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活性化する北米コミック市場~日本の紙ベースの漫画が市場の牽引役に~
北米(米国+カナダ)のコミック市場が急伸している。日本の人気アニメのネット配信を背景に、原作の紙ベースのコミックにも人気が拡大している。韓国のコミックが力を増す中、日本のコミック今後も存在感を維持するには、グローバルで受け入れられるIPとの連携が求められる。
急伸する北米コミック市場
2021年の北米(米国+カナダ)のコミック市場は、ICv2とComichronによる共同市場調査によると、20億7,500万ドルとなり、2020年からは62%増と急伸している。2020年までは漸増という市場トレンドであったため(2012年から2020年にかけての年平均成長率は6%)、2021年の伸び率は大きなトレンドの変化を感じさせる数字となっている。
この背景には、クランチロールなどによる日本アニメのネット配信の浸透に伴う原作コミック人気が挙げられる。大手出版社のKadokawaの海外出版売上も、上述のトレンドと軌を一にしており、2021年度の海外出版売上は、前年同期比約80%増となっている。
北米における人気ジャンル
北米での日本アニメのジャンル分けに関しては、凡そ「少年ジャンプ系ビッグタイトル」、「異世界転生系」、「その他」の3ジャンルにカテゴライズされている。
日本アニメの中心的な視聴者層である若年層においては、日本以上に「異世界転生系」コンテンツの認知度が高い模様である。結果、「異世界転生系」コンテンツの原作コミックを多数抱えるKadokawaの海外出版売上が、市場平均を上回る好調な推移を示している要因と考えられる。
グローバルIPとの連携
今後とも北米コミック市場で、日本発のコミックが存在感を示し続けられるかについては、グローバルIPや著名シナリオライターとのコラボレーションによる更なる認知度の向上が有効と考えられる。
フロム・ソフトウェアのゲームタイトル「Elden Ring」が、同社社長の宮崎英高氏のゲーム開発力と、熱狂的な支持を受けるfドラマ「Game of Thrones」原作者(ジョージ.R.R.マーティン)の世界観構築との組み合わせにより、初月で1,000万本以上の販売実績を叩き出す大ヒットを記録した。
この例が示すように、グローバルで受容され得るIPや世界観を背景にしたコンテンツ開発は、コミックの世界でも有効と考えられ、当該コミックを原作としたアニメ化、映像化やゲーム化といったメディアミックス展開にもつながり易いと考えられる。
このような作品が、メディアミックス展開を通じてグローバルでヒットを確立すれば、認知度向上と有力IP/シナリオライター獲得との“ポジティブ・フィードバック・ループ”が形成され、グローバルコンテンツ開発における“成功の方程式”が成立することとなるだろう。
スピードの速い韓国勢の動き
リスクに関しては、経営スピードの速い韓国勢の動きと考えられる。韓国電子コミックの雄はKakaoとNaverだが、Naverは2021年夏に、「バットマン」などの原作コミックを抱える米DCコミックとの提携を発表、2022年春から当該提携に基づいた新作電子コミックを配信するなど、先述の動きを先取りするような活動を行っている。
Kakaoに関しては、日本市場での高い存在感を背景に、グローバル展開を積極的に進める方針を示しており、NaverのようなグローバルIPホルダーとの提携を行う可能性がある。
グローバルでの存在感を高める戦略を
日本の大手コミック関連会社には、先述のようなグローバルを視野に入れたコンテンツ開発、ならびにアニメ化やゲーム化といったメディアミックス展開を積極的に推進できるような体制整備を行うことにより、グローバルでの存在感を高める戦略の執行を期待したい。
その際には、M&Aを活用したメディアミックス機能の取り込みも有効な施策となり得ると考えられる。
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