11月11日 W11で成果を挙げる日本製品と販売の変化

中国最大のECイベント「W11」(双11)はコロナ禍の2020年は、2回に分けて開かれ、GMV(流通取引総額)の最高記録を更新した。この記事では、恒例となったイベントの販売方式の変化、成果を挙げた日本製品と変化、W12など乱立するECイベントについて考察する。

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2020年におけるW11の結果

図表1

(出所:両企業広報より)
注:Tモールは、販売期間の差より2020年の前年比増は26%としている

W11は2009年にアリババの「Tモール」が開始した大規模な安売りセールだ。

それまで11月11日は非公式行事として「光棍節=単身の日」があり、プレゼント交換を行うなども見られた。

アリババはW11開始当時、ECプラットフォーム企業としてまだ中国でNO.1ではなかった。初回のセールの結果は27企業の参加で、5,200万元(8.3億円)の売上高に過ぎない。
それが、12回目となる今年は海外ブランド31,000、国内外含めると25万を超えるブランドが参加し、オーダー数は23.21億件、GMVは4,982億元(約8兆円)の規模にまで成長している。

中国第2位のECプラットフォームJD(京東集団)も、自社記録更新のGMV2,175億元(約3.5兆円)の結果をだした。

アリババグループが開始したイベントに同調し、JDがセールを始めたのが2011年。それ以外のチェーン店、プラットフォームも2012年頃よりW11のセールを開始。オンライン、オフライン問わずに、中国の流通業界全体を巻き込む一大イベントとなった。

追われる立場となったアリババは、毎年のように新しい施策を導入している。2013年から単に安値提供だけでなく予約販売を開始。2014年には越境EC、海外ブランドの拡充。2015年にはO2O(現在のOMO)でリアル店舗との取組と進みを強化。2016年以降は、オンライン、オフラインいずれにおいても欠かせないメガセールスとなっている。

2020年は海外渡航が大幅に制限されたため、W11では海南島自由貿易区での免税店は更に割引を行い、1日1億元(16億円)売上を記録、オンラインの輸入商も大幅増と高級ブランドへの消費意欲の維持が見られた。

▽参考記事
「爆買い」渡航減少 中国国内で増加する高級ブランド販売

ただし、ネット上で話題にする向きもあるのが、W11のGMVに占めるキャンセル率、返品率、キャンセル総額は非公開だが、GMV増加と共に増加傾向にあり、今後売れ残りの処分などの課題が顕在化する可能性もある。

2回もあったW11

コロナ禍からの経済回復のため、国内消費を増やす、各企業の販売機会を増やす意味もあり、2020年のW11は2回も行われている。
予約販売は10月21日から開始し、11月1-3日の「第一波」。そして例年の11月11日の「第二波」である。この結果がTモールの約8兆円のGMVとなり、アリババは昨年と同時期のGMV比較で前年比+26%と発表している。

続くEC比率の上昇 1-11月は25%超え

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▲出所 中国国家統計局

2019年11月までの累計で小売EC化率は20%を超えている。コロナで上昇した同比率は、感染が収束した後も下がる事なく、2020年のW11の結果を見ると1-11月累計で小売EC化率は1/4を超え、12月はさらに比率は上がると見ている。

W11で成功している日本企業

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トップシェアのTモール実績カテゴリ別では、輸入ブランドを本格的に取り扱い開始した2016年より、日本ブランドの多くが上位にランクインしている。

連続して上位に位置するのは、アパレル部門はユニクロ(男性、女性1位、インナー 2位)、時計眼鏡部門はカシオG-SHOCKが1位。電子美容機器部門(美顔器・美容ローラー・ボディケア美容器・脱毛器・スチーマー等)はヤーマン(1位)などがある。
GMV10億元(160億円)以上の企業は、ユニクロ、SK-Ⅱ、資生堂が入っている(注:30社が該当、11月1日から11日まで、アリババグループプラットフォームを含むアリペイ決済金額 アリババHPより)。

ユニクロ(2020年8月期)の中国事業の売上は4,559億円(前年比−9.3%)と減収だが、ECをみれば20%以上の増加であり、21年8月期計画でも2桁の増収を見込んでいる。
W11で年商の3-4%を挙げている事になるが、一方収益率を上げる為大型商戦で値引き販売をコントロールするとしており、W11での収益性が低い側面もうかがえる。

カシオの中国EC市場での取組とは

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カシオについては時計部門の1位となり、中国販売のオフライン/オンラインの最適比率45:55に設定。更なる2大EC企業との関係強化を図るとしている。同時に中国ビジネスモデルを新興国へ横展開としている。(同社2021年3月期第2四半期決算説明資料より)

カシオは1996年に同製品の中国での販売を開始。他消費財メーカー同様認知度は低かった。

早くからEC市場へ着目し、スポーツイベントへの取組や、SNSの活用など購買層の中心である35歳以下をターゲットにした情報発信を続け、「アナログ式が高級」という従来認識からの脱却に注力した。
日本のメディアでは、ほぼW11のみが取り上げられているが、EC企業は毎月のようにイベント・セールを行っており、こうしたイベントに参加頻度を上げ、知名度に繋げていった。
同時に中国市場に合わせた製品投入も行い、他大手同様ライブコマースの利用も行っている。

ヤーマンの躍進

ヤーマンは、2015年中国へ進出。Tモールとの取引を開始すると共に、雅萌(ヤーマン)ブランドとして有名俳優を同社広告に起用(市場認知度)、医学博士等有識者の説明(製品信頼性)、中国先行販売(中国消費者ニーズ)等により実績に結び付けている。
2020年8月に資生堂との合弁会社設立を発表。2021年より日本、中国で両社の美容機器技術と皮膚科学技術の融合で新たなスキンケアの提供を行うとし、更なる市場拡大にスピードを上げていく。

年商229億円(20年4月期)で1億元クラブ(16億円)入りしている5年連続部門1位のヤーマンはW11後、2021年4月期の計画上振れ修正を発表、株価上昇につながっている。

サプライヤーの多様化とライブコマース

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▲ヤーマンは中国語名「雅萌」が浸透している

経済回復が速い中国でも農村、中小企業の業績回復には時間が掛かり、中国国内の農村の特産物や中小企業の商品販売も増え、販売手法としてライブコマースによる消費者訴求が多く見られた。
商品を見せるだけでは認知度の低い商品、ブランドに消費者の関心は低く、作り手の製品説明で親近感と信頼を得る方式である。

また中国チェーンストア&フランチャイズ協会とデロイトの企業アンケート調査にて各小売業態の今年前半のコロナ影響が報告された。
対象企業の76%が年商10億元(160億円)以上で、2020年1-3月において,10%以上売上が減ったのは、スーパーでは全体の35%、SC(百貨店)80%、コンビニ75%、オンラインは33%だった。

4月後半からの急回復により、実体店の業績も回復傾向である。EC企業の小売業投資とも絡み、実態店のオンライン取組も進んでいる。2020年は化粧品等で実体店の店員がライブコマースを行い、3㌔1時間以内の発送という取組も見せた。販売店から始まる、O2Oである。

ニューブランド MRSIMBA  とは 

7月末の商務部発表では2020年1-6月には1,000万の場でライブコマースが行われ、活動している発信者は40万、視聴のべ人数は500億、紹介された商品数は2,000万であった。
2019年の同市場規模は4,338億元(約6.9兆円)で、2020年の同規模は1兆元(16兆円)可能との試算もある。(注 KPMG、アリババ)

2020年のW11での例として、MRSIMBA ブランドが挙げられる。御存知ない読者も多いと思う。これはライブ配信の有名人の辛巴氏(XinBa=シンバ)が2020年10月29日に立ち上げたばかりの化粧品ブランドで、早くも1億元クラブの仲間入りをした。

同氏はKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーの1人で、1990年生まれで消費の中心である「90后」(ジウリンホウ)、2000年代生まれの「00后」(リンリンホウ)に強い影響力を持つ。
TikTokに次ぐショート動画アプリ「快手」(Kwai)でライブコマースを行うスターである。

W11で「第一波」の取引額の50%を占めるのが「90后」と「00后」であり、00后のライブコマース消費は前年比389%に増加。従来ブランド以外、自身の好みを追求する世代は新しい商品、サービスを探している一例と言える。

ライブコマースの今後

ライブコマースでの売れ行きは、単に有名人による商品紹介で左右されるのではなく
彼らKOLがSNSを通じて、信頼される人物である事から、消費者は紹介された商品に興味を持ち購買につながる。

ところが、辛巴氏が販売した加工食品の成分問題がネット上で取り上げられ、11月末に代金約10億円を払い戻すと発表された。

品質証明をライブ配信したにも関わらずこの結果となり、広州市はライブ発信の説明を盲信しない様呼びかける事となっている。

中国では2000年前後より、中国食品メーカーの偽装事件が取り上げられ、安全保証体制が強化されてきた。今回の事件で、ライブコマース配信者への見方はより厳しくなるだろう。
消費者の信頼に足る行動と発言が、KOLに求められる。

一方メーカー側は、消費者への窓口であり、消費者の志向を代弁してくれるKOLとの取組は必要だけに今後も深い関係は続くとみられる。

メーカー自身がライブコマースの機会を増やす事も考えられるし、また新しいライブコマースの方法が生まれてくるのかもしれない。

「W11」の次は「W12」? 乱立するECイベント

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毎月の様にイベントがあるECプラットフォーム。W11の他にはJDの618(6月18日 創立記念日)とアリババのW12がある。

W12は、12月12日でアリババグループのC2CプラットフォームTaobao(淘宝網・タオバオ)が開始したもので、W11より後に2012年から行っている。
GMVは非公開の時期もあるが、2018年3,000億元(約4.8兆円)、2017年1,682億元(約2.7兆円)で、規模はW11より小さいが区別として、W11がグローバル、オンライン中心 。W12が中小企業、オフライン(実体店)中心としている。とはいえ、W12には上述のカシオ、ヤーマンも参加している。

JD、拼多多(Pinduoduo)等もW12を行っており、オンライン主体のW11よりもオフラインでの購買を促進し、W11での買いそびれ需要、クリスマスニーズに向けたイベントという位置付けになっていくと考える。

まとめ

W11などのECイベントは、オンオフ挙げて最大プロモーションの場として拡大している。内需拡大を図る中国政府の方針もあり、価格優遇などで更に売上拡大に向かわせるのではと考える。
W11で販売好調な企業は、中国市場でのターゲットの絞り込みに加え、中国での最適商品を投入。SNS、そしてライブコマースという、現地の若い世代にとどく新ブランドとプロモーションを積極的に実施している。

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