「カテゴリーキラー」とは?圧倒的な競争力を武器に展開する戦略

カテゴリーキラーは、特定の商品分野に集中して圧倒的な品揃えと低価格を武器に展開するマーケティング戦略です。 あらゆる商品をワンストップでそろえる百貨店などの業態とは対照的なのが特徴ですが、インターネットの普及などにより、その戦略も変容を迫られています。 今回はカテゴリーキラーの基本知識や戦略上大切となるポイント、優位性のメリットが得られる理由や、実際の企業事例などについて紹介します。

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カテゴリーキラーとは?

カテゴリーキラー(Category Killer)とは、特定の商品分野に集中して圧倒的な品揃えと低価格を武器に展開するマーケティング戦略です。

「大型専門店」と考えるとイメージしやすく、カテゴリーキラーが出店することで競合店の売り上げが低下し、縮小もしくは撤退に追い込まれる状況が生まれやすくなります。

このように、出店した商品分野(カテゴリー)の勢いを落とす(キル)という特徴が名称の由来です。

カテゴリーキラーと百貨店との違いは

大型店舗を構える点でカテゴリーキラーと共通するのが、「百貨店」という小売業態です。

しかし両者には、扱う商品分野の広さに決定的な違いがあります。

百貨店の場合、衣料品や雑貨から食料品までのあらゆる商品分野を店舗内に揃えており、すべてをワンストップに提供します。

これに対しカテゴリーキラーは、店舗内で扱う商品を特定の分野に集中するのです。

カテゴリーキラーを実現するための戦略的ポイント

カテゴリーキラーを戦略的に成功させるためには、ふたつの重要なポイントがあります。

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

コスト削減による低価格化

カテゴリーキラーは、特定分野の商品を大量に仕入れて安く売ることを基本とします。

つまり、商品に特別な付加価値を付けない代わりに、可能な限り安い値段をつけて消費者へ訴求することが重要です。

ただし、必然的に大規模な店舗面積が必要になるため、都心部へ出店する場合は高額なランニングコストによって採算がとれないリスクが生まれます。

そのため、まずは土地の安い郊外立地に出店を検討するのが原則です。

多店舗展開による利益拡大

カテゴリーキラーは安値での販売を特徴とするため、1店舗あたりの売上にはあまり期待できません。

したがって、ビジネスモデルとして成立するだけの利益を出す上では、多店舗の展開がほぼ必須です。国内外を問わず次々と店舗を出すことで、総合的に利益を拡大していくことができます。

また、近隣に複数の店舗を構えて在庫を共同管理すると在庫コストを削ることができるため、商品の低価格化へ還元できる側面もあります。

カテゴリーキラーがもたらす優位性のメリット

カテゴリーキラーは競合他社に対して圧倒的に優位性をもてるメリットがあります。

では、具体的にどのような部分で優位に立つことができるのか、大きく分けてふたつのポイントについて解説します。

ブランディングがしやすい

大規模な店舗内に圧倒的な数量かつ低価格の商品が並んでいると、顧客に強烈なイメージを与えることができます。

それが特定の分野に絞られていればなおさらであり、例えば「安いスポーツ用品店といえばあの店だ」という印象を持ってもらいやすいのです。

結果として、企業イメージを定着させることでブランディングがしやすくなり、安定した売上の確保や市場での差別化を図れます。

選択と集中により、競合に差を付けられる

カテゴリーキラーの戦略は、経営改革のキーワードとして知られる「選択と集中」そのものです。

選択と集中は、事業分野を見極めたら、そこへ対して経営資源を集中的に投下することによって経営効率を高め、競合他社との差別化を図る戦略です。

カテゴリーキラーも、特定の商品分野のみに注力することで、他社と圧倒的な差を付けられる可能性があり、既に競合にシェアを独占されていても挽回できる爆発力を秘めています。

国内企業におけるカテゴリーキラーの成功事例

カテゴリーキラーがいかに有効に働くかを知ってもらうために、実際に成功している国内企業の事例を3つ紹介します。

すでに市場内で一定のポジションを確立している企業が、それぞれどういった戦略を採っているのかを見ていきましょう。

衣料品専門店のユニクロ

カジュアル衣料品専門店のユニクロは、1997年ごろから製造小売業(SPA)の形態をとるようになり、製造から小売をワンストップにすることでコストを抑え、低価格・高品質の商品を展開しています。

1998年にはフリースを1900円という低価格で売り出し、驚異的な売上枚数を達成したことが社会現象となることもありました。

現在のユニクロは、性別や年齢を問わず幅広いターゲットがベーシック衣料を豊富なサイズから探すことができる、安価なトータルコーディネートブランドとしての地位を確かなものにしています。

店舗展開も日本全国のみならず、海外への進出を果たしており、カテゴリーキラー戦略の模範的な事例と言えるでしょう。

家具専門店のニトリ

家具・日用品・インテリア用品専門店のニトリは、「お、ねだん以上」のキャッチコピーでおなじみです。

高品質と低価格を両立させて「お値段以上の価値」を提供し、家具の分野におけるカテゴリーキラーとして、日本全国および海外の一部地域で店舗を展開しています。

ニトリの商品が低価格である理由は、徹底したコスト削減のための戦略にあります。

例えば、中間マージンが外へ出ていかないように製造・流通・小売をすべて自社系列会社で完結させたり、開発を国内で行う一方で製造は人件費の安い海外拠点で行ったりすることで、節約したコストを価格に反映させているのです。

家電量販店のヨドバシカメラ

大型家電量販店のヨドバシカメラは、カテゴリーキラー戦略を採用しているものの、他の競合店(ヤマダ電機やケーズデンキ)に比べて店舗数が少ないのが特徴です。

通常であれば、カテゴリーキラーは1店舗あたりの売上が小さくなるのを補うため、多店舗展開を実施することが基本となります。

しかしヨドバシカメラは、利便性の高い都心部の駅前に大規模な店舗を構えることで、多くの集客を狙い、1店舗あたりの売上を大幅に高めています。

これにより各店舗の土地費用は高額となりますが、「駅前にある家電屋」というブランディングができ、かつ総合的な店舗維持費の削減といったメリットが得られるのです。

多様化する消費行動によりカテゴリーキラーでは不十分に?

近年、消費の方向性が多様化している傾向にあり、カテゴリーキラーの優位性が揺らいでいます。

そこには具体的にどのような背景があるのでしょうか。消費行動が変化するふたつの要因と、優位性を失わないために企業がすべきことについて解説します。

要因1.インターネットによる低価格販売の浸透

まず要因のひとつに、ECサイトやスマホアプリを介したインターネットでの低価格販売が普及したことが挙げられます。

消費者は店舗へ足を運ぶことなく、カテゴリーキラーの強みだった豊富な品揃えと低価格をインターネットで享受できるため、Amazon(アマゾン)などを筆頭にしたインターネットのショップは大きな脅威となります。

要因2.消費者の価値観が、価格から価値へ

インターネットでモノが安く手に入りやすくなったことで、消費者の価値観が価格から価値へと移行しているという側面もあります。

野村総合研究所が3年おきに実施している「生活者1万人アンケート」では、消費者意識が安さ重視ではなく、価格が高くても利便性が高いものや付加価値が付いたものを重視するスタイルに変化していることが明らかになっています。

つまり、従来の主流だった「大量生産・価格競争」のモデルから、高くても売れる商品やサービスを生み出す「価値創造」モデルに転換していく必要があるのです。

優位性を確保するためには新たな価値訴求が必要

上記ふたつの要因から、カテゴリーキラーの戦略に加えて、商品の付加価値を高めて他社との差別化を図るブランディングが必要であるといえます。

カテゴリーキラーの代表例でもある上記の3社が現在も成功しているのは、新たな価値を提供し続けているからです。

ユニクロは世界のデザイナーとコラボしたオリジナル商品の販売、ヨドバシカメラは近年流行する「ショールーミング*」を逆手にとった自社ネットショップの立ち上げ、ニトリは店舗でのネット通販や組み立て配送サービスを提供するなど、独自のサービスでスキを作らない取り組みを続けています。

*小売店で確認した商品をその場では買わず、ネット通販によって店頭より安い価格で購入すること

カテゴリーキラーの強みにプラスとなる新たな価値を

カテゴリーキラーの戦略を採る企業は、かつてはスケールメリット(規模を大きくすることで得られる効果や利益)を利用した圧倒的な差別化で競合を突き放してきました。

しかし、インターネットの普及や消費者の価値観の変容で、現在は品揃えと低価格だけでは勝ちづらい時代となっています。

そのため、今後は店舗の規模にかかわらず、自社にしかない付加価値や独自の強みを提供できる企業が成功する可能性が高くなるでしょう。

とりわけカテゴリーキラーの企業は、コストをかけて運営している店舗が売上を伴わない事態とならないためにも、積極的に新たな価値を消費者へ訴求していく必要があるのです。

<参考>
生活者1万人アンケート(8回目)にみる日本人の価値観・消費行動の変化 -情報端末利用の個人化が進み、「背中合わせの家族」が増加- | NRIメディアフォーラム | 野村総合研究所(NRI)

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