を
日本のスマホゲーム会社が新しい“驚き”を創出するには、miHoYo社のように、1タイトルに100億円を投じないまでも、海外(特にアジア)の優秀な若手エンジニアを確保することによりアクションゲームや新ジャンルにも対応する基礎ゲームエンジンの開発、強靭な資金力の確保、が有用となるだろう。
前者に関しては、フランスのコンソールゲーム会社UbiSoft社が上海、フィリピンにスタジオを開設し、積極的に海外開発リソースを確保しているケースが参考となる。
中国企業との共同開発、資本提携も
一部スマホゲーム会社が進めているが、今後は技術力を持つ中国開発企業との共同開発も増加する可能性が有るだろう。強力な資金力を持つ大手ゲーム会社との資本を含めた協力関係の構築や、合併を通じた企業体力の向上が考えられる。
「原神」のヒットを契機とした日本のスマホゲーム会社の、新しいスマホゲーム開発スタイルへの対応を注視していきたい。
参考▽
(miHoYo・中国語)
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