BtoB営業で注目されているセールス・イネーブルメントとは?具体的な事例も紹介

昨今、BtoB営業で注目を集めている概念に「セールス・イネーブルメント」があります。アメリカを中心に広がってきたセールス・イネーブルメントは、徐々に日本国内でも浸透しつつあり、書籍も多く出版され始めています。 セールス・イネーブルメントの目的は、シンプルに説明すると「営業組織の強化」「営業力の平準化」を実現することにあります。 この記事では、セールス・イネーブルメントの概念とともに注目されている背景をわかりやすく解説します。

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セールス・イネーブルメントとは?

セールス・イネーブルメント(Sales Enablement)とはデジタルテクノロジーを活用することで、営業プロセスの効率化、育成・研修制度の整備、各プロセスの目標達成率の可視化、部門間の連携を可能にして、営業組織を強化する考え方です。

デジタルテクノロジーとは、SFA(営業支援ツール)やMA(マーケティングオートメーション)、CRM(顧客関係管理)ツールなどが挙げられます。

SFAは企業の営業部の情報や業務の自動化を分析して、ボトルネックの発見や効率化を図るシステムです。MAは顧客開拓におけるマーケティング活動を可視化・自動化するツール、CRMは顧客を中心に考えてビジネスを展開し、利益の最大化を目指すマネジメントの手法のことを指します。

つまり営業活動をデータ化・可視化して、分析することによって営業組織の目的に対してもっとも効果的な施策を設計し、営業プロセスの最適化と効率化を確立していくことです。

セールス・イネーブルメントが注目される背景

セールス・イネーブルメントが注目される背景にはいくつか要因があります。

営業プロセスの属人化と感覚営業の打破

営業活動は、営業マンの個人的裁量に委ねられる部分が多いため、属人化する傾向にあります。営業資料、ナレッジ、ノウハウ、顧客ニーズ……など営業活動のさまざまなモノやコトが属人化しており、営業組織全体の強化と平準化を困難にしています。

また人事評価制度もこの属人化に輪をかけています。営業は結果が重視されるため、プロセスが評価されにくくなっています。そのため、営業プロセスにおける課題抽出がされずに、PDCAが回らないという悪循環となります。

結果として、一部のトップセールスに営業組織が頼ることになり、育成や研修をおこなっても効果が出にくい、ということが常態化しています。そのため、アマゾンやセールスフォース・ドットコム、マイクロソフトなど世界の名だたる企業が取り入れている、個人に依存しない営業組織の構築の手法が注目を集めています。

マーケティング、人事部門と営業の関係強化

業務のデジタルシフトが進んだ結果、組織ごとのシステムの孤立が起きやすくなっています。例えば、マーケティング部門がMAや名刺管理ツールで見込み客を管理する。あるいは、営業部門が顧客情報や売上管理をSFAでおこない、採用・人事が採用管理ツールを利用するなどです。

つまり、各部門の業務効率化は成し遂げられていても部門間連携ができず、顧客データや営業ノウハウ・ナレッジなどが一元管理されないため、営業組織全体の最適化にはいたりません。

マーケティングが獲得した見込み客を営業にどう接続するのが理想的なのか、どこからどこまでの営業の業務領域なのか、を整理しながら、人事・採用とも連携して最適な育成プログラムを構築します。さらに的確なスキルセットをもった人材を獲得するなど、部門を越えて営業組織の改善をはかる必要があります。

セールス・イネーブルメント構築の5ステップ

セールス・イネーブルメントを導入するには、下記の手順を参考にしてください。

ステップ1:専任人材・チームをつくる

セールス・イネーブルメント担当者は専任人材、もしくはチームで担当するのが良いでしょう。その理由は、営業組織だけではなくマーケティングや人事、管理部門とも連携する必要があること、データの分析、業務の見直し、トレーニングコンテンツの提供など業務も多岐にわたるためです。また経営陣や営業トップが全社にセールス・イネーブルメントの有用性をメッセージングすることが重要です。部門間を行き来しながら連結させることが役割となりますので、全社的な理解がないと担当者のスピード感が失われてしまいます。

ステップ2:営業データの収集と整備

まずはSFAやCRM、MAなどに蓄積された営業データを収集します。営業プロセスのどのフェーズに課題があるのか、どのようなトレーニングをおこなうと効果があるのか、最適なツールは何か、などを裏付けし、可視化をするためにまずデータを整備しなくてはいけません。

リードから有効リード転換率、有効リードの商談率、商談からの受注率など営業プロセスにおける次フェーズへの転換率を分析します。それだけでなく、展示会、コーポレートサイト、オウンドメディアなどチャネル別の転換率など多角的に分析をします。売上の貢献度を数値化していくことで、注力するポイントや課題点が洗い出せます。

ステップ3:KPIの設定とプログラムの開発

次に営業部門が目指すべきKPIを設定します。収集したデータをもとに課題を抽出して、適切なトレーニングコンテンツや営業ツールの提供をおこないます。例えば、ハイパフォーマーのデータを分析してコンテンツを開発する手法や、営業プロセスごとの課題の解決策、顧客のライフサイクルなど継続的に提供していく必要があります。

ステップ4:成果の評価と検証

育成・教育コンテンツを提供した後は、従業員のコーチング履歴を蓄積し、コーチング後の成果を検証します。いつ、誰が、どのトレーニングを受けたのかを把握して、トレーニング後の営業成果と比較して効果検証をしましょう。

ステップ5:サイクルの確立

セールス・イネーブルメント実施後、効果検証結果を振り返ります。効果が低い施策は見直しが必要となります。また、効果があればその施策を継続するのか、それとも次のレベルへ引き上げるプログラムを開発するのか、経営陣や営業トップと連携して決めていきましょう。これによりセールス・イネーブルメントのPDCAサイクルが確立できます。

セールス・イネーブルメントの取り組み事例:Sansan

セールス・イネーブルメントへの取り組みについてSansanの事例を紹介します。

法人向け名刺管理サービス「Sansan」を運営する同社は、顧客ターゲットの拡大により、営業メンバーの「生産性」がさがってしまうことを課題としていました。

そこで圧倒的に人員が足りていなかったため、セールス・イネーブルメントの一環として、採用とオンボーディングに取り組みました。今まで、「現場に採用の当事者意識がない」ということが一つの課題でした。

そこで、離職率や営業1人あたりの生産性、ランプタイム(100%活躍するまでの期間)などを計算。その結果に基づき「この時期までのこの人数がいないと営業目標を達成できない」ということを示し、現場のマネージャーを巻き込んで採用とオンボーディングをすすめました。

結果として、以前の採用数は月に2~3人ほどであったのが、3か月間で25人の採用することになったのです。

また、入社後のオンボーディングについても半年間のプログラムを作りました。これにより、新しいメンバーを現場が手取り足取り教えていたのが、プログラムにより営業メンバーの独り立ちまでのプロセスが効率化。また、教える側の生産性が向上し、ストレスも軽減できました。

このようにセールス・イネーブルメントを立ち上げることによって、採用から人材開発までPDCAがまわせるようになり、結果として今後の営業組織の強化につながります。

グローバル時代、DX時代にはスピーディな変化が必要

セールス・イネーブルメントは、最近脚光を浴びている考え方ですが、急速に浸透し始めています。これまで営業の属人化から脱却して、平準化をはかるのは困難でしたが、SFAやCRM、MAなどの登場で、営業プロセスも科学的に分析することが可能になりました。

常時、営業活動を分析して最適な改善をおこなっていくことで、営業の勝ちパターンを確立できますし、PDCAサイクルが根付くことで変化に対応できる強固な組織をつくることができます。

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