後継者人材バンクとは?メリット・デメリットとともに解説

中小企業の経営者にとって、避けて通れないのが後継者問題です。中小企業庁の調査では、60歳以上の経営者のうち約半数は後継者不在というデータもあり、多くの経営者が後継者問題や事業承継について頭を悩ませているのが現状です。 このような状況のなかで利用者を増やしているのが、後継者を探している中小企業と、起業を検討している人材のマッチングを支援する「後継者人材バンク」です。今回は、後継者人材バンクについて、目的やメリット・デメリットなどを解説していきます。

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後継者人材バンクとは?

後継者人材バンクとは、後継者のいない中小企業・小規模事業者と、起業を考えている人材のマッチングをサポートする公的な事業承継支援サービスです。

日本の経済社会を支えている中小企業の後継者問題を解決すべく、2011年に「事業引継ぎ支援センター」が設置されました。

事業引継ぎ支援センターとは?

事業引継ぎ支援センターは、後継者のいない中小企業・小規模事業者の「事業引継ぎ」を支援するため、M&Aの相談や助言、研修やセミナー、マッチング支援などをおこなう公的機関です。

全国の各都道府県に設置されています。事業の円滑なバトンタッチをサポートし、次世代へスムーズに経営資源を承継することを目的としています。

事業引継ぎ支援センターの取り組みの一環として、2014年に立ち上げられたのが後継者人材バンクです。

後継者人材バンクの目的

中小企業庁が公表している「2019年度版中小企業白書」(※)によると、中小企業の経営者の平均年齢は、1995年が47歳であったのに対し、2018年は69歳となっており、世代交代が進まず経営者が高齢化していることが分かります。

2025年には、現時点で後継者が決まっていない中小企業経営者245万人のうち、約半数が後継者不在のまま引退を迎え、廃業を余儀なくされると言われています。【注1】

このように深刻化する後継者問題の解決策として設立されたのが後継者人材バンクです。後継者人材バンクの目的は、主に以下の3つです。

中小企業の廃業を減らす

後継者人材バンクの最大の目的は、後継者不在に悩む中小企業と起業家のマッチングを通して、後継者不在による中小企業の廃業件数を減らすことです。

起業家を支援する

後継者人材バンクでは、起業を検討する人へのセミナーや創業支援活動を通して、後継者の育成をおこなっています。

後継者人材バンクで育った後継者候補は、後継者を求める中小企業とマッチングし、次世代の経営者として事業を承継していくことになります。

円滑な事業承継をおこなう

後継者のいない経営者は、事業承継を検討していても、何から始めればいいのかすら分からない場合があります。

後継者人材バンクは、後継者とのマッチング準備から事業承継までを段階ごとにサポートすることで、中小企業の事業承継を円滑に進めることを一つの目的としています。

後継者人材バンクのメリット・デメリット

後継者人材バンクのメリット・デメリットを、中小企業側と起業家側に分けてご説明します。

中小企業にとってのメリット

事業を次世代に引き継ぐことができる

長年にわたって育ててきた事業・会社を次世代に残したいと考えるのは、多くの中小企業経営者に共通する願いです。

後継者不在の状況でも後継者人材バンクを活用することで、自らが育ててきた事業を意欲ある後継者に引き継ぐ道が拓けます。

従業員や取引先の期待に応えられる

中小企業が廃業すると従業員の雇用を維持できず、取引先との関係も終わってしまいます。

後継者人材バンクを活用して事業の継続を図ることができれば、このような心配はなくなり、従業員や取引先の期待に応えることができます。

中小企業にとってのデメリット

「想い」の承継がうまくいかない場合がある

経営者が大切にしてきた想いや信念を、外部から来る後継者に伝えるのは簡単なことではありません。

事業承継後の会社では、経営方針や雰囲気がガラリと変わる場合があります。それが悪い方向に出ると、従業員や顧客の離反につながる可能性があります。

起業家にとってのメリット

起業時のリスクを抑えられる

ゼロから会社を立ち上げるには、莫大なコスト・労力がかかります。

通常、金融機関などから開業資金を借り入れしますが、事業が計画どおりに進まなければ返済できず倒産してしまうリスクもあります。

その点、事業承継による起業であれば、施設・設備だけでなく顧客や取引先、従業員などの経営資源を引き継げるため、起業リスクを大幅に抑えられます。

目に見えない資産を引き継げる

事業承継によって引き継げるものは、経営資源だけではありません。

先代社長が培ってきた専門性やノウハウ、地域における知名度・ブランド力など、目に見えない資産も受け継ぐことができます。

先代からアドバイスをもらいながら起業できるのもメリットですし、事業承継後も苦難に直面したときは先代を頼ることができます。

起業家にとってのデメリット

経営の自由度が低くなる

ゼロから起業するのであれば自分の好きなように経営できますが、事業承継の場合はそうはいきません。

事業承継の場合はこれまでの歴史があるため、先代社長と経営方針などをすり合わせたうえで引き継ぐことになります。

その意味で、ゼロからの起業に比べると経営の自由度は低いと言えます。

個人保証を引き継ぐことがある

事業承継の対象企業が金融機関から融資を受けている場合、先代社長が保証人になっているケースが一般的です。

その場合、後継者が個人保証を引き継ぐことがあります。

M&Aで企業のさらなる発展を

近年、中小企業や小規模事業者が取引の対象となる「スモールM&A」が増加しています。

スモールM&Aのなかでも顕著なのが、後継者問題を解決するための事業承継型M&Aです。

単純に後継者を探すだけでなく、企業としてさらなる成長を遂げるために事業承継を利用する中小企業経営者も増えています。

当然、相手方企業の事業領域や将来性などにもよりますが、M&Aによってシナジー効果が生まれ、事業が大きな発展を遂げる事例も少なくありません。

事業承継型M&Aは、単なる後継ぎ探しの手法ではなく、中小企業が経営方針の転換を図るとともに、さらなる飛躍を遂げるための効果的な戦略だと言えるでしょう。

関連記事:スモールM&A市場が活況!注目されている理由やメリット、課題などを解説

Afterコロナを生き抜くための事業承継

新型コロナウイルスの流行により、事業承継やM&Aのマーケットも大きな影響を受けています。

M&A仲介をおこなう株式会社ストライクの調査では、新型コロナウイルスの感染拡大が事業承継やM&Aの延期などの悪影響を及ぼすと考える経営者が5割を超えることが分かりました。

一方で、7割近くの経営者が「中期的に事業承継やM&Aを再検討する」と回答していることから、コロナ禍に一定の収束が見られたら、再び事業承継やM&Aが活発になりそうな気配が伺えます。

後継者問題を抱える中小企業はAfterコロナに備え、今のうちから事業承継の戦略を練っておいたほうがいいでしょう。本記事でご紹介した後継者人材バンク(事業引継ぎ支援センター)に相談するだけでも、未来への大きな一歩につながるはずです。

【注1】経営者の世代交代

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