6Gとは?

6G(6th Generarion)とは、無線技術による「第6世代移動通信システム」の略称です。

移動通信システムは現在、個人向けモバイルマルチメディアに主眼を置いた4G(4th Generation)が主流であり、2020年に5G(5th Generation)の商業化がスタートしたばかりです。

新しい通信規格の標準化ステップは約10年毎に実施されているため、6Gは2029年には標準化、2030年代に商用化がスタートするとされています。

2020年現在、すでに世界各国では6Gを実現する上で必要な通信技術についての学術的な議論が行われています。

日本国内でも総務省が主導となり、NICT(情報通信研究機構)や株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)が研究開発を推進中です。

総務省内の有識者会議では、日本国際博覧会(大阪・関西万博)が開催される2025年までを「先行的取組フェーズ」として設定し、万博では6Gが生み出す未来の社会像を世界に示す狙いがあるとのことです。

6Gに求められる特徴的機能は?5Gとの違いについても

6Gに求められる特徴的機能は、すでにコンセプトイメージとしてまとめられています。

以下、6つの機能別に解説していきます。

通信の超高速・大容量化

超高速・大容量通信は5Gにも求められる機能要件ですが、6Gではさらなる進化が要求されています。

将来的にデータの流通量や扱うデータの規模は拡大していくと見込まれているため、純粋な通信速度の向上は大前提です。

具体的には、5G段階での通信速度は10Gbps(1秒に10ギガバイトの通信)超で、6Gではその10倍となる100Gbps超の通信速度が実現可能になると言われています。

超カバレッジ拡張

ここでのカバレッジとは、通信用の電波が届く範囲のことです。

6Gでは、地球上のあらゆる場所で無線通信が可能となる「超カバレッジ拡張」の実現が目標のひとつとされます。

現在の移動通信システムがカバーしていない空・海・宇宙などにカバレッジを広げることで、さらなる人やモノの活動環境が拡大するビジョンが期待できます。

超低消費電力・低コスト化

6Gの世界では、無線通信の基地局や通信を行う端末デバイスの数が爆発的に増加するため、通信に必要な消費電力の抑制や、端末自体の低コスト化が従来以上に求められます。

具体的イメージとしては、20年以上持続する超低消費電力バッテリーや、遠隔給電技術による常時ワイヤレス充電が可能な環境構築などが要件として挙げられます。

超低遅延

超低遅延とは、通信を行う二者間(E2E)に生じる通信のラグを可能な限り発生させないための技術です。

5Gでは、4Gの約10分の1となる1ミリ秒までを許容するラグとしており、6Gではより短い1ミリ秒未満の世界までラグを抑え込むことが求められます。

通信の遅延を極限まで減らすことで初めて、完全自動運転や遠隔医療のようなミッションクリティカル(通信障害が許されない)なシステムが運用可能となるのです。

超高信頼通信

ネットワークにおける信頼性とは、通信障害の発生のしにくさを表し、システムやサービスが使えなくなる頻度やその間隔を示す重要な指標です。

今後さらに増加するミッションクリティカルな産業にとって、超低遅延と同様に信頼性の担保は最優先となります。

つまり、災害や障害、セキュリティ事故などから瞬時に復旧する仕組みや、AIによる自律型ネットワークの構築などによって、5Gよりさらに高いレベルの超高信頼通信が求められるのです。

超多接続・センシング

システムやサービスに必要なデータ収集のため、今後は個人のウェアラブルデバイスや、実世界のセンシング情報を収集するIoTデバイスなどがさらに普及していくとみられます。

しかしインターネットに接続できるデバイスの数には上限があるため、6G時代でより高度化するIoT社会に対応するためには、同時接続可能数の上昇は欠かせません。

1キロ平方メートル範囲内の同時接続可能数で言うと、4Gの時点では約10万台、5Gになると100万台まで上昇し、さらに6Gでは1000万台という超多接続に耐えうる環境が実現する見通しです。

データ収集の手段という観点では、無線通信ネットワーク自体が電波を用いて、測位や物体検知などのセンシングを実施するという新たな技術の可能性も指摘されています。

6Gで何ができる?2030年代の世界観を考える

6Gは国民のライフスタイルや働き方、社会に何をもたらすのでしょうか?

2030年代に6Gが実用化されると仮定したとき、世界に起こり得る変化について3つの観点から解説していきます。

社会のサイバー化

次世代の社会は、現実と仮想の世界が高度に融合した「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」がベースになると言われています。

つまり、現実世界の情報がそのままデジタルの世界にも存在し、世界が2つあるかのような状態(デジタルツイン)を作り出すのです。

内閣府は、このサイバー化された社会を「Society 5.0」と定義しており、経済発展や社会的課題解決を推進するための目指すべき形として示しています。

6Gは、現実世界の膨大な情報を収集するための通信インフラとしての役割を担っており、先ほど解説した6つの技術的特徴はいずれも不可欠となります。

産業・サービスの無人化

6Gによって通信環境が変革すると、IoTを活用した無人工場や、AIが即座に道路状況を把握して車両を制御する完全自動運転など、人間の手が必要ない場面が産業・サービスで増えてきます。

現在もAIによって人間の仕事が代替される未来について議論されていますが、小売業を例に具体的なイメージをひとつ挙げてみましょう。

接客業務は、AIロボットが顧客の表情や要望をインプットし、適切な応対をすることで無人化が成立します。

続いて精算業務は、顧客の退店時に手にしていた商品をIoTセンシングで読み取り、システム上で料金を自動計算すれば、無人レジすら必要なくなります。

その後料金の支払いが電子決済にて自動で行われれば、無人店舗の完成です。

通信可能な情報の高度化

高度な情報というのは、現在黎明期にあるVR/ARのデータや、8Kを超える超高精細映像、立体ホログラム、さらには人間の五感などが挙げられます。

6Gでこうした情報が通信できるようになれば、実世界にいるときと同じ感覚でバーチャルの世界へアクセスできたり、実世界で遠く離れた場所に自分のホログラムを送り、現実同様のコミュニケーションを可能にするビジョンが見えてきます。

いずれは、バーチャルの自分がオフィスで働く高度なテレワークや、旅行やスポーツといった体感が重要となるエンターテイメントがリモートで楽しめる未来が来るかもしれません。

ムーンショット達成にも6Gが重要

総務省は2020年、「ムーンショット(※)」を達成するための研究開発を推進する方針を発表しました。
※moonshot:実現すれば破壊的イノベーションが期待される社会課題などを対象とした野心的な目標

ムーンショットには複数の目標が設定されますが、そのひとつに「人が身体、脳、空間、時間から解放された社会を実現する」という項目があります。

これを達成するための技術として、「サイバネティックアバター」という新しい構想が挙げられました。

サイバネティックアバターは、CPSを自由に動き回るためのアバター(分身)です。単なるインターネット上のアバターとは異なり、ロボットや3Dホログラムを利用することで、物理世界で自分のアバターを操作できる点が特徴となります。

さらに、本人の身体機能や知覚機能を拡張する遠隔パワードスーツのような役割も果たす想定です。

サイバネティックアバターは、6GをインフラとするSociety 5.0完成後から2050年までの実現が目標とされ、多様な個人が社会に参画可能になる未来のあり方に大きく貢献するでしょう。

ビジネスは6Gまで見据えたシナリオプランニングを

移動通信システムは、従来の人とインターネットをつなげる世界から、着実に社会課題を解決するための新しいインフラへと変化しつつあります。

同時に、AIが社会で活躍するようになれば、自ずと人間の存在意義が問われるようになります。

AIと共存するためには、人間はどういった価値を創造すべきかを考えなければならなりません。

一方で内閣府が断言するように、Society 5.0の根本にあるのは、あくまで「人間中心の社会」です。

あらゆる情報が社会に共有されれば、今までにない新たな価値を人間が生み出すチャンスとなります。

価値を創造して社会に提供するのはビジネスの大きな役目です。

そう遠くない6Gの未来を見据え、ビジネスのシナリオを構築していきましょう。

関連記事:「シナリオプランニングとは?未来の世界に順応するための思考法を解説」

<参考>
6Gに向けた国家戦略 5年後の大阪 関西万博までに世界に
報道発表資料 : (お知らせ)ドコモ、6Gに向けた技術コンセプト(ホワイトペーパー)公開 | お知らせ
Beyond 5G 推進戦略(骨子)
Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府
ムーンショット目標1 2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現- 科学技術・イノベーション

関連記事

株主を整理するスクイーズアウトとは?方法や最新事例も解説

M&Aや組織再編の過程で、100%子会社化を目的とする場合、対象会社に存在する既存の少数株主を「締め出したい」というニーズが生じることがあります。 少数株主の排除のことをスクイーズアウトと呼びますが、従来はその課税関係が複雑で使い勝手が悪いことが多々ありました。 しかし、2017年度の税制改正で大幅に内容が改正され、現在では多くの機会で機動的にスクイーズアウトが活用されるようになりました。今回は、そのスクイーズアウトについて、方法や最新事例について解説します。

村上春樹さんから経営を学ぶ⑭「世界のしくみに対して最終的な痛みを負っていない」

ネットの普及もあって最近は百家争鳴、様々な議論があふれています。民主的で自由な議論は素晴らしいことですが、その裏返しとして責任を伴わない意見が多くなります。為政者・経営者にとって「最終的な痛みを負わない」誘惑に負けず、論理的・長期的判断が重要だと感じます。それでは今月の文章です。

国際特許出願に、国家戦略はあるか 中韓が大幅増加

2020年の国際特許出願件数は27万5900件と、コロナ環境にもかかわらず過去最多を更新した。中国や韓国が大きく件数を伸ばす中、日本はどのような国家的な技術戦略をたてるべきか、考察した。

ランキング記事

1

「クララが立った!」を英訳せよ

「クララが立った!」の翻訳は容易ではない。『アルプスの少女ハイジ』を知らない国の人に、「Clara stood up !」や「克拉拉站着!」と直訳しても意味を成さない。言葉には様々な意味や記号が埋められている。それは、年代、国、民族、言語で大きく異なるからだ。

2

閉店相次ぐ銀座 コロナ禍で商業施設苦境に

東京の代表的な商業地である銀座で、店舗の閉店が増えつつある。メインストリートの「中央通り」から中に入った通りでは、閉店した店舗が目立ち、中央通りに立地するビルでも空室が散見される。

3

リカーリングビジネスはサブスクリプションとどう違う? 新しい収益モデルを解説

従来の商品やサービスを売ったら終わりの「買い切り型」モデルとは異なるビジネスモデルが目立ちます。 そのなかのひとつが「リカーリング」です。リカーリング型のビジネスには様々なメリットやデメリットがあります。 本記事では、リカーリングのメリット・デメリットや、サブスクリプションとの違いについて、具体例を挙げながら解説します。

4

内部統制報告制度「J-SOX法」とは? なぜできたのか?

企業における内部統制は、様々な業務が適正に行われ、組織が適切にコントロールされているかどうかをチェックすることを指しますが、その中でも事業年度ごとの財務報告の内部統制について定めているのが、J-SOX法(内部統制報告制度)と呼ばれる制度です。 J-SOX法は、事業年度ごとに公認会計士ないしは監査法人の監査を受けた内部統制報告書と有価証券報告書とともに内閣総理大臣へ提出することが義務付けられています。 また違反した場合は、金融商品取引法に「(責任者は)5年以下の懲役または500万円以下の罰金またはその両方(法人の場合は5億円以下の罰金)」と罰則が定められています。 しかし、結果的に企業の内部統制を強化し、不正会計などのリスクを減らすことができるため、J-SOX法は企業にとってもメリットのある制度と言えます。 この記事では、J-SOX法の解説のほか、ITシステムに関する「IT統制」についても解説しています。企業の監査部門や、内部統制に関する部署で働いている方は、ぜひ参考にしてください。

5

パワー半導体の世界シェアは?注目市場の今後の動向を解説

パワー半導体(パワートランジスタ)は、家電や電気自動車をはじめとして、さまざまなデバイスの電源管理に使われています。 多くの分野で需要が伸びており、長期的な成長が期待できるマーケットです。 日本の企業や大学発ベンチャーが競争力を保っている分野でもあり、「パワー半導体強国」として世界市場でのシェアを獲得するべく、積極的に研究開発を行っています。 本記事では、世界規模で成長をつづけるパワー半導体の市場規模や、今後の展望を解説します。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中