

2021-10-27
ゲーム規制で日本市場へ 攻勢強める中国ゲーム会社
いまや世界有数のゲーム大国となった中国で、未成年者(18歳未満)へのゲーム規制が行われた。自国での事業が大幅に制限される中、中国のゲーム会社は日本市場への攻勢を強めようとしている。既に始まっている人材の引き抜きや、制作会社への出資が加速する可能性もある。

シニア・アナリスト、産業調査部
1993年に三井信託銀行㈱(現、三井住友信託銀行㈱)に入行。八重洲口支店を経て、受託資産運用部にてバイサイド・アナリスト業務を担当。1999年に興銀証券㈱(現、みずほ証券㈱)、2000年に日興ソロモン・スミスバーニー証券会社(現、シティグループ証券)に入社し、セルサイド・アナリスト業務を担当。2003年から2005年にマイクロソフト㈱(現、日本マイクロソフト㈱)に在籍し、2005年日興シティグループ証券㈱(現、シティグループ証券)にセルサイド・アナリストとして復職。同社に2014年まで勤務し、フィールズ㈱を経て、2016年にフロンティア・マネジメント㈱に入社し、シニア・アナリストに就任。
詳しいプロフィール >>ゲーム大国のゲーム規制
2021年8月末、中国のメディア等を管轄する国家新聞出版署は、「管理の一層の厳格化による未成年者のオンラインゲーム依存を適切に防止する通知」を発出。未成年者のゲームプレイ時間を大幅に制限する新たな規制を制定した。
ゲーム会社は、18歳未満の未成年者に対して、オンラインゲームの提供を、金、土、日曜日と法定休日に限定。時間に関しても、午後8時~9時までの1時間に制限した。
それ以外の時間のゲーム提供が禁止されたほか、ユーザーアカウントの実名登録と登録要求の厳格な執行が義務付けられた。この新しい規制により、中国のゲーム会社は、未成年者からの課金収入の大幅な減少が不可避となる。
規制が、海外進出の契機に
中国のゲーム会社は規制強化、課金収入の減少への対抗策として、国内市場への依存を脱却し、グローバル展開によって他国からの収入増を目指すこととなるだろう。
特に、市場規模がそれなりに大きく、「荒野行動」や「原神」といったタイトルが大きな課金収入を生み出している、日本市場が注目されている。
日本市場は、すでに中国製ゲームへの忌避感は、さほど大きくは見られない。また、相対的にコンテンツ提供に関する規制や、ユーザー利用時間等の規制も緩慢と目される。
日本市場は、新しい規制環境のもと、中国ゲーム会社の最有力開拓市場と位置付けられる可能性もある。
すでに動き始めたゲームの巨人
既に、テンセントやネットイース、バイトダンス(動画投稿サイトTikTokを運営)は、日本での活動を強化している。
テンセントは、2020年1月に元カプコンのクリエーターにより設立された独立系ゲームデベロッパー「プラチナゲームス」(ベヨネッタなど)へ出資、2020年5月には上場ゲーム会社マーベラスへ出資した(後者では、約20%の筆頭株主に)。
人材引き抜きや出資も拍車がかかる
ネットイースに関しては、「龍が如く」制作者として知られる名越稔洋氏(セガを退社)を獲得交渉中とも報じられている。日本のアニメ業界への出資にも意欲的と見られるなど、着実な浸透を図っているものと見られる。
バイトダンスに関しても、高給を提示してゲーム業界の有力な人材を囲い込むべく動いている模様である。このような大手中国エンタメ企業は、今回の新しい規制を受けても、大きくは方針を変化させないものと見られる。
日本市場重視の姿勢をとるならば、より日本製有力IPやゲーム関連人材の獲得意欲、ないしは有力ゲーム会社への出資攻勢に拍車がかかる可能性があるだろう。
中堅企業も後に続く可能性
むしろ、注目されるのは、中国の中堅ゲーム会社と考えられる。中堅ゲーム会社は、相対的に中国国内の依存度が高いと考えられ、中国での新しい規制環境下、早急なグローバル展開に舵を切る必要が生じる可能性がある。
既存タイトルの日本展開を行うために、タイトル自体のローカライズと、日本でのマーケティングリソースの投入強化が必要となり、日本のゲーム会社との(資本も含めた)提携関係が生み出される可能性があるだろう。
日中企業のアライアンスに期待
このような期に、新しいゲーム性の具備に悩む日本のスマホゲーム会社が、中国ゲーム会社の開発力を活かす形でアライアンスを組成して、日本のスマホゲーム業界に新風を巻き起こすことを期待したい。
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ゲーム大国のゲーム規制2021年8月末、中国のメディア等を管轄する国家新聞出版署は、「管理の一層の厳格化による未成年者のオンラインゲーム依存を適切に防止する通知」を発出。未成年者のゲームプレイ時間を大幅に制限する新たな規制を制定した。 ゲーム会社は、18歳未満の未成年者に対して、オンラインゲームの提供を、金、土、日曜日と法定休日に限定。時間に関しても、午後8時~9時までの1時間に制限した。 それ以外の時間のゲーム提供が禁止されたほか、ユーザーアカウントの実名登録と登録要求の厳格な執行が義務付けられた。この新しい規制により、中国のゲーム会社は、未成年者からの課金収入の大幅な減少が不可避となる。 規制が、海外進出の契機に中国のゲーム会社は規制強化、課金収入の減少への対抗策として、国内市場への依存を脱却し、グローバル展開によって他国からの収入増を目指すこととなるだろう。 特に、市場規模がそれなりに大きく、「荒野行動」や「原神」といったタイトルが大きな課金収入を生み出している、日本市場が注目されている。 日本市場は、すでに中国製ゲームへの忌避感は、さほど大きくは見られない。また、相対的にコンテンツ提供に関する規制や、ユーザー利用時間等の規制も緩慢と目される。 日本市場は、新しい規制環境のもと、中国ゲーム会社の最有力開拓市場と位置付けられる可能性もある。 すでに動き始めたゲームの巨人既に、テンセントやネットイース、バイトダンス(動画投稿サイトTikTokを運営)は、日本での活動を強化している。 テンセントは、2020年1月に元カプコンのクリエーターにより設立された独立系ゲームデベロッパー「プラチナゲームス」(ベヨネッタなど)へ出資、2020年5月には上場ゲーム会社マーベラスへ出資した(後者では、約20%の筆頭株主に)。 人材引き抜きや出資も拍車がかかるネットイースに関しては、「龍が如く」制作者として知られる名越稔洋氏(セガを退社)を獲得交渉中とも報じられている。日本のアニメ業界への出資にも意欲的と見られるなど、着実な浸透を図っているものと見られる。 バイトダンスに関しても、高給を提示してゲーム業界の有力な人材を囲い込むべく動いている模様である。このような大手中国エンタメ企業は、今回の新しい規制を受けても、大きくは方針を変化させないものと見られる。 日本市場重視の姿勢をとるならば、より日本製有力IPやゲーム関連人材の獲得意欲、ないしは有力ゲーム会社への出資攻勢に拍車がかかる可能性があるだろう。 中堅企業も後に続く可能性むしろ、注目されるのは、中国の中堅ゲーム会社と考えられる。中堅ゲーム会社は、相対的に中国国内の依存度が高いと考えられ、中国での新しい規制環境下、早急なグローバル展開に舵を切る必要が生じる可能性がある。 既存タイトルの日本展開を行うために、タイトル自体のローカライズと、日本でのマーケティングリソースの投入強化が必要となり、日本のゲーム会社との(資本も含めた)提携関係が生み出される可能性があるだろう。 日中企業のアライアンスに期待このような期に、新しいゲーム性の具備に悩む日本のスマホゲーム会社が、中国ゲーム会社の開発力を活かす形でアライアンスを組成して、日本のスマホゲーム業界に新風を巻き起こすことを期待したい。 |
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