デザイン思考とは?ユーザーの「共感」に根ざした思考法

デザイン思考とは、デザイナーやクリエイターの思考プロセスから学び、問題解決やイノベーションに役立てるための思考法です。

市場にモノがあふれ、消費者が主体的に取捨選択を行う現代のマーケットでは、プロダクトの品質を高めるだけでは競合他社の優位に立てません。

消費者の感性に訴えかけ、消費者の「共感」を呼ぶ価値をデザインすることが、この大量消費社会において求められています。

それはデザイナーやクリエイターが使う思考プロセスそのものです。

「デザイン思考」は「デザイン」ではない

「デザイン思考(design thinking)」は、クリエイティブ業界における「デザイン(design)」の思考プロセスを抽出したものであり、デザイン作業そのものではありません。

プロダクトを「装飾」するのではなく、ユーザーの共感を得られるよう、プロダクトを「設計」するための考え方を意味します。

デザイン思考の3つの特徴

デザイン思考の特徴は、大きく分けて次の3点です。

  1. ユーザーの「共感」「満足度」を重視する
  2. アイデアが生まれたら、試行錯誤によってブラッシュアップしていく
  3. 前例にとらわれず、バイアスや固定観念を捨て去る

デザイン思考の原点は、マスマーケットの消費者の注目を集め、ユーザーに自社製品を選んでもらうことにあります。

そのためには、ユーザーの共感・満足を得ることが欠かせません。

また、デザイン思考に基づく製品開発では、従来通り仮説・検証を繰り返すのではなく、新たな価値を生み出すクリエイティブな作業と同様に、試行錯誤によるブラッシュアップが基本です。

バイアスや固定観念を捨て去り、前例にとらわれないのも、デザイン思考によく見られる特徴です。

なぜデザイン思考が注目されるのか?VUCA時代では「仮説検証型」のアプローチは通用しない

デザイン思考が注目されるのは、マーケット構造が変化し、従来の「仮説検証型」のアプローチが通用しなくなったためです。

人々のニーズが予測困難なVUCA(ブカ、ブーカ)の時代では、ユーザー中心主義のデザイン思考が必要です。

人々のニーズが予測不可能な現代で「仮説検証型」は通用しない

これまでは、マーケットやユーザーニーズの調査を行い、仮説を立て・検証して製品開発を行う「仮説検証型」のアプローチが主流でした。

マーケティングリサーチが有効な業界では、この手法は今でも効果的です。

しかし、現代は「VUCA(「Volatility:変動」「Uncertainty:不確実」「Complexity:複雑」「Ambiguity:曖昧な」の4つの頭文字をとった造語)」と呼ばれ、マーケットやユーザーニーズが急激に変化し、予測困難な時代です。

マーケティングリサーチを行っても、課題やニーズの発見が難しい事例が増加しています。

そこで、イノベーションの創出に強いデザイン思考が注目を集めています。

デザイナーやクリエイターの思考に学び、デザイン思考の5つのプロセスを実践しよう

デザイナーやクリエイターは、日々のデザイン業務において5つのプロセスを実践しています。

ここでは、スタンフォード大学のハッソ・プラットナー・デザイン研究所が発信するデザイン思考の方法論を紹介します。

デザイン思考の5つのプロセス

デザイン思考は次の5つのプロセスで構成されています。[注1]

1.共感(Empathize ) ユーザー中心主義に立ち、ユーザーに寄り添う。観察やインタビューを通じて、ユーザーが「共感」しているもの、本当に求めているものを見つける。
2.問題の定義(Define) ユーザーの「共感」からヒントを得て、市場の潜在的な課題を分析する。プロダクトの方向性やコンセプトを決める。
3.アイデアの創造(Ideate) ユーザーの「共感」を満たし、課題を解決するためのプロダクトのアイデアを生み出す。
4.試作(Prototype) アイデアを製品化する。まずは低価格で、フィードバックを得るのに適したプロトタイプをつくる。
5.テスト(Test) プロトタイプのユーザーテストを繰り返し行い、消費者の意見を聞く。「問題の定義」の成果物と比較し、ブラッシュアップを行う。

重要なのは、これらのプロセスを順番通り行う必要はないという点です。

デザイナーやクリエイターは、連続的な思考ではなく、試行錯誤によってクリエイティブな製品を生み出します。

デザイン思考がもたらすビジネス上の2つのメリット

デザイン思考は企業に2つのメリットをもたらします。

ユーザーの共感に根ざした新たなアイデアを生み出し、社内のコミュニケーションを活性化させます。

メリット1. ユーザーの「共感」を得られるプロダクトを生み出す

デザイン思考はユーザーの「共感」「満足感」を得られるプロダクトを生み出す思考法です。

現代のマスマーケットでは、製品の品質やスペックではなく、消費者にどれだけ関心を持ってもらえたかが勝敗を分けます。

デザイン思考の5つのプロセスを繰り返すことで、マーケットとユーザーのニーズをつかみ、魅力的で消費者の心に訴えかけるプロダクトを生み出すことが可能です。

メリット2. コミュニケーションを活性化させ、組織体制を強化する

デザイン思考のメリットは、製品開発プロセスの改善だけではありません。

マーケティングリサーチに基づく従来の方法論と違い、デザイン思考はチームのメンバー同士の意見交換やブレインストーミングを大切にします。

デザイン思考のフレームワークを取り入れれば、社内のコミュニケーションが活性化し、企業としての目的や方向性が共有され、強力な組織体制を築くことが可能です。

デザイン思考を理解するための2つの事例

デザイン思考は、国内外の多くの企業で、クリエイティブな製品開発に活かされています。

ここでは、デザイン思考の理解に役立つ2つの事例を紹介します。

世界的な大ヒット商品となったAppleの「iPod」

Appleの大ヒット作である携帯型デジタル音楽プレイヤー「iPod」も、デジタル思考で生み出されたプロダクトです。

コンパクトな本体、音楽データのスムーズな移行、優れたインターフェイスは、次の思考の流れで生み出されました。

1.共感 ユーザーニーズの分析により、音楽プレイヤーのユーザーが、CD→PC→音楽プレイヤーへのデータ移行に不便を感じていることを知った。また、「どこでも音楽を聞けるデバイス」というニーズを発見。
2.問題の定義 自分だけの音楽コレクションをつくり、ポケットに入れて持ち運べるデバイスのコンセプトを確立。
3.アイデアの創造 コンセプトを具体化するため、コンパクトな本体デザイン、直感的な操作ができる円盤型のマウス、PCとiPodの音楽データを自動でリンクするシステムといったアイデアを創造。
4.試作 試作品のユーザーテストからフィードバックを受け、当時のCEOスティーブ・ジョブズが、「さらに本体をコンパクトに」「メニュー画面をすばやく表示できるように」といった改善案を出した。

結果として、2001年に販売されたiPodは音楽プレイヤー界に革命を起こし、わずか5年半で累計1億台を売り上げ、世界的な大ヒット商品となりました。

P&Gのブランド「ブラウン」が手掛ける電動歯ブラシ

P&Gの家電ブランド「ブラウン」が開発した電動歯ブラシも、デザイン思考のプロダクトの代表例として知られています。

P&Gは電動歯ブラシを使うユーザーを観察し、「専用充電器が使いにくい」「替えブラシを買うのを忘れてしまう」といった潜在的なニーズを発見しました。

そこで、汎用性が高く便利なUSB充電機能や、専用アプリケーションを使った替えブラシの自動リマインド機能を開発し、消費者の不満に寄り添うユーザー中心設計のプロダクトを生み出しました。

デザイン思考がユーザーの「共感」に根ざしたプロダクトを生み出す

「デザイン」という言葉がゆえに勘違いされやすい思考法ですが、「論理」だけでは解決できない課題に対して、大きな効果を発揮します。

これまでの考え方が通用せず、今後の見通しを立てるのも難しいこの時代だからこそ、デザイン思考は重要だといえるでしょう。

ケースバイケースで様々な思考法・フレームワークとともに使いこなすことが大切です。

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[注1]スタンフォード・デザイン・ガイド デザイン思考 5つのステップ

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