日本企業のベトナム不動産プロジェクトへの参画相次ぐ

ハノイの橋

ここ数年、日本企業によるベトナムでの不動産開発プロジェクトへの参画は、増加基調にある。
主要なものだけを取り上げても以下のような案件が公表されている。

・野村不動産・三菱商事による、Vinhome(VinGroup傘下)が推進するホーチミン市Grand Park プロジェクトに参画(2020年1月23日)
・東急は2012年に現地企業ベカメックスIDCと合弁企業を設立し、以降、ホーチミン市の北約30㎞のビンズン省にてSORA gardensシリーズ含むマンションや、商業施設を開発。
・西日本鉄道によるナムロンとの合弁による北部ハイフォン市における住宅開発(2019年8月2日)
・CREがシンガポールのセムコープと共同で出資するJVを通じた物流施設の開発を推進、2020年に阪急阪神不動産も参画。
・相鉄が現地パートナーから現地子会社を取得し、2021年春を目指しホーチミンにホテルを開業(2018年5月公表)
・野村不動産・住友林業・大和ハウス工業によるホーチミン市7区のフーミーフンエリアにおけるミッドタウンプロジェクト参画(2015年)

なお、日本企業以外にも、今年6月にKKRのようなグローバルに活動するPEファンドがリードするコンソーシアムも大手VinHomeに出資(USD650mn)しており、本コンソーシアムにシンガポール政府系Temasekも参画しているなど、全世界的に注目されている。

当社(フロンティア・マネジメント)のようなM&Aアドバイザリー企業にも、高層住宅・倉庫・工業団地・ホテルなど、多様な不動産開発プロジェクトの情報が入ってきており、活況であることが伺える。

留意すべきリスク―土地取得プロセスと法的手続遅延

ホーチミンのビルイメージ

他方、ホーチミン市中心部では、法的手続の遅延によりここ2年ほど開発が進められていないプロジェクトが存在する。ホーチミン市不動産協会によると、2015年10月から2018年末の間に、住宅用地・農地・公有地など複数の種類の土地を使用する126件のプロジェクトが手続中に保留を余儀なくされた。
さらに、公営住宅を含む158件の住宅プロジェクトも、調査が行われるまで保留された。 2019年には、158件中124件が再開を許可されたものの、順調には進んでいない。全体として、2019年にホーチミン市で土地使用権が認められた商業用住宅プロジェクトは、2018年比92%減となったと報じられている。

このような状況は、土地(土地使用権)をめぐるスキャンダルで一部の政府高官の逮捕後、市当局が承認に慎重になり、不動産プロジェクトのライセンス供与プロセスが停滞したために起きているとされている。

相次ぐスキャンダル

国際的に報道された(英字で記事が出ている)だけでも土地に関するスキャンダルはいくつも発見できる。代表的なものは以下が挙げられる。

・2018年1月、不動産開発の実業家Phan Van Anh Vu氏(別名「Vu Nhom」)氏がシンガポールで逮捕される。「国家機密を故意に開示した」罪に問われた
・ホーチミン市人民委員会の副委員長を詰めていたNguyen Huu Tín氏らは、Vu Nhom氏が市内の一等地にある多くの建物・公有地を低価格で取得するのを幇助したとされ、懲役刑となっている(2019年12月)
・2018年5月、フック首相がホーチミン市2区トゥティエムの金融・商業都市開発プロジェクトに関し、土地取得プロセスの調査を命じた。市は10年間で15,000世帯を移転し、約13億2,000万ドルの補償金を支払ったが、当地に居住していた100超の家族が当初の計画地図によれば立ち退く必要が無かったと訴えたことが背景
・2020年9月、ホーチミン市人民委員会の元副委員長Nguyen Thanh Tai氏が、懲役8年の刑を言い渡される。ホーチミン市の1区の公有地を競争入札なしでリースした罪に問われた

逮捕者続出の背景として、シンガポールの報道機関CNA(Channel News Asia)は、「2016年に与党共産党の治安機関が大きな影響力を獲得して以来、汚職の取り締まりで数十人のベトナム当局者と企業関係者が逮捕されている」と指摘している。
土地の取得プロセスに不正が起こりうること、また関連して政府の意向で突発的に遅延が起こりうることは認識しておくべきだろう。

今後の見通しと示唆

ハノイイメージ

中断されているホーチミン市における124件のプロジェクトは再開されつつあり、他プロジェクトの法的手続の状況も改善しつつある。
しかし、当社(フロンティア・マネジメント)のベトナム人メンバーによれば「開発が本格化するのは2021年に行われる5年に1度の選挙後ではないか」といった噂や憶測がある。
それまでの間は、中心地であればハノイやハイフォンといった別都市、ホーチミン市近郊であれば郊外型の中間所得層向け住宅、また工業団地やリゾート案件に目を向けるのもありうる。

現地のパートナー探しが課題

言うまでも無く、土地を見つけ獲得できる適切なパートナーを選定し協働することが重要だろう(なお、商慣習や政治対応を現地パートナーに頼りたいというニーズは不動産業界に限らない)。
最近の傾向を見ると、現地大手は、自社に無い「新しい何か」を持ち込んでくれる企業を歓迎する。
例えばデベロッパーには不動産開発における設計・建設におけるノウハウや日系企業含む顧客獲得、工業団地には日経顧客獲得に加えスマート倉庫・物流チェーンといった最新インフラ整備のサポートやR&D、あるいは不動産以外の新規事業におけるノウハウだ。

ベトナムの財閥VinGroupは、資産運用のハンファやSKといった韓国財閥から出資を受けている。
特にSKとは、「情報通信を活用したインフラ構築や、ベトナム国営企業の民営化を見据えた新規事業の育成」「次世代通信規格『5G』関連事業」「共同でM&A(合併・買収)を検討」といった、新規事業での協力が、目立っている。

VinGroupは小売事業を売却し、ベトナム初の国産自動車「ビンファスト」やスマートフォンの製造などテクノロジー分野への進出も加速している。このような新規事業分野で提供できるものがあると、関係が強まり、よいプロジェクトや土地を紹介してもらえるポジションの確立につながるだろう。

コロナ禍でもプラス成長 有望市場のベトナム

ベトナムはコロナ状況下でも2020年のGDP成長率はプラスとなる見込み(これはほぼ中国とベトナムのみと言ってもよいだろう)で、不動産開発だけでなく、他事業でも有望市場と言える。留意すべき事項は多いが、期待できる果実も大きいはずだ。

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