オーガニックグロースとは?企業が成長するために頼るべきは自社か他社かがポイント

オーガニックグロース(Organic growth)とは、自社内に蓄積された商品やサービス、人材、技術など、既存事業の内部資源をいかして収益を拡大させる戦略です。また、オーガニックグロースと同時に押さえておきたいのが、反対語にあたるM&Aグロースです。

M&Aグロースとは、企業の合併や買収によって、他社の新しい事業や製品、サービスを取り込んで収益を拡大させる戦略です。ノン・オーガニックグロースとも呼ばれます。つまり、企業が成長するにあたって、自助努力だけを頼りにするか、他社の力を借りるかの2通りがあるのです。

企業はこの戦略からいずれかひとつを選ぶとは限りません。現在は国内の市場が縮小傾向にあり、オーガニックグロースのみで成長を描くことが困難になりつつあります。したがって、はじめはオーガニックグロースを採用し、さらなる発展を目指す場合にM&Aグロースへ移行する企業は年々増えています。

参考:M&Aの現状|中小企業庁

スタートアップ企業はオーガニックグロースが中心

企業の成長戦略は、オーガニックグロースとM&Aグロースのいずれかを状況に応じて採用します。しかし一部例外もあり、起業したばかりのスタートアップ企業の多くはオーガニックグロース中心になってしまいます。

スタートアップ企業は、認知度や信用力が低いのが当たり前のため、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどから余程な額の資金調達ができない限り、はじめは資本が十分でない場合がほとんどです。つまり、スタートアップ企業が資金調達ラウンドを経て、オーガニックグロースによって事業が軌道に乗ってからでないと、M&Aグロースを採用するのは困難といえるでしょう。

スタートアップの段階で成長するには、高速でビジネスの仮説と検証を繰り返すリーンスタートアップや、複数の小さい事業を立ち上げ、より収益拡大が期待できる事業に時間と資源を集中投入する方法があります。

関連記事:エンジェル投資家とは? 資金調達のメリット・デメリットとベンチャーキャピタルとの違い
関連記事:資金調達ラウンドとは?基礎知識やシード期における資金調達のポイントを解説
関連記事:リーンスタートアップとは?メリットやデメリット、事例まで解説

オーガニックグロースのメリット

オーガニックグロースを採用すると、マイペースで安全な成長を目指せるのがメリットとなります。

その根拠となる、次の2つの特徴について見ていきましょう。

リスクを抑えながらの成長が可能

自社のみで成長しようとしたとき、当然M&Aを実施することはありません。

M&Aを実施しないということは、M&Aに必要な資金を集めるために多額の借入をする資金面のリスクはなくなります。

また、M&Aによってシナジー(相乗作用)が得られたり、買収後の統合プロセス(PMI)が成功する確証はありません。

デューデリジェンスを十分に行っても、買収後に想定外のトラブルが起こるリスクがあります。

つまり、オーガニックグロースを採用すれば、こうしたリスクを抑えながら成長を図ることができるのです。

関連記事:M&Aを成功に導くデューデリジェンスとは?目的や種類を徹底解説
関連記事:ビジネスで注目される「シナジー効果」とは?種類や手法を分かりやすく解説
関連記事:PMIはM&Aの成否を握るプロセス

社内の一貫性を保ちながら事業を営める

もしM&Aグロースを採用した場合、本来それぞれのアイデンティティだった会社の規則や文化が、M&Aのたびに社内で混ざり合うことになります。

別々の環境で仕事をしていた従業員同士が突然一緒になると、意見や価値観が合わずに衝突してしまうかもしれません。そうなると、従業員のモチベーションダウンや、最悪の場合は優秀な人材の退職がリスクとなります。

一方でオーガニックグロースを採用すれば、自社の経営理念や社内の規則・風土、事業の方向性が外部の要因でブレることがありません。環境の急速な変化を回避できるため、マイペースで一貫性のある経営が続けられます。

オーガニックグロースにデメリット

オーガニックグロースにはデメリットもあり、総括して非効率で時間がかかるという側面もあります。

その根拠となる、次の3つの特徴について見ていきましょう。

成長に時間がかかりやすい

オーガニックグロースを採用する場合、自社内の限られた経営資源の中で事業を成長させなければなりません。M&Aを実施すれば、相手方の企業が持っている土地・設備や技術・ノウハウ、顧客、人材などを一度に獲得でき、事業を一気に拡大させることができます。

よってM&Aグロースと比較すると、オーガニックグロースは地道な積み重ねが必要な戦略です。例えば、自社内の資源だけで新しく事業をつくる場合、既存の事業の収益性が十分となったところで、その収益から新たな事業に必要を投資を行うことになります。こうしたサイクルの繰り返しには多くの時間が必要です。

また、広告・マーケティングにかけられる資金にも限りがあり、会社のブランドが認知されたり、自社の商品やサービスが世の中に信用されるまで時間がかかるケースも多くなります。

資金不足や人材不足に陥りやすい

オーガニックグロースでは自社の経営資源だけでビジネスを進めていくので、早めに売上が出せなければ資金不足に陥りやすくなります。

仮に売上は十分出せていても、キャッシュフローを回せずに廃業・倒産に至ってしまうケースもあります。そこまで至らなくとも、資金不足に陥れば新たに人材を雇う余裕もなくなります。

先ほど解説したように、M&Aグロースでは人材が離れるリスクがありますが、オーガニックグロースでは人材が確保できずに人材不足に陥るリスクがあるのです。オーガニックグロースで事業を展開していく上では、資金繰りに関する計画性が大切といえるでしょう。

オーガニックグロースは戦略方針のひとつ。自社の現状に合った戦略検討を

オーガニックグロースは、自社内の資源でやりくりし、マイペースかつ堅実な成長を促進する戦略方針です。反対語であるM&Aグロースは、他社の力を借りてリスクをとる分、急速な成長が見込める戦略方針です。

あらゆる企業はどちらかの方針を採ることとなり、あるいは時期によって方針を使い分けることもあります。そのため、それぞれの方針が持つ特性や、メリット・デメリットを理解すると、企業の成長戦略の幅が広がるかもしれません。

自社がどの方法を採用すべきなのかを多角的に検討し、その方法に合った経営戦略を計画的に構築するようにしましょう。Frontier Eyes Onlineでは経済やビジネスのトレンドから基礎知識まで、幅広く解説しています。是非よろしければメルマガのご登録をお願いいたします。

関連記事

村上春樹さんから学ぶ経営⑳ おじさんは石とだって話ができるじゃないか

五輪に関するネット上の匿名での投稿(すなわち本音)をみると高評価が多く、無事に終わって本当に良かったと思います。ゆくゆくは二つの五輪(オリンピックとパラリンピック)の統合と、差別をなくした上で「WeThe15」ではなく「WeThe100」(弱みが全くない人など存在しません)の実現を期待したいところです。

プロスポーツチームの戦略オプション②~スタジアム・アミューズメント化経営の要所

コロナ禍において、プロスポーツチームが取り得る戦略オプションは、どのようなものがあるだろうか。今回は取り組みが活性化してきている「スタジアム・アミューズメント化」経営について、その提供価値と実現スキームに焦点を当てて解説していく。

混流生産とは?メリットや種類、自動車業界の詳細な事例を紹介

混流生産は、1つの生産ラインに複数の品種を混ぜて流す生産形態です。市場の動きへの柔軟な対応を可能にする多品種少量生産の1種で、自動車業界を筆頭にさまざまな業界に導入されています。 需要が多様化した成熟市場に不可欠な生産方式ですが、資金や技術の不足から導入できない企業は少なくありません。とりわけ、知識不足が導入する上でのネックとなっています。 そこで、本記事では、混流生産の定義やメリット、自動車業界で展開される実例を紹介します。

ランキング記事

1

EVは本当に最適か?⑤ 基幹産業=自動車を守る為に

ゼロカーボン社会に向け、EV(電気自動車)は本当に最適なのだろうか?シリーズ最終回は、日本が技術的優位に立つ「Hy-CAFE」(Hy:水素/C:Cold fusion/A:Ammonia/F:Fuel cell/燃料電池/E:e-fuel」を生かした、自動車の次世代エネルギー革命についてまとめた。

2

村上春樹さんから学ぶ経営⑯「文章はいい、論旨も明確、だがテーマがない」

前回のテーマは「変えてはならないことがある」でした。そこで今回は、本田宗一郎氏――「社の連中に技術的な話をしたことがない。話すことは、みな技術の基礎になっている思想についてである」「技術はテンポが早く、すぐ陳腐化してしまう。技術はあくまでも末端のことであり、思想こそ技術を生む母体だ」(『起業家の本質』プレジデント社)――のようなお話です。それでは今月の文章です。

3

「安すぎる日本」で国民は苦しむか? 最低賃金引上げの合理性を問う

最低賃金引上げが叫ばれている。日本の賃金は国際的に見て安いらしい。一般消費財でも、スターバックスコーヒーやマクドナルドなどグローバルブランドの商品が日本では先進国中で最低価格となっており、「安すぎる日本」として話題になっている。最低賃金引き上げは、本当に筋のよい政策なのだろうか。

4

相続登記義務化のインパクトとは?

不動産を相続した場合、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する必要があり、この手続きを「相続登記」と呼ぶ。従来相続登記は任意であったが、2021年6月の法改正により2024年を目途に義務化されることになった。相続登記義務化の背景と、そのインパクトは何かを考察する。

5

プロスポーツチームの戦略オプション②~スタジアム・アミューズメント化経営の要所

コロナ禍において、プロスポーツチームが取り得る戦略オプションは、どのようなものがあるだろうか。今回は取り組みが活性化してきている「スタジアム・アミューズメント化」経営について、その提供価値と実現スキームに焦点を当てて解説していく。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中