エンジェル投資家とは?

エンジェル投資家とは、主に創業間もない企業や事業を志す起業家に出資する個人投資家のこと。スタートアップ企業が事業を軌道に乗せる前のシード期に出資するとともに、専門知識や経験・ノウハウを提供して企業の成長を支えていきます。

出資の見返りとして、エンジェル投資家は株式や転換社債を受け取るケースが多く、出資企業が将来、株式公開や事業売却(M&A)をしたときにキャピタルゲインを確定させます。

起業家のメリット

創業間もない企業は、資金に限りがあります。また事業計画があっても資金を得られないケースもあり、銀行などの金融機関から融資を得るには、審査が厳しく現実的ではありません。自己資金だけで起業できる人はほとんどおらず、家族・友人から資金を借り受けるケースもありますが、起業に必要な資金を用立てるのは簡単なことではありません。ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達では億単位の出資を受けられる可能性がありますが、厳しい審査をクリアする必要があります。この中間に位置する資金供給者がエンジェル投資家だと言えます。

そんな起業家にとって、資金援助から経営のアドバイスまでサポートしてくれる個人投資家は、まるで「天使」という意味を込めて、「エンジェル投資家」と呼ばれています。

エンジェル投資家とベンチャーキャピタル(VC)の違い

スタートアップ企業の資金調達先として、エンジェル投資家と並列で語られることが多いベンチャーキャピタル(VC)ですが、両者にはいくつかの違いがあります。

まず、エンジェル投資家は個人投資家ですが、ベンチャーキャピタル(VC)は投資会社(投資ファンド)です。ともにシード期のスタートアップ企業に投資しますが、エンジェル投資家の出資額は数百万円から2,000万円程度であるのに対し、ベンチャーキャピタル(VC)は数千万円から億単位で出資するのが一般的です。

多額の資金を出資するベンチャーキャピタル(VC)は、金融機関の融資審査と同様の審査をおこないますが、エンジェル投資家の場合、そこまで厳格な審査はなく、出資するかどうかは投資家個人の判断で決められます。

エンジェル投資家とユニコーン起業の日米比較

2014年におこなわれた第2回経済財政諮問会議の資料(※1)によると、アメリカ(2012年)のエンジェル投資家数が268,000人であるのに対し、日本(2010年度)は834人でした。その数は300分の1以下です。また、エンジェル投資額は、アメリカ(2012年)が229億ドル(約2.3兆円)であるのに対し、日本(2011年度)は約9.9億円。隔絶たる差があります。

エンジェル投資家から資金調達するメリット

一般的に、エンジェル投資家から資金調達するメリットは以下の3点だと言われます。

リスクの許容範囲が広い

エンジェル投資家の多くは、起業に成功して引退した経営者です。裕福な元起業家がエンジェル投資家となり、次世代の起業家を育てるために自己資金を出資します。彼らは、自身の経験からスタートアップ企業の事業リスクを十分に理解していることもあり、金融機関やベンチャーキャピタル(VC)に比べて事業計画の見通しに対する許容範囲が広い傾向にあります。
経済的なリターンを超えた動機から出資するケースも多く、事業の収益性より事業内容の魅力を重視するのもエンジェル投資家の特徴です。そのため、金融機関やベンチャーキャピタル(VC)の審査に落ちた場合でも、エンジェル投資家から出資を受けられる可能性はあります。

経験・ノウハウの提供を受けられる

過去に事業で成功を収めているエンジェル投資家は、豊富な知識やノウハウ、人脈を持ち合わせています。そして、自らの経験を活かして「次世代の起業家を育てたい」という願望を持っています。それゆえ、単に事業資金を提供するだけでなく、経営面のアドバイスやコネクションの提供などを通してビジネスを支援してくれます。彼らが有する無形の資産を提供してもらえるのは、創業間もないスタートアップ企業にとって大きなメリットになるはずです。

返済の義務がない

銀行などの金融機関から融資を受けた場合、決められた期限内に利息を付けて返済する必要があります。一方で、エンジェル投資家からの資金調達はいわゆる「エクイティファイナンス」に当たり、基本的に返済義務がなく、利子が発生することもありません。もちろん、エンジェル投資家もリターンを求めていますが、将来的に株式公開や事業売却(M&A)をしたときにキャピタルゲインを得るのが彼らの考え方です。

エンジェル投資家から資金調達するデメリット・注意点

エンジェル投資家からの資金調達にはデメリットもあります。

経営に関与されることがある

エンジェル投資家は個人でお金を出資するわけなので、出資企業の経営に関与してくるケースも少なくありません。アドバイスに留まるものなら歓迎すべきですが、場合によっては経営方針まで深く関与されることも。創業メンバーの意思だけで事業を進められなくなる可能性があるということは、覚悟しておいたほうがいいでしょう。

多額の資金調達はできない

ベンチャーキャピタル(VC)は一度に数千万円から億単位の資金調達ができる可能性がありますが、エンジェル投資家からの資金調達は、数百万円から2,000万円程度になるのが一般的です。起業資金・運転資金として不足するようであれば、他の資金調達方法も併せて検討しなければいけません。

個人間の紹介やマッチングなど出会いはあるが・・・

日本でもエンジェル投資家が増えていますが、基本的には個人間の紹介をベースに活動しているため、探すのが難しいという問題があります。エンジェル投資家を見つけるまでに、ある程度の時間・労力がかかることは覚悟しておきましょう。近年では、起業家とエンジェル投資家をマッチングするサービスもあります。しかし、双方にとっていい出会いとするのは簡単ではありません。

創業期を支えるシードアクセラレーターとは?

シードアクセラレーターとは、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)と同じく、シード期のスタートアップ企業を支援する組織のこと。昨今、日本でもその数が増加しています。

シードアクセラレーターの活動

シードアクセラレーターは、スタートアップ企業の事業を成長させるための支援をおこないます。様々なタイプのシードアクセラレーターがありますが、概ね資金提供の額は少額で、人脈の紹介、教育、助言、ワークショップの開催、リーガルサービスなどの支援をおこないます。

投資目的のシードアクセラレーターもありますが、どちらかと言うと、自社との協業やシナジー効果を期待して有望なスタートアップ企業を育成することを目的としています。それゆえ、支援企業のビジネスモデルより、サービスやプロダクトの優位性や、創業メンバーの資質など組織的な強みを重視する傾向にあります。

関連記事:企業の持続的な成長の鍵を握る「ダイナミック・ケイパビリティ」とは?
関連記事:「コアコンピタンス」の意味とは? ケイパビリティの違いと企業の事例を解説

エンジェル投資家やシードアクセラレーターとともに「死の谷」を越えていこう

スタートアップ企業には、「事業を軌道に乗せるのが先か、資金が底をつくのが先か」という苦難の時期、いわゆる「死の谷(デスバレー)」があります。最大の試練である「死の谷」を越えていくには、支援者の存在が欠かせません。起業家のみなさまに、良きエンジェル投資家、良きシードアクセラレーターとの出会いがあることを期待しています。

Frontier Eyes Onlineでは、ビジネス・経済に関する様々な情報を提供しています。よろしければ、メルマガのご登録をお願いします。

※1参考:中長期の安定した投資の推進に向けて 内閣府

※2参考:令和元年度 中小企業実態調査事業 経済産業省

関連記事

株主を整理するスクイーズアウトとは?方法や最新事例も解説

M&Aや組織再編の過程で、100%子会社化を目的とする場合、対象会社に存在する既存の少数株主を「締め出したい」というニーズが生じることがあります。 少数株主の排除のことをスクイーズアウトと呼びますが、従来はその課税関係が複雑で使い勝手が悪いことが多々ありました。 しかし、2017年度の税制改正で大幅に内容が改正され、現在では多くの機会で機動的にスクイーズアウトが活用されるようになりました。今回は、そのスクイーズアウトについて、方法や最新事例について解説します。

村上春樹さんから経営を学ぶ⑭「世界のしくみに対して最終的な痛みを負っていない」

ネットの普及もあって最近は百家争鳴、様々な議論があふれています。民主的で自由な議論は素晴らしいことですが、その裏返しとして責任を伴わない意見が多くなります。為政者・経営者にとって「最終的な痛みを負わない」誘惑に負けず、論理的・長期的判断が重要だと感じます。それでは今月の文章です。

国際特許出願に、国家戦略はあるか 中韓が大幅増加

2020年の国際特許出願件数は27万5900件と、コロナ環境にもかかわらず過去最多を更新した。中国や韓国が大きく件数を伸ばす中、日本はどのような国家的な技術戦略をたてるべきか、考察した。

ランキング記事

1

「クララが立った!」を英訳せよ

「クララが立った!」の翻訳は容易ではない。『アルプスの少女ハイジ』を知らない国の人に、「Clara stood up !」や「克拉拉站着!」と直訳しても意味を成さない。言葉には様々な意味や記号が埋められている。それは、年代、国、民族、言語で大きく異なるからだ。

2

閉店相次ぐ銀座 コロナ禍で商業施設苦境に

東京の代表的な商業地である銀座で、店舗の閉店が増えつつある。メインストリートの「中央通り」から中に入った通りでは、閉店した店舗が目立ち、中央通りに立地するビルでも空室が散見される。

3

リカーリングビジネスはサブスクリプションとどう違う? 新しい収益モデルを解説

従来の商品やサービスを売ったら終わりの「買い切り型」モデルとは異なるビジネスモデルが目立ちます。 そのなかのひとつが「リカーリング」です。リカーリング型のビジネスには様々なメリットやデメリットがあります。 本記事では、リカーリングのメリット・デメリットや、サブスクリプションとの違いについて、具体例を挙げながら解説します。

4

内部統制報告制度「J-SOX法」とは? なぜできたのか?

企業における内部統制は、様々な業務が適正に行われ、組織が適切にコントロールされているかどうかをチェックすることを指しますが、その中でも事業年度ごとの財務報告の内部統制について定めているのが、J-SOX法(内部統制報告制度)と呼ばれる制度です。 J-SOX法は、事業年度ごとに公認会計士ないしは監査法人の監査を受けた内部統制報告書と有価証券報告書とともに内閣総理大臣へ提出することが義務付けられています。 また違反した場合は、金融商品取引法に「(責任者は)5年以下の懲役または500万円以下の罰金またはその両方(法人の場合は5億円以下の罰金)」と罰則が定められています。 しかし、結果的に企業の内部統制を強化し、不正会計などのリスクを減らすことができるため、J-SOX法は企業にとってもメリットのある制度と言えます。 この記事では、J-SOX法の解説のほか、ITシステムに関する「IT統制」についても解説しています。企業の監査部門や、内部統制に関する部署で働いている方は、ぜひ参考にしてください。

5

パワー半導体の世界シェアは?注目市場の今後の動向を解説

パワー半導体(パワートランジスタ)は、家電や電気自動車をはじめとして、さまざまなデバイスの電源管理に使われています。 多くの分野で需要が伸びており、長期的な成長が期待できるマーケットです。 日本の企業や大学発ベンチャーが競争力を保っている分野でもあり、「パワー半導体強国」として世界市場でのシェアを獲得するべく、積極的に研究開発を行っています。 本記事では、世界規模で成長をつづけるパワー半導体の市場規模や、今後の展望を解説します。

人気のキーワード

海外スタートアップ情報はこちら!  寄稿・執筆者募集中