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NCP×FMI対談【前編】ノウハウと信頼感を掛け合わせ、「すべての課題に立ち向かう」
企業の成長支援と地方経済の活性化に取り組むファンド運営会社「フロンティア南都インベストメント合同会社」(本社・奈良市)が設立されて1年半がたった。南都キャピタル(NCP)とフロンティア・マネジメント(FMI)が手を組んだ狙いとは何だったのか。そしてこの会社の強みとは。これまでの実績を交えながら、事業を担う堺敦行氏とFMI松井佑磨に話を聞きました(前編と後編に分けてお届けします)。
話:南都キャピタルパートナーズ 代表取締役社長 堺敦行氏、フロンティア・マネジメント 松井佑磨
聞き手:Frontier Eyes Online編集部
南都キャピタルパートナーズ 代表取締役社長 堺敦行氏(右)
慶応義塾大学経済学部卒業、公認会計士。監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)にて法定監査業務に従事。
その後、株式会社経営共創基盤(IGPI)にて、事業計画策定、ビジネス・財務DD、新規事業開発、大学発ベンチャーへの投資業務、IPO準備会社へのハンズオン支援等、幅広い業務に従事。独立後、南都銀行顧問を経て、南都キャピタルパートナーズ設立と同時に代表取締役社長に就任。
フロンティア・マネジメント マネージング・ディレクター 松井佑磨(左)
一橋大学社会学部卒業。公認会計士。新日本有限会社監査法人及びEYトライザクションアドバイザリーサービス(株)を経て、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。
18年にフロンティア・マネジメント(株)に入社。新日本有限責任監査法人では、投資ファンドに出向し、投資先開拓、食品製造業や再生医療ベンチャー等の投資実行及び投資後の経営支援に従事。
ファンドという選択肢、地域経済に示す
――フロンティア南都インベストメント合同会社の設立の狙いについて教えて下さい。
堺: この会社を立ち上げることで、地域経済の中で、ファンドという事業支援の選択肢を示したいと思っています。
地域の中で、ファンドを活用して企業の課題を解決するという文化は、まだまだ醸成されていないと感じてきました。事業承継や企業再生など、ファンドを使った方がより進めやすかったり、企業が足りないものをうまく補いやすかったりする局面はあるものです。
さらに企業が成長すればするほど、ファンドとしてのリターンも大きくなるという仕組みが一般的ですので、ファンド運営を行う側には、より会社の成長にコミットして向き合う姿勢も必要です。
その意味で南都銀行の行員たちにも、こうした枠組みの支援の方法があるという経験を積ませたい。銀行の持つ知識やノウハウだけでは足りない部分を、FMIさんから学びたいと思っています。
松井: 私たちはコンサルタント業務を中心に手がける中で、投資業務も拡大したいという思いを持っていました。
今回のお話をNCPさんにいただき、「ぜひ一緒にやらせていただきたい」となったわけです。コンサルというのは、契約ごとに担当する業務領域というものがあるものです。しかし、投資となると、株主として関与するわけですから「この分野だけの経営課題を扱います」というわけにはいかない。すべての課題に立ち向かわなければならないのです。
その意味で、私たちにとってもコンサルタントのあらゆるフェーズで取り組んできた支援実績をトータルで生かせると考えています。
後継者問題を課題としている中小企業、または追加的な資金調達ができず、事業構造の転換が図れないような会社を支援していく考えです。投資ファンドとしてこうした社会への貢献の仕方は、非常に大きな意義を持つと思っています。
――まだファンドという事業支援のあり方は、地方ではなじみが薄いものですか。
堺: そうですね。「ハゲタカファンド」なんて言葉もありましたね。いま、そんなことをやっている人たちはいないと思いますが、ファンドというものは、すべて自分たちのお金にして去って行ってしまうというイメージがあるのも確かです。
ファンドを活用した経験がなければ、拒否反応を持つ人がいても当然でしょう。だからこそ、私たちはファンドを通じて地域経済を回すために必要なお金と知恵を出し、事業成長につなげていくというストラクチャーがあることを認知してもらいたいと考えています。
――コンサルを手がけてきたFMIと地銀の傘下にあるNCPが組むことで、どのような相乗効果を狙っているのですか。新たに立ち上げた、この会社の強みは何でしょう。
堺: 私たちがFMIさんと組む一番重要な意義、それは経験値です。
FMIさんの場合、コンサルを含め、事業の経営者側に入ったビジネスをされてこられました。もちろん、銀行の場合もお金を貸し出すことで事業を支援しているわけですが、銀行にとって大切なのは、このお金をきちんと回収することにあります。これは別に悪いことではない。要は役割が違うのです。
経営側の視点から事業を立て直し、従業員の雇用を守る。そうしたリアルな悩みにしっかりと向き合うという経験値というものは、これまでの銀行ではなかなか得られないものです。FMIさんとの投資を通じ、そこをしっかりと学びたいという思いがあるのです。
一方、地銀というものは、地域の中ではネームバリューはもちろんのこと、お客様から高い信頼を得ています。ファンドを通じて投資を受ける中小企業にとってみれば、名前もよく聞いたこともない会社に、いろいろと経営を探られることに抵抗感を持つことでしょう。そこは私たちのバリューが生きるところです。
人間同士の信頼関係がなければ、投資はうまくいきません。FMIさんの経験と私たちが築いてきた信頼感、そうした最適な組み合わせが実現したと思っています。
松井: 堺さんからお話があったように、南都銀行さんのような地方銀行の持つエリア内の優位性というものは、本当に代替が効かないほどの価値があります。結局、長年にわたって地元の企業と取引して築いた信頼関係やネットワークの力なのです。
地方銀行はエリア内にある、ありとあらゆる企業を把握し、現在の状況、そして経営者や後継者の情報が入ってきている。こうした一次情報をきちんと握っている。そこにはものすごいポテンシャルがあると感じます。
この点、私たちは太刀打ちできません。私たちのノウハウと南都銀行グループの信頼感を掛け合わせることで、大きなアドバンテージを生み出すことができると考えています。
お互いのピース、うまく組み合わさった
――お二人は投資、コンサルの両方のご経験がありますね。会計士の資格をお持ちだという点も共通しています。
松井: 私は監査法人で会計監査をした後、出向で投資ファンドに行ったんですよ。そこで投資というものに面白みを感じると同時に、自分自身の力不足をすごく感じました。
デューデリジェンスで投資判断を行ったうえでディールをクローズさせ、事業計画を作成し実行するなど、いざ自分でやれといわれたらやれるという力をつけたうえで投資業務に従事できたら、非常に面白いだろうなと。遠回りかもしれませんが、長い目でみるとそういう人材が重宝されるようになるのではと感じたのです。
それでコンサルに行って、総合的な経験が積める事業再生やM&Aの分野を中心に場数を踏ませていただきました。この世界は、ファイナンスも絡みますし、事業や財務、ディール全体の進め方などで、どこがポイントなのかを見抜くセンスや経験も必要になります。
こうしていま、改めて投資の仕事に就かせてもらった。これまでの仕事が生かせれば良いなと思っています。
堺: 私は学生時代に会計士の資格を取り、監査法人に入りました。
決算書をチェックする日々を送ってきたのですが、ビジネスそのものを見ることに興味を持ちまして。経営を幅広く見ようと考えて転職し、今度は事業再生や成長支援を手がけるコンサルティング会社に入りました。当初は再生案件を手がけ、後半は投資を含む成長支援を行っていました。
その後に縁があって南都銀行に関わるようになりました。そこで銀行の中に絶対に必要だと感じるようになったのは、お客様のビジネスを深く分析した上で、会社の成長性を理解し、さらに意思決定に関わっていく機能です。
そのためにも投資にチャレンジしようという議論にはなったものの、特にいわゆるPEファンドの領域については、その時点の内部の人たちだけの力では限界がある。そこで経験の豊富なFMIさんと一緒に組もうと。
――両社の出会いはどのようなきっかけですか。
堺: 南都銀行グループからFMIさんにご相談したことです。いま申し上げたように、私たちの中でも事業再生に取り組もうという機運があったのですが、銀行出身者だけでは足りない部分があるということはみんな理解していました。
ハンズオンと言いますが、投資先の経営陣の中に入っていって支援を行う際に、どうしてもノウハウが足りないのです。そうした中、FMIさんともお話をする中で、FMIさん側も投資の領域に取り組みたいというご意向を知ることになり、「それなら一緒にやりましょう」となったのです。お互いにやりたかったことと、足りなかったピースが、うまく組み合わさったという感じでしょうね。
――投資先の企業はどのように発掘していくのですか。
松井: 私たちが考えているファンドの枠組みは、後継者が不在の事業継承などにあたるバイアウトファンドと、業績不振の企業に投資して経営の立て直しにあたる事業再生ファンドです。
まずはこうしたニーズの情報をNCPさんに整理していただき、その上で一緒に検討していくというパターンが中心になりそうです。あとは、M&Aの仲介会社や同業のFAともネットワークを構築してきています。
――この会社は南都銀行と同じ、奈良市が所在地ですね。投資の対象となる企業の地域は関西が中心になるのでしょうか。
堺: そこは限定しないつもりです。私たちが得たい経験というのは、様々な企業を支援するノウハウです。これは投資に踏み切らなければ何も学べません。地域にこだわっていては、なかなか投資先が見つからないということにもなりかねない。
確かに奈良市に所在する会社ではありますが、私たちの会社は間口を広く開け、投資にふさわしいと判断すれば、どこの地域の企業でも対象にします。
――投資の選定基準については、どのようなお考えをお持ちですか。
松井: やはり私たちは株式を取得させて頂くわけですので、株式の価値が見いだせるかどうかがまずは第一です。その対象企業様の収益性、成長性というところをトータルで見て判断したいと考えています。
あとは、定性的なところで、我々が投資し株主となることでどういった付加価値が見出せるか、投資テーマをどう掲げられるかも大事にしています。
堺: そうですね。いま足元の収益性が悪くても、この会社だったら投資して支援すれば収益性を改善できる、改善幅が見えてくるというのがポイントでしょうね。
いまは株価が安くなっていたとしても、会社の収益性を高めていけば会社の価値は上がります。その差が私たちの収益にもつながってくるわけですから、そこはしっかりと議論した上で選定することになりますね。
松井: 私たちのファンドは30億円弱の規模です。これで100件に投資できるかど言えば、そんな多くの投資先はコントロールできません。しっかりと経営状態を見ていくために、手がける数は現実的に限られてくる。そうなると5~8件ぐらいの投資をしながら、会社の成長を促していくことになります。
「外部から来た人間だからこそ、できることがある」(堺)
――経営の立て直しにあたっては、現場の信頼感を得ることが大切でしょうね。具体的にはハンズオン、ハンズオフ支援はどのように進めていきますか。
堺: シンプルに言うと、会社の人たちに任せた方が良い部分は任せる。自分たちが手がけたほうが良い部分は自分たちがやる。これが基本です。
例えば製造業の会社に行き、職人さんが製品を加工している技術について、私たちが何か口出しをしたところで、何もできるわけがない。絶対に職人さんのレベルのほうが高いんです。
一方で、何かを製作する過程で習慣化されてきたようなプロセスについて、原点に立ち返って「本当にこの工程は必要なのか」「他に代替案はないのか」という検討はできる。これは悪い意味ではなく、長年にわたる事業というものは習慣化されているものです。そうしたものを改めて見直してみるというのは、外部から来た人間だからこそ、できることでもあります。
松井: ハンズオンと言っても、とりあえず人を派遣すれば、何か物事が前に進むということはありません。その会社ごとに何をやれば良いのか、どういった役回りを果たせばいいのかが異なるからです。
事業を改善するために必要なことすべてに柔軟に対応していかなければなりません。いま何を補塡すべきなのか。アンテナというのかセンサーというのか、私たちの経験が問われるということでもありますね。
堺: 「これがハンズオンだ」という明確なものってないんです。毎日15分、投資先の社長と話すことが究極のハンズオンであるケースだってあります。この会社を正しい方向に変えていこうといっても、いきなり私たちの考えに経営者や従業員が「はい、分かりました」となるはずもない。
「どうしてこんな仕組みを採り入れる必要があるのか」をきちんと説明し、みなさんの納得を得た上で、それが導入後も機能していくようにサポートしていく。こうした取り組みはFMIさんが培って来たコンサル経験が生きる部分だと思っています。
ファンドはどうしても時間的な区切りがあります。最後はその会社に自走してもらわなければなりません。この会社が持続するために、「次は何をやるのか」ということを常に考えた上で、新たな体制を一緒に作っていかなければなりません。
<記事後編に続きます>
NCP×FMI対談【後編】「出口」から逆算した支援で、会社を最も価値ある状態に
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