スクイーズアウトとは

スクイーズアウトとは、会社の少数株主を大株主が金銭などを支払って強制的に退出させ、大株主が対象会社を100%支配する行為のことをいいます。
英語の「Squeeze Out:締め出し」という言葉が由来です。

M&Aの局面においては、買収した対象会社に少数株主が存在する場合、買い手が100%対象会社を支配する場合に行います。

また組織再編の局面においては、親会社による完全子会社化を行う場合に実施します。

スクイーズアウトの方法とその手続き

スクイーズアウトは大きく分けて、➀金銭対価合併、➁金銭対価株式交換、➂全部取得条項付種類株式、➃株式併合、そして➄特別支配株主による株式の売渡請求といった手法があります。

従来は手続きの煩雑な➂全部取得条項付種類株式の方法が最も利用されていました。
しかし、2017年度の税制改正により各種の方法が柔軟的となった結果、現在においてはより手続きが簡便な➃株式併合や➄特別支配株主による株式の売渡請求が多く利用されるようになったようです。

金銭対価合併

金銭対価合併は、対象会社の発行済株式の3分の2以上を有する大株主が、その他の株主に対して金銭を交付してスクイーズアウトを行い、大株主と対象会社を合併させる手法です。

金銭対価株式交換

金銭対価株式交換は、対象会社の発行済株式の3分の2以上を有する大株主が、その他の株主に対して金銭を交付してスクイーズアウトを行い、完全子会社化する手法です。

スクイーズアウト後、大株主との合併によって対象会社が消滅する金銭対価合併に対して、金銭対価株式交換の場合、完全子会社として対象会社が残存する点が相違点といえます。

全部取得条項付種類株式

全部取得条項付種類株式によるスクイーズアウトの方法は、他の方法が税務上の問題点が多かったことから2017年度税制改正前は頻繁に利用されていた方法でした。

しかし、技術的に煩雑なため、他の方法が容易に利用できるようになった現在においてはあまり活用されていません。

方法としては、以下になります。

  1. 株主総会の特別決議で対象会社の発行する普通株式全体を全部取得条項付種類株式(株主総会決議によりその全部を取得できる種類株式)に変更
  2. 即時にその種類株式の取得決議の開催
  3. その対価として異なる種類の株式(例えば普通株式)を発行

発行に際して、従来の少数株主に対しては端数しか割り当てられない交換比率とすることで、結果的に大株主が対象会社の株式の100%を取得することとなります。

株式併合

株式併合によるスクイーズアウトは、現在最も多く活用されている手法です。

大株主の保有する株式を1株に併合し、少数株主の保有分を端数としてしまうことで、結果的に大株主が対象会社の株式の100%を取得できます。

2015年の会社法改正により、端数が生じる株式併合について反対株主の買取請求や価格決定の申立てが認められることとなり、各種開示制度が創設されたことも踏まえ急速に普及することとなりました。

特別支配株主による株式の売渡請求

特別支配株主による株式の売渡請求は、2015年の会社法改正により導入された制度です。

この制度は対象会社の90%以上を保有する株主が他の株主に対して強制的に株式の売渡を請求することを認めています。。
売渡請求については対象会社の承認を要するものの、対象会社の株主総会決議は不要です。

また、取締役会の承認で足りるため、手法として簡便であることから今後の普及が想定されます。

この方法が多く利用されるは株式公開買い付け(TOB)を経て90%以上の株式を取得した大株主が100%取得を目指して行われるケースです。

スクイーズアウトを利用した最新事例

M&Aや組織再編の過程でスクイーズアウトが行われた事例は数多く存在します。
今回はその中でも最新(2021年4月現在)の事例を紹介します。

複雑なLINEとZホールディングスの統合プロセスの中で行われた株式併合による事例

2021年3月1日付けで経営統合されたYahoo!を運営するZホールディングスとLINEの経営統合の過程でもスクイーズアウトの手法が活用されました。

2020年9月までに行われたZホールディングスの親会社であるソフトバンクと、LINEの親会社である韓国ネイバーによるLINE株のTOB(株式公開買い付け)は、そのTOB価格に納得のいかない株主が存在していたため、目的としていた全株取得を達成することができませんでした。

そこでLINEは2020年12月に臨時株主総会を開催し、約2,900万株を1株に併合。
株式総数を32株とする株式併合を行い、少数株主の有する株式を1株未満に変え、スクイーズアウトを行いました。

LINEとZホールディングスの経営統合プロセスは極めて複雑ですが、そのプロセスにおいて株式併合によるスクイーズアウトが大きく寄与したことは言うまでもありません。

内部管理体制不備を指摘され、上場維持が困難となった日本フォームサービスの同族経営を維持するために行われたNFSによる完全子会社化の事例

JASDAQ(スタンダード)に上場していた日本フォームサービスに対するNFS社(東京都江東区)のTOBに際し、買い取り不能分を株式併合によりスクイーズアウトした件も最新の事例としてご紹介します。

日本フォームサービスは取締役会や監査役会の虚偽開催や会計操作などが発覚し、東京証券取引所は2019年8月に同社を特設注意銘柄に指定していました。
2021年2月の判定で内部管理体制に改善が見られない場合、上場廃止となる予定でした。

そこで日本フォームサービスは実質的に親族が経営するNFSによるTOBを受けることで非公開化し、一連の不祥事案に幕引きを図ったとみられています。

TOB実施後、日本フォームサービスは36,215株を1株にする株式併合を行い、少数株主の締め出し、NFS社の完全子会社となることで上場廃止となりました。

その他のスクイーズアウトの事例

上記の他、国内においても多くのスクイーズアウトの事例があります。

音響機器大手のオアイオニアの経営不振救済のためにプライベートエクイティファンド(PEファンド)による完全子会社化の過程で行われたスクイーズアウト。

また、経営陣による不適切会計などが問題となった雪国まいたけに対するPEファンドによる買収、そしてスクイーズアウトの案件。

加えて、日本生命が三井生命(現大樹生命)を買収する際に、買い集められなかった三井生命株式について、優先株式の転換や株式売渡請求によりスクイーズアウトを行い、完全子会社化した事例などがあります。

まとめ

M&Aや事業再編の過程で100%子会社化を目的とする場合、どうしてもTOBや交渉では少数株主持分の譲渡を受けることが難しいケースがあります。

そのような場合、強制的に少数株主の持ち分を取得するスクイーズアウトの手法を適切に活用して完全子会社化を図ることで、機動的なM&Aや事業再編がなされることとなるでしょう。

関連記事

村上春樹さんから経営を学ぶ⑭「世界のしくみに対して最終的な痛みを負っていない」

ネットの普及もあって最近は百家争鳴、様々な議論があふれています。民主的で自由な議論は素晴らしいことですが、その裏返しとして責任を伴わない意見が多くなります。為政者・経営者にとって「最終的な痛みを負わない」誘惑に負けず、論理的・長期的判断が重要だと感じます。それでは今月の文章です。

国際特許出願に、国家戦略はあるか 中韓が大幅増加

2020年の国際特許出願件数は27万5900件と、コロナ環境にもかかわらず過去最多を更新した。中国や韓国が大きく件数を伸ばす中、日本はどのような国家的な技術戦略をたてるべきか、考察した。

業務管理プロセスの手法、BPMとは?言葉の意味から推進ステップ、成功ノウハウまでを解説

BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)は、業務プロセスを可視化し、PDCAサイクルを回しながら業務の成果を上げていく業務管理手法の1つです。 1980年代に誕生し、90年代の隆盛期を経て、今日、さまざまなビジネス現場に浸透しています。 そこで本記事では、BPMの言葉の意味や目的、推進ステップについて説明していきます。BPMを成功させるためのコツについても説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。

ランキング記事

1

「クララが立った!」を英訳せよ

「クララが立った!」の翻訳は容易ではない。『アルプスの少女ハイジ』を知らない国の人に、「Clara stood up !」や「克拉拉站着!」と直訳しても意味を成さない。言葉には様々な意味や記号が埋められている。それは、年代、国、民族、言語で大きく異なるからだ。

2

閉店相次ぐ銀座 コロナ禍で商業施設苦境に

東京の代表的な商業地である銀座で、店舗の閉店が増えつつある。メインストリートの「中央通り」から中に入った通りでは、閉店した店舗が目立ち、中央通りに立地するビルでも空室が散見される。

3

リカーリングビジネスはサブスクリプションとどう違う? 新しい収益モデルを解説

従来の商品やサービスを売ったら終わりの「買い切り型」モデルとは異なるビジネスモデルが目立ちます。 そのなかのひとつが「リカーリング」です。リカーリング型のビジネスには様々なメリットやデメリットがあります。 本記事では、リカーリングのメリット・デメリットや、サブスクリプションとの違いについて、具体例を挙げながら解説します。

4

内部統制報告制度「J-SOX法」とは? なぜできたのか?

企業における内部統制は、様々な業務が適正に行われ、組織が適切にコントロールされているかどうかをチェックすることを指しますが、その中でも事業年度ごとの財務報告の内部統制について定めているのが、J-SOX法(内部統制報告制度)と呼ばれる制度です。 J-SOX法は、事業年度ごとに公認会計士ないしは監査法人の監査を受けた内部統制報告書と有価証券報告書とともに内閣総理大臣へ提出することが義務付けられています。 また違反した場合は、金融商品取引法に「(責任者は)5年以下の懲役または500万円以下の罰金またはその両方(法人の場合は5億円以下の罰金)」と罰則が定められています。 しかし、結果的に企業の内部統制を強化し、不正会計などのリスクを減らすことができるため、J-SOX法は企業にとってもメリットのある制度と言えます。 この記事では、J-SOX法の解説のほか、ITシステムに関する「IT統制」についても解説しています。企業の監査部門や、内部統制に関する部署で働いている方は、ぜひ参考にしてください。

5

パワー半導体の世界シェアは?注目市場の今後の動向を解説

パワー半導体(パワートランジスタ)は、家電や電気自動車をはじめとして、さまざまなデバイスの電源管理に使われています。 多くの分野で需要が伸びており、長期的な成長が期待できるマーケットです。 日本の企業や大学発ベンチャーが競争力を保っている分野でもあり、「パワー半導体強国」として世界市場でのシェアを獲得するべく、積極的に研究開発を行っています。 本記事では、世界規模で成長をつづけるパワー半導体の市場規模や、今後の展望を解説します。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中